第50回公演 創立30周年記念連続公演第1弾!
忠臣蔵 保育士編
作・平田オリザ
演出・富永浩至

スタッフ
 照明 宇佐美亮  舞台監督 富永浩至  制作 上村裕子 村上祐子

キャスト
 侍A 鈴木えりか  侍B 館律子  侍C 神山喜仁  侍D 金田恵美  侍E 野口利香 侍F 片寄晴則
 大石 坪井志展



上演にあたって

富永 浩至
 昨年の春に十四年ぶりに演出をした「忠臣蔵・劇団編」は、いろんな意味で面白かった。何より演出する楽しさを知ることができたし、お客さんの評判もそこそこ良かった。それで調子にのった訳でもないが、すぐに別バージョンで再演ということになった。当初の予定では十一月にということだったが、結局この時期までずれ込んでしまい、演研創立以来初めての真冬の公演となった。今年は創立三十周年という節目の年でもあり、この後連続公演と称し、五月、七月、更に十一月と公演が続く。その中に一回くらい寒い中での公演が入ってもいいのでは、と少々無責任ながら思っている。
 さて、今回は舞台を保育所の職員室に移し、そこに集う保育士たちによる話にした。保育所は娘が通っているので身近だったことと、劇団員の中に保育士がいたこともあり決めたのだが、やはりなかなか一筋縄にはいかない。女性だけだった前回とは違い男性が二人加わったことと、役もすべて入れ替えたことで一からのつくり直しとなった。しかし、あれこれと悩むこともまた楽しいことで、いろいろとアイデアを出しながら進めていく稽古は前回同様、とても刺激的だった。今はその成果を、お客様がどう判断してくださるか、少々ドキドキしているのである。


つぶやき

「忠臣蔵 保育士編」に思う事
坪井 志展

 やっぱり昨年の「劇団編」を意識せずにはいられませんでした。一つは、二十五年振りに小劇場舞台復帰の村上大石の後である事。もう一つは、自分の芝居のわざとらしさと力みすぎです。前者については、やりがいのある役をいただいたのだから、精進せねばと考え、半ばあきらめと居直りでの挑戦です。一昨年とその前年に「隣にいても一人」で幸運にも共演させていただいた青年団の大塚さんが稽古の中で「純粋な事は美しい」と言っていましたが、村上大石はまさしくそうだったと思っています。今回の「保育士編」は新メンバーを加え、キャスト総入れ替え、同じ作品なのにとっても新鮮に感じました。皆が新たな気持ちで作品に取り組みとっても楽しくやっているのが伝わってきます。そんな中で、自分はどうすればいいのか?とにかくセリフをきちんと正確(?)に、言葉の意味をきちんと相手に伝える事を目標にしました。自分で勝手に役作りをせずに、稽古の中で生まれてくるものを大事にしてみよう。これが、後者の解決策になったどうか、また出来たかどうかはわかりませんが、短期間に同じ作品に違う役で取り組む事ができ、役作り、芝居作りについてあらためて考えることができたことが私のプラスになったと感じています。
『何億という人間がいきているが顔はそれよりたくさんある、だれもがいくつもの顔を持っているから』byリルケ
 七つの顔が舞台にあります。この顔がいくつもに変化してゆくのを楽しんでいただけたらなあ〜と思っています。
 本日は、お寒い中、大通茶館劇場に足をはこんでいただき、まことにありがとうございます。

上村 裕子
 三十周年の幕開けです。いつもなら春公演と秋公演の二回ですが、今年は何と!四本の公演予定です。予定は未定とも言いますが・・・何とか走りぬけたいと、決意を新たにしています。
 さて、寒さ厳しい折わざわざ足を運んで下さり誠にありがとうございます。「忠臣蔵」第二弾です。劇団編を経て、演出の富永が「保育士編」をやる!と断言した時には、面白い試みだとは思ったもののやはり不安がありました。しかし稽古が進む中で、改めて脚本の面白さがわかって来ました。「劇団編」の時とセリフはそれほど変わってはいないのに、設定が違うと又違う芝居なんだと改めて感じている次第です。「平田オリザ恐るべし!」これなら、更に違うバージョンもありなのでは?という期待さえ感じています。
 では皆様、目の前で繰り広げられる世界をどうぞお楽しみ下さい。

野口 利香
 演研は今年三十周年を迎える。私が十二歳になった年に立ち上げたのだから、かなり昔である。まあ、タカラヅカ九十周年には及ばないが。
 その記念すべき年の第一弾公演が、「忠臣蔵・保育士編」である。昨年の劇団編をご覧になった方もいらっしゃるかと思うが、キャストを総入替えしての保育士編は、また新しい個性の集合体として生まれ変わった。人は複数の集団の中に身を置きながら一生を過ごす訳だが、その中で毎日大なり小なりの問題が生じ、その都度あーでもないこーでもないと言い合いながら解決していく。日常がその繰り返しであるなら、この芝居は日常のほんのひとかけらにすぎない。
 ただ、ちょっとその問題が「大大変」なのだけれど...

