上演にあたって
帯広演研 代表 片寄晴則
『活発な日常活動を持続することにより、地域に根ざした創造活動を!』をスローガンに集団を結成して27年目になります。その間、随分いろいろな作家・作品を取りあげてきましたので、傍からは「節操のない集団」と映っているのでは、という危惧も少々あるのですが、しかし、私達にとって、その時、その時代、その状況の中で自分達が最も興味を抱いた結果
として、今までの作家・作品群があるのです。そして今は、それが平田オリザ氏の作品であり、一昨年は創立25周年記念平田オリザ3連続公演の最終作品として、私達のために新作まで書き下ろしていただきました。平田さんとの出合いは、私達の活動の大きな財産になっています。
さて、今回のこの作品は、明治から大正にかけて、短い生涯を駆け抜けた大杉栄と伊藤野枝の、最期の二ヶ月間の日常生活をスケッチ風に描いたものです。
自由恋愛を唱え、アナーキストと女性解放運動者として、互いの思想とその生き方を尊重し、同志として生きながら深い愛に結ばれた男と女。ラジカルに生きたそんな二人ですから、その日常もさぞかし……と思ってしまいますが、ここでは実に淡々とした調子で、夫婦の会話が繰り広げられます。ところが、その生き方の背景を少しでも知っていると、何気ない話のひとつひとつが実に示唆に富んだものとなり、想像力を喚起し興味深く、面
白く思えるのです。しかし、二人についての予備知識がたとえ無くても、実際のところ生活はこのように淡々と時が流れてゆくものだと、改めて感じていただけるものと思っています。構えることなく、ゆったりと約1時間、私達にお付き合い下さい。
98年の初演以降、釧路・北見・苫小牧・鹿追での出立て公演を経て、今回は
年の「薔薇十字団・渋谷組」以来8年振りの札幌公演となります。前回は、30度を越える暑さの中、たくさんのお客様にお越しいただき、いろいろな出合いがありました。今回また、どんな新しい出合いが待っているのか、団員一同ワクワクしております。どうぞ忌憚のないご意見・ご感想をお聞かせ下さい。私達は、そこに旅公演に出る意義を見出しているのです。
つ ぶ や き
上村 裕子
8年ぶりの札幌公演にワクワクしながらやって来ました。『又、札幌公演したいね』と言いながら8年の歳月が経っていたのですね。
生活環境も随分と変わりましたが、今もこうして芝居環境に身を置いている自分を幸せに思います。芝居を続ける事で自分自身が救われたり、たくさんの人と出会えたり、心の財産がとても増えています。
昨年、我々は芝居小屋を失い、仲間を一人事故で失いました。今までの芝居生活でこれほどツライ年はありませんでした。いろいろな思いを飲み込んで更に続けていく為の試練だったのかもしれません。
今回の芝居は、再演を重ねてきた大切な作品です。足を運んで下さりありがとうございます。今日の出会いに感謝します。
坪井 志展
この作品を持ってから5年になります。初演の稽古を始めた時から「この作品は一年に一回できれば演り続けたい」と思う程好きな作品でした。そして毎年とはいきませんでしたが、こうして今回7回目にたどりつけたのはとっても幸せな事だと思います。一年、間をおいた今年二月の鹿追公演ではステージの上に舞台を作って、お客様も舞台の上に作られた客席での観劇という面
白い試みでした。
今までは、実在した人たちを演じる怖さのみが先にありました。伊藤野枝はああじゃない!(何度その感想を聞いたことだろう、まあそれはしかたがないのだが・・・)決して実在の人物をそのまま舞台に上げる作品創りはしていないのに、私の中では実在の人物が重くのしかかっていた。しかし、今年の鹿追公演では、実在の人物に押しつぶされない自分を見つけ出した様な気がしました。それが何だかわかりませんが、このZOOの舞台でそれを確認できればと思っています。限りなく強い信頼感で結ばれた大切な「人間」どうし(同志)が舞台の上に居られれば良いのだけれども・・・
本日この会場に足を運んでくださった方々に心からお礼をもうしあげます。どうもありがとうごさいます。
野口 利香
4年前、私が演研に入って初めての公演が「走りながら眠れ」でした。演研の芝居を一度も見たこともないのに、発作的に入団してしまった私にとって「ああ、演研ってこんな芝居をするんだ」とわからせ、「私ごときが入団してよかったのか」と思い知らしめた芝居である。
4年の歳月を経た今、「走りながら眠れ」は各地での公演を重ね確実に成熟し、私はと言えば、初心を忘れ、すっかり演研に安住してしまっている。この間、楽しいこと、嬉しいこと、そして悲しいこと、いろいろあったけど、私もこの芝居と共に少しは成長しただろうか?(歳だけはくってますが)
