第2回 久保田房枝さん

| コメント(0) | トラックバック(0)

今回のゲストは、久保田房枝さんです。大通茶館でやった第7回公演「受付」からずっと観てもらっています。朗読グループ「トライアングル」に所属していらして、演研・茶館工房でも朗読会を開いています。第29回公演と第37回公演の朗読劇「この子たちの夏」にも出演していただきました。


kubota1.jpg

 

富永:久保田さんが初めて観たのは、大通茶館でやった「受付」からですか?

久保田さん:はい。事務机に座っている芝居ですよね。女の人が二人出ていたと思う・・・いえ、そんなことないですね。(笑い)

富永:はい、「受付」は男と女の二人芝居です。(笑い)その前の「楽屋」は観てないんですね。観だしたきっかけは何だったんですか?

久保田さん:それは、多分小林さん(※)と知り合って、あ、池田で演劇をやろうとした時に、小林さんが指導しに来てくれたんです。

(※小林寿子、演研創立メンバーの一人。第3回公演まで在籍。その後第13回公演の「花の盛りに死んだあの人」にも出演。)


uketsuke.jpg

※1983年、第7回公演「受付」、大通茶館にて。女:坪井志展、男:佐久間孝。お客さんが入るとどんどん舞台エリアが小さくなっていった(^_^;)。


富永:え、久保田さん、演劇やっていたんですか?

久保田さん:高校の時に演劇部とバレー部だったんです。演劇部は、だから発声とはよく知らないんですけど、その時々に助っ人で出てたんです。

富永:ああ、ですから元々演劇に興味があったんですね。

久保田さん:ええ、で、小林さんに誘われて観に来たんだと思います。

富永:「受付」以降の芝居はほとんど観てますよね。

久保田さん:はい、いや、あまり覚えていないですけど。(笑い)

富永:「花の盛りに死んだあの人」(※)という芝居をやった時に、坪井が演研最後だと言うことで、寂しいと手紙を書いたということですが。

(※第13回公演。坪井が結婚し札幌へ行くことが決まっていた、他にも仕事で帯広の地を去る団員もいたので、さよなら公演となっていた。)


久保田さん:はい、私、坪井さんにファンレター書いたんです。北海道で一番良い女優だって。すみません。(笑い)

富永:いやいや、日本一とか言ったら、おかしいですから、北海道一がいい感じですよ。(笑い)

久保田さん:あの頃、黒テントもよく観ましたね。

富永:そうですね、演研で黒テントの受け入れをしていましたから。芝居が終わった後に、よく飲みましたよ。


kurotent.jpg

※黒テント公演「夜と夜の夜」終了後の打ち上げ。後列右端は黒テントの小條一成さん、左端は宗重博之さん。後列右から3人めと前列左が黒テントの(当時)新人さん。


富永:ところで、演研の芝居の中で何が一番印象に残っていますか。

久保田さん:私はね、ドロドロしたのが好きなので、「木蓮沼」が好きですね。

富永:「木蓮沼」は大通茶館でやったのと、芝居小屋でやったのを観てるんですね。それは、キャストは同じですね。

久保田さん:え、そうですか。違うよ、金田さんと・・・。

富永:「木蓮沼」は坪井と上村と部田の三人ですね。

久保田さん:その後もう一回、工房でやってるよね。

富永:いえいえ、やってないです。

久保田さん:ああ、「楽屋」ですね。

富永:そう、「楽屋」は工房でもやりましたし、大通茶館でもやりましたし、芝居小屋でも、あとメガストーンでもやりましたから、場所を変えて4回やってますね。

久保田さん:ああ、メガストーンでも観てますね。最後に枕を抱いて出て来たのは鈴木さん?

富永:ええ。工房でやった時は金田です。ということは「楽屋」が印象に残ってるってことですね。(笑い)


gakuya2.jpg

※第52回公演「楽屋」、メガストーンにて。左の写真中央は女優C坪井志展、右の写真左より女優D鈴木えりか、女優A野口利香、女優B金田恵美。


久保田さん:そうですね。すみません。あ、札幌にも観に行きましたよ。

富永:え、どこですか?シアターZOOですか?琴似ですか?