金田 恵美
 「忠臣蔵」で始まり「忠臣蔵」で終わった一年が過ぎ、また今年も「忠臣蔵」で稽古が始まりました。これだけの人数で舞台に立てることは嬉しいけれど、一人一人との関係を築いていくことの難しさを知りました。
 さて、今回の「保育士編」はというと、ポーンと怒ってパッと笑って、そんな役どころで、普段ぱっぱと気持ちを切り替えられない私にはその切り替えを体と心で表現するだけでもいっぱいでした。でも、稽古を重ねていけばどうにかなるもので、自分の中ではだいぶ気持ちを引きずらないでいられるようになりました。やはりどうしても前回この役をやった上村さんを意識してしまうのですが、自分は自分、と考えるようになってからふっきれるようになり、自分のDを見つけられたような気がしますが、お客様の目にはどう映るのか・・・ちょっと不安でもあります。
 今回、この仲間で舞台に立てることの幸せをかみしめ、また、この楽しさを見に来ていただいたお客様にも感じていただけたらと思います。

宇佐美 亮
 いよいよ演研三十周年の幕が開けようとしている。自分の齢よりも長い三十という年月を想う。ただの三十年ではなく、アマチュアとして小劇場にこだわり続けて活動してきた集団の三十年である。芝居というある種特殊なものを中心に役者、スタッフ、そしてお客さんの熱気や生活、その他ごちゃごちゃしたものをワタアメみたいに巻き込んで膨らんできた三十年だったに違いない。だからクラクラする、その歴史に関ってきた人の想いを考えると(なにせもっと若い自分の人生も僕にとっては荷が勝ちすぎているからだ)。考えるのは止めにしよう。これまでも自分は演研に巻き込まれた一つであったし、これからも巻き込まれていく一つであろう。そして、この節目にここにあることを誇りとしよう。

館 律子
 今回、めでたく二回目の忠臣蔵を公演できることになり、大変嬉しく思っています。更に、自分にとっては初めての出ずっぱりという大役(?)で、緊張もしていますが、喜ばしく思っています。前回は「劇団編」ということで、まあ、いつもの自分の感覚を生かして演じることができましたが、今回は「保育士編」ということで、なんと私は保育士になってしまったわけです。本物の保育士の方からは「そんなんじゃないって」とツッこまれるかも知れませんが・・・
 こうやってバージョンが増えれば、私はもっと他にも色々なものになれるのかもしれません。そういうのって素敵だなあと、一介の事務員の私は思うわけです。

鈴木えりか
 早いもので、演研に入団し三年、そして二回目の舞台となります。前回の経験からいろんなことを学び、自分自身ですごく成長できたから、今回の芝居ではもっとすんなりと稽古が運ぶのではないかと思っていた。でも、そうではないことに途中で気づいた。ここまで出来ればそれでいいわけではなく、ここまで出来たから次はどうすると常に前を向いて先へ進んでいく事が芝居をするにあたって必要だと思う。これからどんなに稽古をつんでも、技術は身につくかもしれないが誰かを演じることが簡単になることはないと思う。でも、一つ一つの稽古で何かを発見したときの楽しみや感動は計り知れない。それがあるから辛くても芝居が続けられると思う。
 まだまだこれからですが、皆さんと楽しい時間を共有したいです。

神山 喜仁
 とうとう初舞台です。入団して約一年と半年。こんなに早く役がつくと思っていなかったので、嬉しいというより驚きの方が大きかったです。舞台に立つことは自分の中で憧れになっていたのですが、稽古はとても厳しいものだと覚悟していました。しかし始まってみると、みんな優しく接してくれるので甘えそうになりましたが「自分は初舞台じゃなくみんなと一緒だ!」と思い込ませました。また、周りの人とは差は歴然だったので、せめて気持ちでは負けないように頑張りました。
 稽古の中で楽しいことは、自分の成長が手に取るようにわかることです。それとこんなに多くの役者たちと稽古を共にできるのも楽しいことです。苦労話はいくらでもでてくるので一つだけ。私は意識の分散ができなくて悩みました。一つのことに集中するあまり、動作が不自然になってしまったり、何かをしながら別のことをするなど、普段はそう意識せずにやっていることが、舞台の上ではなかなかできず「俺はいつも不自然に生活をしているのか」と考えてしまうほどでした。でも、これは経験を積むことで解決していこうと思っています。
 未熟ながらも精一杯頑張りますので、楽しんでいただければ幸いです。

片寄 晴則
 前回の「忠臣蔵」では初めて受付を担当し、お客様との対応が楽しくて「これは天職かもしれない」などと言って、今回も受付で燃えるつもりでいたところ、何故か役者を演ることになってしまいました。創立三十周年にして二度目の十六年ぶりの台詞のある役です。ずっと演出として好きなことを言って芝居を創ってきた身には、役者の作業の大変さが身に染みる毎日の稽古で、「役者を楽しむ」なんてとんでもない。でもまあ、自分に精一杯だった最初に比べると、この頃は舞台の上での連帯感を少しは感じられるようになってきたのでちょっと役者の輪に入ることができてきたかなと・・・・・
 まあ、もうジタバタしても始まりません。連続公演第一弾のご愛敬と笑ってやってください。

 

 

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