第8回 松下菜穂子さん

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今回のゲストは、松下菜穂子さんです。こちらも純粋なお客様。演劇が大好きで、多い時には年5、6回東京へ観劇に行っていたそうです。さてどんなお話が聞けるでしょうか。


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松下さん:今日は言いたいことが三つあるんです。

富永:え、そう、そうですか。はい、ゆっくりお聞きします。(笑い)松下さんは、いつから演劇を観るようになったんですか?

松下さん:まず、札幌で学生の時にイヨネスコの「授業」とか、北大の学生が「ジョンシルバー」をやってたのを観たんです。

富永:え、「ジョンシルバー」って唐十郎じゃないですか。

松下さん:そう、それを観た時にちょっと衝撃を受けて、演劇面白いなって思ってて、それから、その次に観たのが演研の「楽屋」なんです。

富永:え、ちょっと待って下さい。

松下さん:もともと学生演劇が面白いなって思っていて、

富永:え、地元帯広なんですか?

松下さん:いや、富良野です。

富永:あ、帯広に就職が決まって、ってことですか?


松下さん:そうそう、それで3、4年は一生懸命働いていたんですけど、職場の人と演劇観に行こうって言って。

富永:ええ。

松下さん:で、志展ちゃんが、ここ(大通茶館)でやった「楽屋」を観て、大感動!号泣して。それからですよ。

富永:あ、そうですか。

松下さん:これが一つ目です。(笑い)

富永:え、ああ。はい。(笑い)


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※第6回公演「楽屋」。終演後の挨拶、仕事を辞めて喫茶店を開業し4年ぶりに演出した片寄の挨拶に、団員も涙。



松下さん:全ての女優さんに共感して観ていたんですが、最後に鏡がワーッと出て、で、その鏡に自分の顔が映ってたんです。その時に、ボロボロって。

富永:ええ、そうですか。え、どうやって演研を知ったんですか?

松下さん:陶芸教室に通ってたんですが、そこに片寄さんも通っていて、それででチラシをもらったんだと思います。でも申し訳ないけど、地域でやっている演劇はどうかなって思っていたんです。

富永:それは、どこかで地域でやっている演劇を観て、そう思ったんですか?

松下さん:うん、田舎のね。でも、観たら、当たり前にクオリティーが全然違いました。

富永:それからずっと観てくれてますね。

松下さん:はい、だいたい観てます。それから、号泣したあとこれ以上のものが観れるかと思ったんですけど、二回目に号泣したのが、あ、これが二つ目なんですけど。

富永:はいはい。(笑い)

松下さん:それは、村上祐子さんの演技。

富永:え、それは村上が出たのは、あれですよ。

松下さん:市民文化ホールでやった、

富永:「この子たちの夏」。

松下さん:はい、それですね。


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※「この子たちの夏」での村上祐子。この写真は再演の音更文化センターでの公演。



富永:他にも出演者がいましたけど、特に村上が良かったんですか?

松下さん:うん、そのたたずまいというか、演技しない演技。

富永:そうですか。松下さんは(演劇は)やってはいないんですよね?

松下さん:ええ。観るだけです。なんか、自分の中で、今これが好きっとかいう時期があって、例えば「少年王者館」大好きっという時期があったり。

富永:え、またそういうマニアックなところを。(笑い)「少年王者館」って、東京じゃなくて名古屋の劇団ですよ。なんで知ってるんですか?

松下さん:たまたまですよ。(笑い)中村榮美子さん(※)が出るようになって、メンバーが変わってきて、私の中のブームが去ったんですが。

(※中村榮美子。1990年代「セブンティーン」の専属モデルとなり、ドラマ「高校教師」で女優としてデビュー。その後「少年王者館」に所属。)


富永:まあ、名古屋に行って観たんじゃなくて、東京で観たんでしょうが、

松下さん:ええ、スズナリで観ましたね。その時にスズナリの前に松尾スズキが立ってましたよ。(笑い)

富永:えー。じゃあ「大人計画」とかも観てるんですか?

松下さん:「大人計画」は観てなくて、この前に「新感線」とやった「大人の新感線」が初めてです。

富永:よく観てますね。

松下さん:この前は「朝日のような夕日をつれて」(※)を観に、東京へ行ってきましたよ、何回目かなあ。

(※「朝日のような夕日をつれて」。鴻上尚史の劇団「第三舞台」の旗揚げ公演で上演。その後、1983年、85年、87年、91年、97年と再演を繰り返す。昨年、KOKAMI@networkの公演として17年振りに再演された。)


富永:何回も再演していますからね。え、何回目ですか?

松下さん:4回目かな。

富永:昔、札幌にも来ましたからね。

松下さん:ええ、札幌に本多小劇場ってありました?

富永:ええ、ありました、ありました。僕もそこで観ましたよ。

松下さん:あ、観ました?私はあれが最初ですね。あと、夢の遊眠社(※)とかも観ましたよ、「野獣降臨(のけものきたりて)」とか。

(※夢の遊眠社。野田秀樹が主宰していた劇団。1992年に解散。)


富永:それは本多劇場で、紀伊国屋(ホール)?

松下さん:紀伊国屋ですね。二回観たんですよ。北海道にも来たんですよ。

富永:え、そうですか、それは知らなかった。

松下さん:あと「宇宙蒸発(ワルハラじょうはつ)」も観ましたよ。

富永:へー、観てますね。

松下さん:ええ、好きなんです、観るのが。それで、その中で、これが三つ目に言いたいことなんですが、

富永:あ、はいはい。(笑い)

松下さん:私の中のベスト5に「楽屋」が入るんです。

富永:え、その、松下さんがこれまで、プロ芝居とかいろいろ観た中でですか?

