今回のゲストは、山田洋子さんです。音更町文化センターの事業協会にいて、白石加代子さんの「百物語」などの芝居をよんでくれています。演研の「この子たちの夏」音更公演が実現したのも、山田さんのお陰です。
富永:えーとですね。うちの片寄が観客名簿に、誰が何回来たとか書いているんですが。(観客名簿を見ながら)
山田さん:さすが、片寄さん。マメですね。
富永:山田さんはずーっと観てもらってますので、もう書ききれなくなってますね。(笑い)芝居小屋からではないですよね。大通茶館でやっていた芝居も観てますよね?
山田さん:えっと、どうだったかな。観に来るようになったキッカケは、おやこ劇場の宣伝で来たんです、最初。
富永:ああ、大通茶館に?
山田さん:ええ、とにかく、皆主婦の人たちだから、どうやって宣伝していいか分からなかったんです。で、とにかく芝居やっている人たちに、と思って。
富永:はいはい。
山田さん:で、劇団なんてそんなにないじゃないですか。
富永:そうですね。ほうき座、扉、
山田さん:そうそう、で、あかねの会。それでここ(演研)だけ雰囲気がちょっと違って、私入っていいのかしらって感じで、怖かったんです。
富永:本当ですか。(笑い)
山田さん:いや、本当です。でも1回来たら、不思議な世界で、宣伝のことなんか忘れて、個人的に観に来るようになりました。
富永:へー。
山田さん:最初、怖かったですよ。で、その時に片寄さんに「とにかく観ないとダメだ。お母さん方、とにかく機会があれば何でも観て下さい。」って言われたんです。
富永:はい。
山田さん:その、片寄さんの言葉が、心に残っていて、皆に同じこと言ってます。何でも観ようよって。十本観て一本でも良いものがあれば、幸せなんだよ。一本観てつまんなかったからって、もうやめた!じゃなくってね。
富永:平田オリザさんが言ってたんですが、昔、アゴラ劇場で「大世紀末演劇展」ってやっていたんですが、絵画の場合、展覧会で一つでも気に入った作品に出会ったら、それで満足するじゃないですか。
山田さん:そうだよね。
富永:演劇も一本観てダメだったじゃなくて、
山田さん:そうそうそういう人多いのよ。
富永:その演劇展の中で、一本良い芝居を観たら幸せだみたいなことを言ってましたね。
山田さん:私もそう思いますよ。でも十勝にいると芝居観る機会が少ないから。高いお金出して外れたら、もういいってなっちゃうでしょ。
富永:それはそうですね。
山田さん:でも、演研は長く続きましたね。
富永:何か印象に残っている芝居とかありますか?
山田さん:やっぱり「木蓮沼」とか、好きでしたね。初めて「木蓮沼」を観て、その後も何回か観てるでしょ。で、観る度に違うんですよね。自分も感じ方が違ってきているからかな、同じ作品なのに。そういうことってあるでしょ。
※第9回公演「木蓮沼」。大通茶館での公演。左から坪井志展、部田泰恵子、上村裕子。
富永:はい、ありますね。じゃあ、大通茶館でやったのと、芝居小屋でやったのと二度観てるんですね。
山田さん:はい。ここ(大通茶館)で初めて観た時は怖かったです。奥が深いと思いました。
富永:「木蓮沼」はちょっと難解な芝居なので、二回観て分かるって事があるかもしれませんね。
山田さん:ほら、最近のでさ、坪井さんの、あれ珍しい感じで、良かったよね。女の子が3人で、
富永:ああ、ぐるぐる回ったやつですか。「あゆみ」。
※「あゆみ」作:柴幸男、演出:富永浩至。金田恵美と野口利香。
※「反復かつ連続」作:柴幸男、演出:富永浩至。出演、上村裕子。
山田さん:そうそう、あれ、面白いじゃないですか。あれは新しかったですよね。上村さんも、あんな、なんかチャーミングでビックリした。本当。
富永:ありがとうございます。まあ、上村はトイレの客でちょっと出てきただけで、ウケてるんだから。(笑い)
山田さん:ねー。リアルって言うのか、やっぱり長いキャリアなんだわ。
富永:雰囲気があるんでしょうかね、思わずプッとなるような。(笑い)
山田さん:だから、たったワンシーンでも、素人だったら、分かっちゃうんですよね。それこそ音更で芝居をつくった時に、劇団に入ってやっている若い子がいたんだけど、その子を起用しようということになったんです。
富永:はい。
山田さん:そしたら、舞台にピッと立っていないって。前進座の方が指導に来てたんだけど、怒るんだよね、ちゃんと立てていないって。あれは何年やっているんだ、あれはダメだ!って。おっかなーいって思って。(笑い)
富永:はい。(笑い)
山田さん:そりゃそうですよね。でも上村さんは何十年もやってるから、凄いと思った。
富永:山田さんは、その音更の文化センターの何かやってますよね。
山田さん:それは、事業協会っていうのがあって、半官半民みたいな形で、舞台部門、美術展示部門、音楽部門、それに進行部門の4つに分かれているんです。私は舞台部門にいるんです、ボランティアですけど。
富永:それはおやこ劇場のあとですか?