この度は、私にとって初めての札幌公演であり、ZOOは初めて足を踏み入れる劇場であり、また、YOSAKOIも初めてである。(もちろん、見ることなどできないが)
おおいに楽しもうと思ってます。
福澤和香子
この作品の再演が決定し稽古に入り、本を読むごとにひかれる台詞が違ったり、共感を覚える場所が変わるのは私だけでしょうか?夫婦二人が放つ言葉一語一語、またそこに流れる空気感を是非一緒に味わっていただきたいと思います。本日はどうも有難うございました。
金田 恵美
演研の稽古場に映画「キャラバン」のポスターが貼ってあります。私はこの映画見ていないのですが、このポスターには何故か心惹かれるものがあって、発声の時にはついついポスターに向かって声を飛ばしている自分がいます。あの緑色は太陽なのか月なのか、あの人たちはどこに向かっているのか等、見ていないからこそ色々なことを想像することができます。本当はビデオを借りて見ればいいのだけれど、まだもう少し自分の想像の世界に浸っていたいから、見た人は私にこの映画の話をしないでね。
さて、札幌公演です。久しぶりの出立て公演でウキウキしています。早く来て欲しい気持ちと来ちゃうと終わって寂しい気持ちがあって、まるで遠足前の子どものようです。「楽しい」を思う存分味わわせて頂きます。
西部 一晃
ワールドカップの札幌。よさこいソーランの札幌。入団3年目にして初めての札幌公演参加。張りきっています。思い出深い『走りながら眠れ』を札幌の皆さんに見てもらいたい。スタッフとして精一杯に動き、満足のいける公演にしようと思います。ワールドカップやよさこいソーランのエネルギーに負けないくらいに、思いっきり頑張ります。
宇佐美 亮
僕が何で演研の芝居を観に行ったか定かではないのだが、観に行くようになって何作目だったろう、それがこの平田オリザ作「走りながら眠れ」であった。そのころ、スポーツ大好き健康優良大学生だった頃の僕は、上半身を大きく後ろにそらして大威張りで「演劇なんて知らない」と断言できた。大学にも演劇部はあったが、僕にとっては授業をサボって、グランド行って、走って、帰ってきて、寝る、これが生活の全てだった。しかし、この芝居を観た後、「まいったな」と思った。大杉栄、伊藤野枝のことを多少なりとも知っていたこともあり、「がつン」といった感じだった。まぁ、ヒトによっては「ぐわぁン」の方がわかりやすいかもしれない。そんな、平田オリザさんの幕別
公演があったのが去年の7月、公演終了後に代表に「団員なら平田さんとの懇親会に出られる」と言われた。あれからそろそろ一年。早いものだ。
「走りながら眠る」ことは理想であるが、「走り」始めなければお話にならない。グランドで走ることが出来なくなった今、「走ること」を始め、途中で息切れをすることの無いように、
武田 雅子
札幌に来てから丸十年経った。変わったことといえば、白髪が増えた事と、体重が増えた事。帯広に帰って稽古することもできないので、勝手に映画を見、身体を鍛え、自分なりの時間を充実させている。ヨサコイで賑わっている街の小劇場で、静かな芝居が上演されるというのも、そのギャップが面
白い。
昨年の悲しみを乗り越えて八年ぶりの札幌公演。舞台上の大杉栄・伊藤野枝が波乱に満ちた人生を淡々とさりげなく語るように、劇団員一人一人が大きな波に揉まれながらも、地道な活動を続けて来た姿を重ねて見てもらえたらと思います。
富永 浩至
釧路の「北芸」、北見の「動物園」、そして我々演研で道東小劇場ネットワークなるものをつくっている。といっても、そんなに大げさなものではなく、お互いの芝居を上演し合うというのが主な目的になっている。今までに北芸が四度、動物園が三度、来帯公演をし、我々が釧路で三度、北見で二度、公演を行っている。そして、昨年はその集大成とも言うべき、第一回道東小劇場演劇祭を三劇団で行った。このように他の地域で公演を行うことも、我々の活動の大きな柱の一つである。
しかし、この旅公演は制作的にはかなりの赤字を出す。そんな赤字を出してまで何故と思われるかも知れないが、こうすることにより同じ作品を何度も上演でき、その結果
作品がより深いものなっていく。また、いわゆる仲間うちでないお客さんの目にさらされることで、大きな刺激を受けられるなど、そのメリットも大きいからである。
さて、今回の公演でもまた新たな展開と出合いを生むことを期待して…。