第12回 杉本裕子さん

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今回のゲストは、杉本裕子さんです。元、上村の同僚で金田の上司でした。今は退職して、ベジハートという会社で手作りの野菜チップスやドライピュレーキャンディーなどを作って販売しています。興味のある方はこちらからどうぞ。>http://bejiha-to.hp.gogo.jp/pc/index.html

 

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富永:演研の芝居を何から観たか覚えてます?

杉本さん:私、「薔薇十字団」か「ロリータ」かどちらかだと思います。

富永:芝居小屋ですね。

杉本さん:はい。この前、インタビューの声をかけてもらって、私そんなに常連じゃないしって思ったんですが、もう演研を二十年以上観てたんです。(笑い)

富永:そうですよ。(笑い)

杉本さん:すっごいビックリして。

富永:いや、いや、観てますよ。


杉本さん:で、よくよく思ったら、演研さんの芝居を観に行き出したのが、24か5なんです。で、前の職場に上村さんが入ってきて。

富永:はい、はい。

杉本さん:その時に私とペアを組んで、それが縁で、知り合って。なんて面白くて元気な人なんだって思ったんですが(笑い)、色々話しているうちに、仲良くなって。そしたら芝居をやっていると、今度公演があるから来てって言われたんです。で、それが最初です。

富永:はい。

杉本さん:芝居ってそんなに観た事が無かったんですが、ものを作るのがずっと好きで、音更で戦後50年のときに「銀河鉄道の恋人たち」というミュージカルをやったんですが、そういうのに入ってみたり、

富永:え、舞台に立ってるの?

杉本さん:結局、人数が足りなくてかり出されたんですが、(笑い)舞台装置とかがやりたくて入ったんです。

富永:え、なんで演研に入らないの?(笑い)

杉本さん:いや、いや、いや。(笑い)文化祭とかよくかり出されて、で、裏方をやりたいのに、舞台に立たされて頭真っ白になったりとか。(笑い)でも作るのは好きなんです。

富永:はい。

杉本さん:それで、上村さんに誘われて、演研の芝居を観た時に、帯広でこんな本格的な事やってるんだって思って。それと役者さんが知り合いじゃないですか。

富永:ああ、上村ね。

杉本さん:舞台では普段とは全然違うんですよ。彼女は観られるのは慣れているんだろうけど、観てる私の方がハラハラしたりして。(笑い)芝居の前半、四分の一くらいは私の方が意識しちゃって、でもその後はちゃんと芝居の世界に入っていくんですが。

富永:なるほど。(笑い)

杉本さん:金田の時も恥ずかしくて、恥ずかしくて。(笑い)

富永:あ、そう。(笑い)

杉本さん:「薔薇十字団」が特に!あの芝居で、上村さん、どんどん脱いでいくじゃないですか。しかも富永さんが、何てことするの!って、何て悪い人なんだろうって思って。(笑い)テレビとは違って、生々しいから。


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※第23回公演「薔薇十字団・渋谷組」。いや、どんどん脱いではいかないと思います(^^;)。


富永:いや、いや、観てない人が誤解するじゃないですか、どんな芝居なんだって。(笑い)確かに服は脱ぐけど、スリップ着てるから。

杉本さん:でも、生肌じゃないですか。それで、最初、恥ずかしかったんですけど、でも面白くて。もともと芝居を観るのが好きだったし、物語の世界に引き込まれる気持ちの良さもあって。自分の中でもいろいろ想像して観ていたので、面白かったです。芝居を観る事で、その世界を旅する感じで楽しんでます。

富永:ほー。

杉本さん:で、そのうち再演をするようになって、二度観ると一回目と二回目が違っていて、それがすごく面白い。自分の観方が変わるっていう事もあるし、演じている方の出し方も変わって来るのかなって、考える事が変わってきて、自分も歳を重ねて、前はそんな風な観方をしなかったなって。

富永:うん、うん。

杉本さん:最初はストーリーに感動して、泣いたり笑ったりしていたのが、再演すると余韻を楽しむようになって来て。それはきっと、作品の内容が濃いというか、充実しているというか、役者さんたちもちゃんと芝居を作っているというのもあるのかな。

富永:まあ、もともと再演に耐えられるような作品を選んでいるということがあるし、僕らも再演することで分かることもあるから、表現が深くなっているということもあると思います。

杉本さん:観る側も歳を重ねて、成長してきてるのかな。再演は何度観ても楽しいです。最近は新しいものにチャレンジしてくれるじゃないですか。色んなことをやってるんだなって、何か一緒に楽しませてもらってます。主流を大事にしながらも、自分たちの可能性をまだまだ探っているのかなって思います。どんどんやって下さい。応援しています。

富永:ありがとうございます。

杉本さん:演劇祭はやらないんですか?

