第67回公演  「思い出せない夢のいくつか」
 作:平田オリザ  演出:片寄晴則

 スタッフ
  照明:野口利香  効果:片寄晴則  大道具:神山喜仁  衣裳:上村裕子  制作:村上祐子、鈴木えりか
  
  制作協力:劇団動物園

 キャスト
  安井 富永浩至   由子 坪井志展   貴和子 金田恵美   

 ※帯広公演パンフレット
 
※北見公演パンフレットはこちらから


上演にあたって

片寄 晴則

 ただ『状況』を淡々と描く平田オリザ氏の静かな演劇に興味を覚えたものの、果たしてこの「思い出せない夢のいくつか」が、帯広のお客様に受け入れられるかどうか、私は迷っていた。1995年の春、創立20周年記念公演の演目について話し合っていた時のことである。
 その席で富永が「いつも、自分の演りたいことを我が儘に続けている、と言っているくせに、お客さんに受け入れられるかどうか考えるなんて言っていることが違う。演りたいなら演ればいい!」と珍しく私を叱責し、その声に押されて思い切って上演することを決めたのだった。
 結果、私の不安は杞憂に終わりました。観劇後のお客様のアンケートには「何だかその場にいて他人の話を盗み聞きしているような、妙な感覚があった」とか「自分も列車に乗って、一緒に旅をしているような一体感を持った」とか「よくわからないけど、今夜は同伴の友人と酒を飲みながら今見た芝居について思いを巡らせたい」等々、好意的な感想が多く寄せられたのです。
 そんな声に勇気づけられ、以来18年間に2度の東京公演を含め、5演目23公演もの平田作品の上演が続いております。今回も5演目を迎えてもなお飽きることのない作品に出逢えた喜びを噛み締めながら、新たな想いで稽古に臨む日々が続きました。
 本日のご乗車ありがとうございます。私達と共に、ひととき、平田版、銀河鉄道での旅をお楽しみ下さい。さあ、出発です。

 


つぶやき

坪井 志展
 初演が18年前でした。初めての平田作品です。自然に存在する、其処にいるって、どういう事なんだろうと悩みました。「それは、ただ坪井がそこにいるだけ」と何度も言われた事を思い出します。18年たった今も、あまり変わっていない私がいます。自然にいようとしているはずなのに、どう演じるべきかと、つい大げさな言い回しや、情緒的な身ぶり、説明的な芝居をしてしている。客観的に自分をみつめ、そこで何をすべきで、何をせずに存在するか……。集大成の今回の芝居でなにかをつかむ事ができればと思っています。現実の人間がそうであるように由子さんがそこに存在してるといいなぁ。
 本日は、演研・茶舘工房に足をお運びいただき、ありがとうございました。

上村 裕子
  初めて「思い出せない夢のいくつか」を上演したのは、18年前です。静かな演劇といわれていた「平田オリザ作品」に戸惑いがあったことを今懐かしく思い出します。平田オリザ作品がかもし出す空気感が好きで、東京まで観に行ったり、また別の作品を上演したり・・・。18年という歳月の重さをしみじみ考えております。
 登場人物は3人。貴和子ちゃんは3代目ですが、他の2人は初代のまま。上演の度に新しい発見があり、熟成され、新たな空気感ができあがります。
 さて、今回お客様にはどんな印象が残るでしょうか?本日はご来場ありがとうございます。
 では、一緒に列車に乗りこみましょう!!


野口 利香
 「思い出せない夢のいくつか」は今回で5演目となりますが、私は2演目からの参加で継続して照明を担当しています。
 一つの作品の再演を重ねていくと、見えなかったことが見えてきたり、違った見方が出来たりして全く飽きることがありません。また、自分が年齢を重ねたことも実感できたりもします。(今だから分かることが結構あります)
 私は入団して15年になりますが、芝居にかかわることで、自分と向き合う努力ができたと思いますし、年齢を重ねることが怖くないというか、素敵なことだと感じることが出来ます。(しかし、体力の衰えだけは何とかならないものか……)とはいうものの、実際は些細なことに腹を立てたり、ちょっとしたことを気に病んだりして日々を過ごしています。(我ながら人間がちっちゃい……)
 この作品の公演のたび、「あ、星みてないな〜」と思います。小学校高学年くらいの時に地元の海水浴場でキャンプした時のような満天の星(流れ星をいくつも見た)をもう見ることはできないだろうか。
 「宇宙の中の自分」だと思うと、些細なことは気にせずいけそうな気がしますが、きっといつもの日常の繰り返しになるのでしょうね。
 今日お越しの皆様、このひと時だけ「宇宙の中の自分」を感じてみてください。
 ご来場、ありがとうございます。


