片寄 晴則
数々の修羅場をくぐり抜け、今日もまた華やかなスポットライトを浴び続けている女優……そして、その楽屋の闇には、死してなお、舞台に立つその日を夢見て、化粧に没頭する女優の魂達が徘徊している……
今や全国の劇団で繰り返し上演されるスタンダードとなっているこの作品は、登場する4人の女優を通して、戦前・戦後・そして現代へと続く座標軸の中で脈々と流れる、芝居への『想い』や、舞台に立つことへの『執念』が詰まっています。そんな『想い』は、こうして帯広の地で芝居を続けている私達にも、皮膚感覚でわかる気がして上演を重ね、今回で5演目。演研の40年の歩みと共にある作品とも言えるのではないかと思っています。
私達は普段、客席数40席の小さな劇場「演研・茶館工房」を拠点に上演を続けておりますので、倍の席数のここシアターZOOを、どこまで自分達の空間として操ることが出来るのか不安でいっぱいですが、過去3回この劇場で上演させていただいた、あの空気感を思い出しながら稽古を重ねて参りました。
ひととき、劇場の闇に身を沈めて、ここにも宿っているであろう、魂達の存在を感じていただけると幸いです。そして上演後、忌憚のないご意見をお聞かせいただけることを、何よりの楽しみにしております。
本日のご来場、ありがとうございます。
坪井 志展
この芝居は、清水邦夫さんが、某劇場の楽屋の壁にアイロンの焼け跡がくっきりつけられているのを見て、書くことを思いついた。そんな強い焼け跡は、誰かが何者かに呪詛の炎を燃やして押し付けなければつかない。そんな想像をして書かれたそうです。
私には、誰かを呪うような経験はないけれど、上演中のアンケートを読むのがとっても怖いです。他の出演者が褒められている記載を見ると、自分がダメなような気がし、太刀打ち出来ない何かに怯えます。これも女ゆえなのでしょうか?私だからでしょうか?
本日は、唯一生き続けている生き生きとした女優Cとして舞台に存在出来ればと思っています。
ZOOの中に現れた楽屋の中に、立ち込める女優たちの様々な消えることのない情念のようなものを感じていただければ嬉しいです。
82年の初演から5演目、集大成になるであろう「楽屋」を札幌の舞台に上げることが出来ました。この公演を導いてくださった方々、また、足を運んで下さいました観客のみなさまにお礼を申します。本日は、ご来場ありがとうございました。
上村 裕子
昨年の6月、最後の上演と覚悟して「楽屋」に臨みました。「楽屋」は、自分たちにとっても、そして観客の皆様からも再演希望の多い作品でした。そしてその上演は、お陰様で友人、知人からも好評を頂きました。しかし、個人的には演り残したこともありました。それが今回、札幌での上演が叶い、もう一度チャンスをもらったことが大変嬉しかったです。
個人課題を少しでもクリアして、皆様の前に立てることを目指して稽古に励んでいます。
本日はご来場、誠にありがとうございます。札幌で上演するからこそ、観て頂ける方達との出会いに感謝します。
野口 利香
10年前、私が初めて「楽屋」の舞台に立ったとき(女優Aを演じました)は、舞台に立てる嬉しさで一杯でした。5年前、再び「楽屋」の舞台に立ったとき(女優Bを演じました)には、舞台に立つ怖さに負けそうでした。そして昨年、女優Bとして三度目の「楽屋」の舞台に立つとき、覚悟を決めました。いや、覚悟を決めたつもりだった…。
私はまだ、本当に舞台に立てていない。それがどういうことなのか、言い表すことが出来ないし、実感できることなのかも解らない。
役者をやっていると、自分の本質を突き付けられ、逃げ出したくなることがあります。自分を全てさらけ出すことができれば、どんなにいいかしれない。でもできな
い。特に私は。
そんな葛藤ができるのも、芝居をやっているからで、案外それが好きなのかもしれない。だからやり続けるのでしょう。
これを書いている今、公演の約3週間前です。残りの稽古で、どこまでできるか。自分の深い深いところに手を突っ込んで、何かを引っ張り出したい思いです。(と、書きながら自分に負荷をかけています、実は…)
このたびは、札幌のお客様にお目にかかれる機会をいただき、本当に嬉しく思います。本日はご来場、誠に有難うございました。
金田 恵美
『達成感』ってどこまで行ったら感じられるのでしょう?そんな事が今回の稽古の最中にふと頭に浮かびました。達成感を感じてしまったら、そこで満足してしまうのか、それとも更なる高みを求めるのか…。課題にもよるのかもしれないですね。
さて、久しぶりの札幌公演。半年前に「楽屋」の公演を終えたばかりのこのタイミングで、今回このような機会に恵まれた事をとても嬉しく感じています。前回公演でラストと思いながらも、やはり腑に落ちないまま吐いていた台詞があり、達成感を感じるまではいかなかった芝居。いや、きっと達成感を感じる事はないのかも。感じたら、芝居を辞めているかもしれないし…なぁんてところで止めておきます。きっと答えは出ないような気がするので。
この度は演研「楽屋」を観に来て頂き、誠に有り難うございます。舞台に懸ける女優達の熱き想いを楽しんで頂けたら嬉しいです。
清水 匠
演研に入ってから 3度目の公演は初めての札幌公演となりました。昨年も上演した「楽屋」の再演と言うことですが、今回の稽古を見ていると前回のものとまた違った「楽屋」になっていくのがよくわかり、とても面白いです。仕事の都合でなかなか稽古に参加することができない状況でしたが、いよいよ本番が近付いてきました。今回上演を観にきてくださるお客様に満足していただけるよう、やれることを精一杯やっていきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
富永浩至
今回の公演にあたり、札幌に住む高校時代の同級生に案内を出した。すると連絡網が出来ているのか、私が住所を知らない人にまで連絡してくれて、もう30年以上も会っていない人たちも来てくれることになった。とても有り難く、今からワクワクしている。
そもそも演劇を始めたのは、高校3年生の時。すでに部活を引退した演劇部の友人から、学祭で自主公演をやるから出ないかと誘われたのがキッカケだ。生物部だった私が何故誘われたのかは未だに分からないが、教室に暗幕を張り、教壇を並べて作った舞台に立った私は、芝居の魅力にすっかりとハマってしまった。
大学でも演劇部に入り、学生生活はまさに芝居中心になった。講義が終わる頃に大学に行き、稽古をし、その後は朝まで飲むという感じ。お陰で卒業するのに5年かかってしまったが……。学外公演を演研の拠点であった喫茶店「大通茶館」でやったことで、演研との関係が密になり、初演の「楽屋」の手伝いもした。(本日の女優C役は、その時もC役でした!)
あれから随分と時間が経ってしまったけれど、未だに芝居にどっぷりと浸かっている。
本日はご来場ありがとうございます。