松下さん:そう、「パンドラの鐘」とか、いろいろ観ている中で。

富永:すごいなあ。(笑い)

松下さん:四人のアンサンブルが良かったし、その後も再演してますよね。

富永:ええ、「楽屋」は4回上演してます。

松下さん:でも、私の中では最初の「楽屋」のインパクトが凄いです。


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※第6回公演「楽屋」。左より女優B部田泰恵子、女優A清水章子、女優D佐々木光子。


富永:分かります、分かります。僕もその時はまだ演研に入っていませんでしたから。

松下さん:内山さんもやりましたよね。

富永:はい。そう、女優Cをやりました。その時は、赤羽が女優B。

松下さん:内山さんの女優ぷりも良かったですね。そうだ、青い鳥(※)もやったじゃないですか。

(※劇団青い鳥。1974年に設立した女性だけの劇団。作・演出を全員で手がける集団創作を行ない、上演終了後に「一同礼!」と全員で礼をすることから、作・演出を市堂令とした。)


富永:はい、大通茶館で。「いつか見た夏の思い出」。

松下さん:あれも印象的でした。私の中では、演研の中で新しい芽がいっぱい出て来たっていう感じがしました。その後、皆いなくなっちゃって、残念だわ。

富永:そうですね。5人でやりましたからね。あれ、台本にこの部分は即興で、とか書いてあるんですが、(笑い)僕ら困って、そんな出来ないですから、即興の部分を一生懸命稽古してましてたね。(笑い)

松下さん:1度だけ「青い鳥」観たことあるんですが、ストーリーは忘れたんだけど、大量のスパゲッティだけ、覚えてますね。(笑い)

富永:ああ、「シンデレラ」ですね、多分。

松下さん:でも、演研があって良かったです。

富永:え、どうしてですか?

松下さん:こんなに演劇が好きになると思わなかったの、自分の中で。音楽とか映画とか本だとかは、自分で取り込むことが出来たんだけど、でも演劇ってなかなか、

富永:ええ、そうですね。

松下さん:こんだけ、ちゃんと、常設で、公演をうってくれて、しかも質が高くて、面白いってのは、演研があったから。帯広の文化を引っ張ってるのは、演研ですみたいな。(笑い)

富永:はい、ありがとうございます。(笑い)でも、そんなに観ている人だとは、知らなかった、凄いなあ。年に5回も6回も東京に行ってるんでしょ。

松下さん:いや、それは昔、今は1、2回ですよ。

富永:いいな、僕も東京に芝居観に行きたいなあ。家族がいるとなかなか、一人で行くとあんただけ遊びに行ってって言われますし。(笑い)

松下さん:本当は遊びじゃないんだけどね。

富永:いやいや、遊びですよ。演劇をやっていること自体、道楽ですから。(笑い)

松下さん:いや、いや、演研の演劇は道楽ではないですよ。富永さんの大杉栄、好きですね。

富永:「走りながら眠れ」ですね。はい、ありがとうございます。


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※第34回公演「走りながら眠れ」、演研芝居小屋にて。帯広に戻って来た坪井志展の演研復帰作です。


松下さん:この前のも面白かったですね。

富永:「あゆみ」ですか。ダメな人もいるみたいなんですが、褒めてくれる人は凄く褒めてくれるんですよ。

松下さん:上村さんの方は、上村さんの力が存分に発揮出来ていて、ああいいなって思ったんですが、「あゆみ」の方は、様式美というか、それが凄く面白かったです。私、野口さんの立ち姿が好きなんです

富永:ええ。


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※第68回公演「トイレはこちら」、演研・茶館工房にて。女役、野口利香。


松下さん:「トイレはこちら」の時も、野口さんの回に行きました。志展ちゃんは、この間のコメディアンヌをやった、野田秀樹。

富永:ああ、「表に出ろいっ!」。

松下さん:あれはかっこいいなって思いました。

富永:ああ、そうですか。

松下さん:また、ああいうのを楽しみにしてます。

富永:はい。


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※第66回公演「表に出ろいっ!」、演研・茶館工房にて。演研初の野田作品、母役の坪井志展。


松下さん:あと「ロリータ」(「救いの猫・ロリータはいま・・・」)の時の金田さんと志展ちゃんとの感じも、凄く印象に残ってます。若手の人を出すって時ですよ。


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※第46回公演「救いの猫ロリータはいま・・・」、メガストーンにて。巻子役の金田恵美とあすか役の坪井志展。


富永:はい、はい、新人お披露目公演でした。メガストーンでやった時ですね。

松下さん:はい。でも、志展ちゃん、帰って来て良かったですね。

富永:そうですね。まあ、帰って来てなかったら、演研もここまで続いてないでしょうね。

松下さん:そうですか?

富永:さっき「いつか見た夏の思い出」に出てた人、皆いなくなっちゃって、って話してたじゃないですか。あの頃、結構団員の出入りが多くて。でも、3人いれば出来るよねって話をしていて、上村が結婚して、仕事も段々忙しくなって、なかなか稽古に出られなくなった時に、ちょうど坪井が、旦那さんの転職で帯広に戻って来たんです。だから続けられたってことがありますね。

松下さん:で、次は何やるんですか?

富永:「楽屋」ですね。これが最後ですかね。

松下さん:最後?

富永:若い子もいないですし。

松下さん:若い子が入ってくれば、何とかなるのに・・・。再演も良いですけど、でもね、時々は新しいのもやって下さい。

富永:あ、はい。

松下さん:志展ちゃんが演出したもの面白かったですね、「芝居」。

富永壷に入ったやつですね。あれも奇妙な芝居でしたね。

松下さん:あれも好きだったな。皆で演出し合って、皆で出れば良いじゃないですか。

富永:そうですね、頑張ります!(笑い)今日はどうもありがとうございました。

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