金田 恵美
 公演直前の日曜日。普通であれば稽古なんですが、この度お休み。なんだか不思議な感じです。次の日からは公演に向けてラストスパートをかけるので、束の間の休みを楽しみにしていました。朝から曇り空。せっかくの休みの天気が今イチ……しかし、ちょっと鬱々した気分を払拭すべく、前から一度行ってみたかったオンネトーまでドライブしてきました。曇り空の為、綺麗なオンネトーブルーは見られませんでしたが、それでも時折、雲の隙間から射し込む光で水面がブルーに輝くのを見る事ができました。寒くて長居はできませんでしたが、それでも行きたかった場所に来れた満足感で、気持ち晴れ晴れ。公演に向けて、良いリフレッシュになりました。昨年は残暑厳しかったのに、今年は寒くなるのが早いですね。所々、紅葉も始まっていました。今年も残り三ヶ月弱、毎日に流されっぱなしですが、時には立ち止まって流れ行く季節を楽しむ余裕を持ちたいと思います。
 本日は御来場頂きまして有り難うございます。舞台に流れる季節を感じて頂けたら嬉しいです。


富永 浩至
 公演直前の土曜日曜と高文連十勝支部演劇発表会の審査員を務めてきました。自分の芝居もままならないのに、人に批評をするのは気が引けるのですが、うちの芝居をよく観にきてくれる高校生たちの力に、少しでもなるのならばと思い引き受けました。(いや、公演日程の方はあとから決めたのですが……)
 十勝の高校演劇のレベルは高いです。十勝の代表が全道の代表になり、全国大会にも何度も進んでいますし、2009年には柏葉高校が全国優勝もしています。私は、これは1995年に行われた平田オリザの演劇ワークショップが大きく影響していると思っています。ちょうどこの「思い出せない・・・」の上演を決めた時でした。地元新聞社の主催で、平田さんが月一回、一年間に渡って帯広に来てくれることになり、土曜日は高校生向け、日曜日は一般向けと長期間のワークショップが開かれました。その間に上演された我々の「思い出せない・・・」も、もちろん観に来てくれました。(汗)
 全国大会に駒を進めた学校の顧問の先生は、このワークショップを熱心に受けていましたし、去年一昨年と二年連続全道代表になっている北見北斗高校の先生も、この時は池田高校の顧問として参加していました。20年近くも前の影響が今ごろ出るのか、とお思いになるかもしれませんが、こういうことは時間がかかるものなのです。ですから我々もこれから大きな花を咲かせるかもしれません。(いや冗談です)
 さて、その思い出深い「思い出せない・・・」も上演を重ねて、今回で5演目です。多分日本で一番この戯曲を上演していると思います。それに恥じないような良い舞台を創るべく、日々稽古に勤しんでおります。

 

 

 ●戻る

 ※北見公演パンフレット


上演にあたって

片寄 晴則

 ただ『状況』を淡々と描く平田オリザ氏の静かな演劇に興味を覚えたものの、果たしてこの「思い出せない夢のいくつか」がお客様に受け入れられるかどうか、私は迷っていた。1995年の春、創立20周年記念公演の演目について話し合っていた時のことである。
 その席で富永が「いつも、自分の演りたいことを我が儘に続けている、と言っているくせに、お客さんに受け入れられるかどうか考えるなんて言っていることが違う。演りたいなら演ればいい!」と珍しく私を叱責し、その声に押されて思い切って上演することを決めたのだった。
 結果、私の不安は杞憂に終わりました。観劇後のお客様のアンケートには「何だかその場にいて他人の話を盗み聞きしているような、妙な感覚があった」とか「自分も列車に乗って、一緒に旅をしているような一体感を持った」とか「よくわからないけど、今夜は同伴の友人と酒を飲みながら今見た芝居について思いを巡らせたい」等々、好意的な感想が多く寄せられたのです。
 そんな声に勇気づけられ、以来18年間に2度の東京公演を含め、5演目23公演もの平田作品の上演が続いております。今回も5演目を迎えてもなお飽きることのない作品に出逢えた喜びを噛み締めながら、新たな想いで稽古に臨む日々が続きました。
 1997年に「あなたがわかったと言うまで」で、ご当地に初見参して以来、道東小劇場演劇祭や動物園との合同公演を含め、今回が5度目の北見お目見得となりました。23年前初めて出会ったあの松本少年が、今は自分達の拠点を設け、そしてそのアトリエの舞台に、劇団動物園25周年連動企画として、我々演研が立つ。途切れることのなく続いたお互いの活動と交流に、深い感慨を覚えます。
 さて、本日は「平田版・銀河鉄道」へのご乗車、誠にありがとうございます。北見のお客様との楽しい旅となりますよう、団員一同、心して運行させていただきます。そして、本日の旅への忌憚のないご意見・ご感想をお聞かせいただけることを楽しみに、さあ、出発です!!

