劇団創立35周年記念公演第1弾!
第61回公演
 「楽屋」
  作:清水邦夫  演出:片寄晴則

 スタッフ
  効果:宇佐美亮  照明:富永浩至  大道具:神山善仁  小道具:鈴木えりか  制作:村上祐子

 キャスト
  女優A:上村裕子  女優B:野口利香  女優C:坪井志展  女優D:金田恵美



上演にあたって

片寄晴則

  今日もまた舞台に立ち、喝采を
 浴び輝き続ける女優ーそして、死
 してなお、舞台に立つその日を夢
 みて楽屋に徘徊する女優の魂達・・・

 新劇の長い歴史・時間を担っている四人の女優達は、「楽屋」という彼女達の生活の場で、戦前・戦後・そして現代へと続く座標軸の中で脈々と流れる芝居への『想い』を抱えながら繋がっている。芝居にかかわる者としてその『想い』は皮膚感覚でわかる気がする。
 そんな訳で、特に女性陣にとっては、座組さえ揃えば、いつだって取り組んでみたい作品がこの「楽屋」のようです。82年の初演は、私が公務員の職を辞し、自分達の空間を求めて「大通茶館」を開店して初の演出作でした。そして「演研芝居小屋」「メガストーン」と上演拠点が変わり今回の「演研・茶館工房」での公演が何と4演目となりました。配役はもとより、空間が変わることで、そこに宿る魂の感触も違ってくると感じていますし、初演から28年の時を経て、この作品の集大成にしたいとも思ってる次第です。多分、本日のこの会場には、その変遷を共に歩んで下さったお客様も多いのではないでしょうか。「演研・茶館工房」の闇に、ひと時、身を沈めて、『観客』という役で芝居に参加していただけたらと思っています。
 本日のご来場、ありがとうございます。


つぶやき

坪井 志展
 演研では、4度目、4ヶ所での「楽屋」公演ですが、私には三度目の女優Cの役になります。仏の顔も三度まで、無理は三度、三度目の正直、三度の飯より芝居が好き?なんて三の付く言葉を思い浮かべてみました。三度も私を役者として使っていただけた事に感謝、もしもお客様の中に三度目の方がいらしたらそれはもう大感激です。
 女優の「楽屋」へようこそ、舞台の裏側だけを観る不思議なお芝居です。たった一人の楽屋部屋のはずが、そこに何人もの魂が住み着いていたなんて・・・
 この茶館工房にも、この空間を使ってくださった方々、その度に足を運んでくださった多くの方々の魂が宿っているはずです。本日ご来場の皆様の『魂』も置いていっていただけたらと思います。

 

上村 裕子
 演研としては、4演目のこの作品で舞台に立つのは2度目です。1度目は何と19年前です。生活環境だけではなく、体型も年齢もずいぶん変わりました。19年前の上演時に、自分でつぶやいた言葉を読み返してみると、ひたむきさにあふれていました。それは一体どこへ置いてきてしまったのだろう?と率直に感じました。あの頃必死だったことが今は形を変えていて、それでもやっぱり今も必死であることは変わらないのだなとつくづく思い知る日々です。
 仲間と足並み揃えて芝居づくりができない現実もあり、もう舞台には立てないかもしれない…という思いをずっと抱えています。それでもやっぱり舞台に立ちたいと思ってしまう、自分がいます。
 若い頃は、舞台に立つ前に「思いっきりやろう」とか「平常心でいこう」とか・・・いろいろ自分に言い聞かせていました。今は「丁寧に舞台を努めたい」と思っています。
 ご来場頂きありがとうございました。

 

野口 利香
 5年ぶりに舞台に立ちます。そして、舞台に立つと言うことがどういう事なのか思い知らされました。いや、これから思い知らされます、本番はこれからです。
 これは女優の話です。舞台に立ちたい思いを残したままこの世を去り、その思いは「楽屋」で存在し続けます。夜ごとメイクに励みながら…。
 稽古を重ねる中で自分と対峙することが何度もあり、「わかっちゃいるけど、どうにもならない自分」をもてあまし、辛い思いを味わいました。打ちひしがれながら稽古場をあとにすることも度々。その都度自分に問います「なぜ、舞台に立ちたいのか」答えはでません。そしてまた稽古場に向かう日々。
 約半年の稽古期間を経て初日が開きます。お客様の前に自分を曝すことで「なぜ」の答えがほんの少しでも解ればと思います。

 

金田 恵美
 自分がその状況にぶつかって初めて知る事・感じる事。『楽屋』の稽古期間中に初めての経験をする事がありました。自分がこれからどうなるのかわからない不安に押し潰されそうになり、平静を装っていてもどこか心は此処にあらずの毎日。でも、どん底を見たら後は這い上がるだけ。皆の温かい気持ちと笑顔に本当に励まされました。感謝。稽古中は不安な気持ちを忘れる事ができて『楽屋』にも救われました。感謝。今だから素直に言えます。本当にありがとうございました。

 

宇佐美 亮
 勤めていた会社を辞め野良仕事を始め、慣れない作業に悪戦苦闘し、昨年は一年間お休みをいただいていました。ようやく(少し)段取りも覚え、この春、この公演より復帰いたします。
 芝居から遠ざかっている間、ピースを1つ無くした、そしてそれが分かっているジグソーパズルに挑んでいるような、なんとも落ち着かない気分で生活していました。久しぶりの稽古場に来ると落ち着きますね〜。…いや落ち着いていては駄目ですね。真摯に芝居に取り組まないと・・・。野良仕事は朝早いので、夜の稽古はなかなかしんどいですが、なんとか続けていきたいと思います。
 こんないい加減な僕でさえ取り込まれる芝居の魅力ってなんなのでしょうか?やはり舞台・楽屋に潜んでいる情念のようなものが存在するのでしょうか?お客様ともどもその芝居の情念に取り込まれる心地よさを糧にこれからも精進して行きたいと思います。本日はご来場ありがとうございました。

 

鈴木えりか
 「楽屋」がこれから始まります。前回とキャストが代わり、その前回に女優Dとして私は参加していました。
あの頃はまだその時その時を精一杯やるだけで、自分のことでいっぱいいっぱいでした。今回はスタッフとして参加、スタンスが変わっても私はやっぱりいっぱいいっぱいですが、あの時感じることが出来なかった想いが舞台の外で観ているとたくさんあり、前回女優Dをやったからこそそう感じられると思います。
 これからの本番が楽しみです。また、お客様方も前回と違う「楽屋」をお楽しみ下さい。

 

富永 浩至
 学生の頃、この「楽屋」をやったことがある。今と違い当時畜大は男子学生がほとんどだった。我が演劇サークルも女子の先輩が引退した後はむさ苦しい男ばかりになっていた。そんな時に大谷短大(こちらは女子大だった)の学生が一緒に演劇をやりたがっているとの話が舞い込んだ。女の役者が欲しかった我々は大喜びでこの申し出を受けた。そして選んだ演目がこの「楽屋」。なぜ彼女たちだけが出る芝居を選んだのかは覚えていない。しかしこれは事件だった。何せ男子ばかりの大学に女子大生が来て芝居をするのである。しかも劇中に着替えのシーンもある。会場となった学生会館には、さぞ大勢の学生が詰めかけたことだろう。残念ながら記憶が曖昧で、その真偽のほどは分からないのだが・・・。
 昔から、このホンは舞台に立つ女性たちにとってとても魅力的なのだ。そんな「楽屋」の魅力をお客様に届けられるようにと、我が劇団の女優たちも日々悪戦苦闘している。私も彼女たちに負けないように、最高の明かりをあてたいと思っている。

 

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