久保田さん:ZOOです。琴似でもやったんですか?

富永:琴似は、まだコンカリーニョが出来る前の本当に昔で、上村との二人芝居で「薔薇十字団・渋谷組」という作品をやりました。

久保田さん:ああ、「薔薇十字団」ね。


barajuji1.jpg

※1994年初の札幌公演「薔薇十字団・渋谷組」琴似駅前劇場にて。この舞台をつくるため、1ヶ月間毎週札幌へ通った。


富永:清水邦夫とかが好きなんですね。「花の盛りに・・・」も清水邦夫ですし。

久保田さん:はい、なんかドロドロという感じに惹かれるんですね。その後の「夫婦善哉」や「隣にいても一人」などの平田オリザさんの作品は、細かい微妙なところを感じさせますよね。

富永:はい、はい。

久保田さん:一回パッと観た感じでは分からないので、あれって日常を覗き見している感覚じゃないですか。そんなんだから娯楽としての楽しみはないんですけど、回数を観ると微妙なところがどんどん見えてきて、それと普段片寄さんや富永さんに会ってお話を聞いたりして、それでまた見方が変わってくるというか、そういうのはありますね。

富永:そうですか。

久保田さん:演研さんの求めているものは、完成度の高いものでしょ。

富永:はい、自分たちなりに。(笑い)

久保田さん:最近は、アフタートークなどもやるようになったじゃないですか。

富永:ええ。

久保田さん:その中で、役者の立場と演出の立場、観客の立場が、話を聞いているうちに明確になってくるので、見方というか、そういうのは勉強になります。 でも、平田さんに本を書いてもらえるっていうのは、スゴいなって思います。

富永:たまたまタイミングが良かったんですよね。今だと忙しくて、とてもとても。(笑い)

久保田さん:その中で、東京でやっている人たちとの交流で、演研自体がどんどんレベルアップしていると感じます。他の地元でやっている方たちは、変わらないなって思って。そういう意味で、観続けようと思いますよね。

富永:そうですね。道東小劇場演劇祭もそうですが、色々なところと交流しなければ、とは思ってます。そうすることで自分たちのことも見えてきますし。

久保田さん:地元の劇団同士は、今は完全に別々で交流もないですよね。自分たちは自分たちのやり方でやると、それはそれで良いんですけど。新しい劇団も出てきませんね。

富永:あ、そうですね。ここは高校演劇が盛んなので、その人たちが帯広に残って、劇団をつくったらいいんですけどね。

久保田さん:レベル高いんですね、十勝の。

富永:高校演劇はだって、柏葉高校も全国大会で優勝していますし。十勝の代表校は、毎回全道大会でもいいところ行きますし。

久保田さん:指導者がいいんですね。

富永:そうですね。それこそ、平田さんと知り合いになったきっかけが、久保田さんも参加したでしょうが、帯広でやったワークショップで。

久保田さん:幕別の百年記念ホールでもやりましたよね。

富永:はい、その前に十勝毎日新聞の主催で、帯広でやったんです。1年近く毎月平田さんが帯広に来て。あの時に、日曜日が一般向けで、土曜日に高校生大学生向けでやってたんです。その時の参加していた演劇部の顧問の先生たちは、皆全国大会に行っているんですよ。で、今年全道代表になった高校の演劇部の指導者が、その時帯広畜産大学の学生で、そのワークショップを受けていたんです。

久保田さん:へー。

富永:ですから、あの時いたメンバーが今の高校演劇を支えているようなところがありますね。

久保田さん:そういう意味では、演研さんが中央の人たちとの窓口になっているということは大きいんじゃないですか。

富永:まあ、そうですね。もともと黒テントを受け入れていた時から、交流は大切だということは分かっていましたからね。話変わりますが、久保田さん、演研の公演に出てますね。

久保田さん:あ、はい、「この子たちの夏」ですね。

konoko2.jpg

※第37回公演「この子たちの夏」。音更町文化センターにて。


富永:2回やりましたが、あれは練習大変でした?私が稽古に参加するのが遅くて、来た時はだいたい終わってましたよね。

久保田さん:はい、その後、演研さんの練習をしてましたね。

富永:あれは、どうして久保田さんに声かかったんでしたっけ?