 


つぶやき

坪井 志展
 初演が18年前でした。初めての平田作品です。自然に存在する、其処にいるって、どういう事なんだろうと悩みました。「それは、ただ坪井がそこにいるだけ」と何度も言われた事を思い出します。18年たった今も、あまり変わっていない私がいます。自然にいようとしているはずなのに、どう演じるべきかと、つい大げさな言い回しや、情緒的な身ぶり、説明的な芝居をしてしている。客観的に自分をみつめ、そこで何をすべきで、何をせずに存在するか……。集大成の今回の芝居でなにかをつかむ事ができればと思っています。現実の人間がそうであるように由子さんがそこに存在してるといいなぁ。
 本日は、アトリエ動物園に足をお運びいただき、ありがとうございました。

上村 裕子
 本日はご来場ありがとうございます。
 私はひたむきに芝居と向き合っていく劇団動物園の姿勢がとても好きです。動物園の札幌公演をお手伝いをした時に、「心を一つにして力を合わせる」という意味の「一味同心」という四文字熟語が私たちの間で流行りました。今回は、その仲間たちの本拠地での公演、とても楽しみにしてきました。
 出会った頃はお互いに若かったです。遠い道のりを互いに行ったり来たりしながら20年以上が経ち、お互いに大人になりました。
 さて、今回は我々が「平田オリザ氏」の戯曲に初めて取り組んだ作品です。上演を重ねて来た自信作でもあります。我々の作り出す空気感を楽しんで頂けましたら、幸いです。
 それでは開演です。一緒に列車に乗りましょう!


野口 利香
 「思い出せない夢のいくつか」は今回で5演目となりますが、私は2演目からの参加で継続して照明を担当しています。
 一つの作品の再演を重ねていくと、見えなかったことが見えてきたり、違った見方が出来たりして全く飽きることがありません。また、自分が年齢を重ねたことも実感できたりもします。(今だから分かることが結構あります)
 私は入団して15年になりますが、芝居にかかわることで、自分と向き合う努力ができたと思いますし、年齢を重ねることが怖くないというか、素敵なことだと感じることが出来ます。(しかし、体力の衰えだけは何とかならないものか……)とはいうものの、実際は些細なことに腹を立てたり、ちょっとしたことを気に病んだりして日々を過ごしています。(我ながら人間がちっちゃい……)
 この作品の公演のたび、「あ、星みてないな〜」と思います。小学校高学年くらいの時に地元の海水浴場でキャンプした時のような満天の星(流れ星をいくつも見た)をもう見ることはできないだろうか。
 「宇宙の中の自分」だと思うと、些細なことは気にせずいけそうな気がしますが、きっといつもの日常の繰り返しになるのでしょうね。
 本日はご来場ありがとうございます。北見のお客様と銀河鉄道の旅ができることを嬉しく思います。このひととき「宇宙の中の自分」を感じてみてください。


金田 恵美
 先月末、北見動物園の『Right Eye』を観劇しました。あと2週間後には、自分もこの舞台に立つんだ、そんな思いを抱えながら。アトリエの舞台に役者として立つ事が、5年前に貴和子を演じ始めた頃からの夢でした。その夢が今やっと叶おうとしています。憧れだったアトリエの舞台に、自分が好きな作品、好きな役で立てる。片想いが通じた感じ。でもその想いをアトリエは受け入れてくれるかどうかは……?慣れない空間でどこまで貴和子を演じられるのか?北見のお客様はこの作品をどう感じてくれるのか?その答えは公演後に得られるのだと思います。
 本日は御来場頂きまして有り難うございます。外はすっかり寒くなり、この作品の季節に近づこうとしています。舞台に流れる季節を楽しんで頂けたら嬉しいです。


富永 浩至
 「ひとつの劇団が25年も続くのは、偶然の積み重ね。中央志向の劇団が多い中、地方にとどまることを宣言しつつ、高いクオリティーを追求する姿勢はすごい」我々が25周年を迎えた時に、平田オリザさんからいただいた言葉です。今年、25周年を迎えた劇団動物園にも、そのまま当てはまる言葉だと思います。
 我々はその25周年の時、平田さんに「隣にいても一人」という作品を書き下ろしていただきました。そして3年前の35周年の時には、その「隣にいても一人」で、動物園との初の合同公演を行いました。我々より若い動物園の皆さんが、休日の度に帯広まで稽古に来てくれて、実現した公演でした。
 節目節目をどのように迎えるか、そしてどう整理をつけるのか。それがうまくいくと、また次のステップへ飛躍出来る。そう信じて、我々は次の40周年、動物園は30周年に向けて、これからもお互いに切磋琢磨していけたらと思っています。そして、本日お越しのお客様には、時には厳しく時には温かく、私どもの遅々たる歩みを見続けていただければ幸いです。
 本日はご来場いただき誠にありがとうございます。

 

 ●戻る