第81回公演  「朝顔」
 作:佃 典彦   演出:富永浩至

 


 スタッフ
  坪井志展、清水匠、上村裕子、大澤真琴、片寄晴則  

 キャスト
  女:野口利香
 男1:富永浩至 男2:小澤厳


上演にあたって

富永 浩至


 もう一年以上続くこのコロナ禍は、我々の活動にも大きなマイナスとなっていますが、しかしその中でも良いこともあります。

 一つは、演劇公演が配信される機会が多くなったことです。今まで東京に行かなければ観られなかった舞台が、リアルタイムで観られるのです。プロジェクターを使って、工房の壁にスクリーンを取り付け、スピーカーから音を出して、映画館さながらで楽しんでいます。先日観たケラリーノサンドロヴィッチ演出の「砂の女」も、とても良かったです。

 もう一つは、文化庁の芸術支援事業の一環で、劇作家協会が戯曲のデジタル図書館を作ったことです。戯曲は売れないからなのか、著名な劇作家のものでも出版されることは多くありません。書き手がいない我が劇団では、毎回上演作品を探すのにとても苦労します。そんな中、この戯曲のアーカイブは本当に助かります。登場人物の人数などを入力すると、該当戯曲が一瞬で出て来るのです。

 そして、その戯曲の図書館で出会ったのが、この「朝顔」です。作者の佃典彦さんは、2006年に「ぬけがら」で岸田戯曲賞を受賞しました。B級遊撃隊という劇団を主宰し、名古屋を拠点に活動されています。随分前ですが、伊達で行なわれた北海道舞台塾にゲストで来られていて、その時のお話がとても面白かったのが印象に残っています。

 岸田戯曲賞を受賞した「ぬけがら」は認知症の父親が、脱皮(!?)を繰り返しどんどんと若返っていくという何とも不思議なお話です。この「朝顔」も、マンションの空き部屋に朝顔のツルが密生しているという奇妙なト書きから始まります。そして三人の登場人物が語る事実が食い違い、何が真実なのか混沌としていきます。

 紙に書かれた戯曲を立体的な舞台にしていく作業には、毎度のことながら苦労させられます。今回は初めての作家さんなので尚更です。しかしその過程が楽しいこともまた事実です。皆であれこれ言いながら創っていく、それが徐々に形になっていく、それが何よりの喜びです。そしてその舞台が皆様を楽しませるものであれば、我々の喜びも一層大きなものになるでしょう。

 本日はご来場いただき、誠にありがとうございます。こうして皆様と同じ空間で同じ時を共有できることが何よりの幸せです。

 

つぶやき

坪井志展 

 昨年一月より続いたコロナがやっと終息に向かっています。マスク生活はまだまだ続きそうですが、不要不急の外出が非難される事は減ってくるのでしょうか。

 色々な制約をうけながらも、なんとか公演を実施することが出来たのは、こうして劇場(工房)に足を運んでくださるお客様のおかげです。

 昨年の春公演、「はたして足を運んでくれる人がいるのだろうか?」と不安でいっぱいだった事を思い出します。いち早く安心安全な治療薬が出回る事を期待して、次回からは以前の様に、お客様をお迎えできることを願っています。

 本日は、工房に足を運んでくださり、本当にありがとうございます。

 

上村 裕子 

 先日「最近あった良かった事を教えて下さい」と言われ、言葉に詰まってしまいました。自粛生活が長引く中、小さな楽しみや喜びをみつけて暮らそうと思っていたのに、咄嗟に思いつかないとは…。でもありました。

 我が家のもーちゃん(♀猫/七歳)は野良猫から我が家の一員になり、すでに五年が経つのに、背中はさする事ができるのに、いっこうに抱っこをさせてくれません。ところが、十月になり寒くなってきたからなのか?はわかりませんが、後ろ向き抱っこを一分位ならできるようになったのです!!これは大きな変化で、とても良かった事でした。

 そして、十一月になりました。大型新人のげんさんが初舞台を迎える事になりました。これもとてもとっても良い事です。

 良かった事、嬉しかった事をきちんと心にとめて、感じて生活して行きたいものだとつくづく感じている今日この頃です。

 本日はご来場、誠にありがとうございます。今日の出会いはとても嬉しいことです。

 

 野口 利香 

 スマホでニュースを見ていると、毎日のように気が重くなるような事件が載っています。嫌なニュースだなと思いつつ、つい見てしまいます。実際に起こったこと(事実)は、報道されているとおりなのだろうが、その裏にどんな真実があったのかと思うこともあります。

 特別な事件ではなく普通の日常で起こることでも、関わった人間それぞれ違った見え方があるのだろうし。私は自分の視点のみで物事を判断しがちなのですが、もっと他者の視点も想像し共感できたら、今よりも少し生きやすくなるのかなと。

 この「朝顔」は、読めば読むほど謎が深まりますが、複数の人間の真実が絡み合えば、こんな感じなのかとも思ってしまいます。そして、今まで経験の無いシュールでサスペンスなこの作品に取り組んで数ヶ月、もがき苦しみながらここまで来ました(相変わらず不器用全開の私でした)。これを書いている今は本番二週間前で、もう一踏ん張りも二踏ん張りも必要ですが・・・。

 皆様にも、ちょっと気持ちがざわつく感じの作品世界を共有していただけたらと思います。

 本日は、ご来場誠にありがとうございます、最後までごゆっくりお楽しみください。

 

小澤 厳 

 コロナ禍も一段落したように感じる今日この頃ですが、マスクを付けることにすっかり慣れてしまった自分に不思議な感覚をおぼえます。今の状況は、今後どのように展開していくのでしょうか。危惧しておりました、演劇などのカルチャーやサブカルチャーに大きな影響がみられないことに安堵の気持ちを隠せません。

 さて、今回は入団後、初の「役」を頂戴し、とまどいながらも本日まで稽古を積んでまいりました。皆様から入場料をいただけるような演技ができているのか、不安でいっぱいな気持ちでおります。つたない演技で、ご来場された皆様をがっかりさせることがないよう、精一杯頑張るつもりでおります。アンケートには、歯に衣着せぬ叱咤激励の言葉を頂戴できれば幸いと存じます。

 本日は、お越しいただき、誠にありがとうございました。

 

清水 匠 

 2021年もいつのまにか残り一ヶ月半となりました。

 今回、私個人としてはコロ ナウイルスによる緊急事態宣言や仕事の繁忙期が重なり、稽古に出られない期間も多かったのですが、無事本番に参加できることになりほっとしています。

 今回の舞台は今までとまた違った独特の雰囲気を醸し出しています。皆様からどんな感想をいただけるのかとても楽しみです。

 本日はご来場いただきありがとうございます。

 

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