久保田さん:都甲さん(※)のところでやってたからですかね。37か8で仕事辞めて、その時朗読ワークショップがあって、それを受けたんですけど、6回目の最後の時に都甲先生が出てきて、「ツツジの乙女」をやったんです。前に、27、8歳の時に勤労者福祉センターで都甲さんが朗読をやったのを観ていたんです。「よだかの星」とか。芝居は皆でやらなきゃ出来ないけど、朗読なら一人で出来るなと、その時からずっと思っていて、仕事を辞めた時にそのワークショップに行ったら、最後に都甲さんが出てきて、あのときに感激した「ツツジの乙女」を聞くことが出来たんです。それですぐ「なすの会」に入ったんです。

(※都甲雅子。享年68歳。学生時代より演劇活動に入り、詩・民話・文学作品の朗読を続けた。朗読研究会「なすの会」の顧問を務めるなど、後進の指導にも力を注いだ。)


富永:そうですか、都甲さんも「この子たちの夏」には出演してますからね。

久保田さん:そうですね、だから片寄さんが声をかけてくれたんだと思います。

富永:参加してどうでした?

久保田さん:いや、いつも観ていた皆さんと同じ舞台に立つんですから、ついて行くどころか、その場にいるだけで、私がいていいのだろうかと言う感じでした。

富永:まあ、都甲さんは先生な訳ですしね。

久保田さん:それは必死でしたよ。でも、最後の方で「私は25歳、ああわが身がかわいい」というセリフがあるんですが、それを私でいいと演出から言われた時に、何とか形になって収まったのかなって思いました。

富永:はい。

久保田さん:でも、うちの旦那とか子供とか観に来て、やっぱり他の皆さんと差を感じると言われましたけど。(笑い)


konoko1.jpg

※第29回公演「この子たちの夏」の稽古風景。演研芝居小屋にて。左から2人目が久保田さん。4人目が都甲さんです。


久保田さん:逆に富永さんがやってみたい芝居は何ですか?人数とかは別として。

富永:え、人数とかは別としてって?

久保田さん:人数が何人かしかいないから出来ないとかを考えないで。

富永:ああ、私がやりたい芝居ですか?それは唐十郎ですよ。ジャジャジャーンって音楽がかかって、壁がガラガラッと崩れてね。そんなの楽しいじゃないですか。(笑い)アングラ世代ですから。

久保田さん:ああ、そうだよね。

富永:なんたって、学生の時に初めて東京へ行って観た芝居が状況劇場ですから。まだ根津甚八とか小林薫がいた頃で、あの時はぶっ飛びましたから、世の中にこんなものがあるんだって!

久保田さん:へー。オシャレな感じのではないんですね。あ、そうそう、そのおかげで東京へ行って芝居を観る経験が出来たんですから。それもここに来続けたから出来たんですよ。

富永:それはうちの「隣にいても一人」の東京公演を観に来たのが、初めて東京で芝居を観た経験ということですか?

久保田さん:そうですよ。

tonari3.jpg

※2008年、青年団プロジェクト公演「隣にいても一人帯広編」、こまばアゴラ劇場にて。平田さんが全国各地でつくった「隣にいても一人」8バージョンを一挙上演するという企画に呼んでいただきました。


富永:その時、別の芝居を観たんですか?

久保田さん:観ましたよ。歌舞伎も観ましたし。

富永:それは追っかけですね、演研の。(笑い)札幌公演も観に来たし、東京にも観に来たし。

久保田さん:そうですよ。時間とあれが許す限りは。(笑い)

富永:素晴らしい。で、そんな演研に今後に望むこととかありますか?

久保田さん:続けて下さい。それだけです。

富永:はい、分かりました。頑張ります。(笑い)今日は、ありがとうございました。

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://enken.gotohp.jp/fesblog/mt-tb.cgi/208

コメントする