山田さん:いや、おやこ劇場をやってたから、役員として入って行ったと思うんですよ。音更の文化センターをつくる時に意見を聞きたいと言う、そういう会があったんですよ。それに関わっていたんですよ。その流れで。
富永:ああ。
山田さん:で、音更は芝居を見せるだけじゃなくて、つくるということもやったりして。
富永:そうですね。
山田さん:演研は、最近、お若い人が入っていいですね。
富永:え、誰ですか?
山田さん:金田さんとか。
富永:いやいや、金田が入ってもう15年ですよ。(笑い)
山田さん:そうですか。あの人、もう一人の人は。
富永:野口ですか。野口はもうちょっと古いです。
山田さん:そうですか。いや、そうですね、若い人はなかなか入らないよね、芝居も観に来ないし。
富永:その舞台部門の人が何人かで話し合って、呼ぶ作品を決めるんですか?
山田さん:そうそう、でもお金がないから、単独で呼べないでしょ。
富永:そうか、だから演劇財団のようなところで、こういうのがありますよって、紹介してもらったものから、選ぶってことですか。
山田さん:そうですよ。今度やって下さいよ。
富永:え、音更のホールで、ですか?
山田さん:あ、昔1回やりましたよね
富永:やりました、やりました。「この子たちの夏」ですね。
※「この子たちの夏」音更公演。音更文化センターの楽屋の様子。
山田さん:ホールとか嫌いなんですか?
富永:嫌いっていうか、自分たちの小屋がありますから。ホール借りるとお金かかりますし。
山田さん:まあね。
富永:照明を自分たちで操作出来ないじゃないですか。それと稽古が出来ないですよね。前日くらいしか。それが大きいかな。
山田さん:そうですね。芝居って、観るのに想像力がいるじゃないですか。絵でもそうですが。演研の芝居は、凄くかき立てられるので、面白いと思う。
富永:再演とかすると、また違うところが見えるから、面白いって言われることがありますね。
山田さん:そうなの。自分のその時の状況とか、年齢とか、あるでしょ。だから、それは再演の良さでしょ。それに、ここの空間は凄くいいと思う、集中できて。演じる人は大変でしょうけど。
富永:でも、それが良くて、やっていることもありますね。山田さんは絵も描かれてますよね。それは高校時代からですか?
山田さん:そうですね。高校は美術部でした。
富永:それからずっと?
山田さん:いやいや、子供3人もいますから、それはとてもとても。下の子が4歳くらいの時だったか、婦人センターで託児所つきで、絵画教室があったんです。
富永:はい、はい。
山田さん:それでまた描き始めたのかな。高校卒業してからも描いていたんですが、油絵なんかは、全然。油絵の道具なんか買えなかったですも、若い時は。今は安くなりましたけど。
富永:山田さんは、廃屋の絵をずっと描かれてるじゃないですか。あれはどうしてですか?先生にそれを描きなさいって言われるんですか?
山田さん:いえいえ、好きで描いているんですけど。公募展に出す時は、あまりがらっと変わっちゃダメだって言われるので。
富永:あ、そうなんですか。
山田さん:まあ、飽きないから描いてるんですけど。公募展に出すと、あまり違うもの描くと覚えてもらえない。これ誰だってなるから。
富永:ああそうか。審査する人が、この人去年もいたな、頑張ってるなって、印象に残るということですか。
山田さん:そうみたいですよ。変える人もいますけど。
富永:そうですか。
山田さん:でも続いてますよね。
富永:はい、お陰様で。昔は本当に狭いところで、大通茶館にしても芝居小屋にしても、客席がぎゅうぎゅう詰めで、よく観てましたよね。
山田さん:だから私も最初来た時に、真面目だったから、はい皆1センチ詰めて、って言われてその通りやって、こんなになって観てましたけど、そのうちそんなに真面目にやるんじゃなかったって、詰めた振りしてれば良かったんだなって。(笑い)それからこつを覚えたんですけど。
※大通茶館公演での客席の様子。舞台と客席の境目がないため、お客さんが入るとどんどん舞台が狭くなった(^^;)。
富永:そういう時代だったんですかね。
山田さん:逆に良かったのかもしれませんよ、ここは。他と違っていて。これからも頑張って下さい。
富永:はい、ありがとうございます。
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