富永:釧路の北芸が解散したので、ちょっと難しいですね。でも、僕の中では、どこかで復活してやりたいなとは思ってます。あ、「いち・ご白書」の時に絵を描いてくれたじゃないですか。絵はもともと描かれてたんですか?

杉本さん:田舎の学校だったので美術部が無くて、短大に行った時に入ったんです。前から絵を描くのは好きだったので。帯広に来てから、NHKの文化教室で習ったりしてました。

富永:はい。

杉本さん:「いち・ご白書」の時は凄く嬉しくて、舞台美術とかやりたかったので。え、いいの?って嬉しかったんですが、でも描けなくて。

富永:「赤いドレスの女」ね。

杉本さん:なんとか形にはしたんですけど、自分の中で納得いかなくて、悔しくて舞台終わった後、もう一度赤いドレスの女を描いて、上村さんにプレゼントしました。

富永:そうですか。

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※こちらがその時の絵。30周年の時に鐘下辰男氏に依頼した新作「いち・ご白書」。そのト書きに、ホテルのシングルルームの壁に「赤い服を着た女」の絵画が掛けられているという指定があり、またその絵は後で登場する女・マユミ(上村の役)に似ているという設定だったので、上村に似せて描いてもらいました。


杉本さん:さっき自分でも作り上げることが好きって言いましたけど、お芝居を作ることって、ただそれが出来ればいいって、皆さん思ってないんだろうなって見てたんですけど。

富永:え、どういうこと?

杉本さん:ただ台本通りに演じてるだけじゃなくて、何かその中で自分を表現したくて、お芝居をやっているのかなって思ってたんですけど、何かを伝えたくってやっているのかなって。

富永:う〜ん、まあ自分がやっていて楽しいからだよね、第一は。で、言葉で説明出来ないことってあるじゃないですか、それが伝わると嬉しいですね。伝えたいというより、楽しんで観てもらいたい、その結果、伝わるととても嬉しいって感じですかね。

杉本さん:なるほど、はい。

富永:絵を描いていて、伝えたいって思います?

杉本さん:今、絵を描いてなくて、仕事を辞めてからあまり描いてないんです。

富永:それは今の仕事が忙しいから?

杉本さん:いや、今の仕事は時間も割とあって、描こうと思えば時間はとれるんですが、描きたいと思えるものを探している感じですね。

富永:まあ、美術は一人で完結することが出来るけど、演劇って皆が集まってやるので、そういう意味では自分がやりたくなくっても、やらざるを得ないと言うか。自分が多少落ちていても、他の人に引っ張ってもらえるってことがあるよね。

杉本さん:以前は、描くことで自分の中の何かは消化が出来ていた気がするんです。でも、今はそういう消化の仕方をしなくてもいいのかなって。まあ、でも描いたからって、何か問題が解決する訳じゃないんですけど。

富永:まあ、そうですよね。

杉本さん:いやいや、何を話そうと思ってたんだっけ。あ、そうそう、ワークショップです。演研さんで何回かワークショップをやってくれて。

富永:杉山さんのワークショップとか受けてくれたじゃない。

杉本さん:そうです。あと大塚さんのワークショップを職場でも受けたりして。

富永:あ、そうだね、上村のルートで。平田さんのワークショップもやったじゃない、あと山内さんとか。

杉本さん:はい。コミュニケーションを大事にする仕事なので、ダイレクトに繋がるんです。職場でやった時も、あれを受けた若手が凄く感銘を受けていて、やっぱり実際に体感出来るというのが、理屈じゃなくて体で分かっていくので、それが面白かったんだなって。自分も受けていて楽しかったし、自分で超えられない、何ていうのかな、色々なものが邪魔をして、出来ないんだなってことが分かったりして。こういうことを役者さんたちはやってるのかなって。

富永:いや、僕らは、日常的にはやってないけど、たまにブラッシュアップするために、外部の人に来てもらうってのはありますね。

杉本さん:ああいうことに参加するのが、自分的にも楽しかったし、気づくこともあったし、ああいう企画があったらまた是非、誘って下さい。

富永:はい、是非。で、演研の中でこの作品が印象に残っているってものはあります?

杉本さん:そうですね、インパクトがあったのは、やっぱり「薔薇十字団」ですね。

富永:まあ、さっきの話からいくとね。(笑い)

杉本さん:どれも好きなんですけど、「隣にいても」も鉄板ですよね。佐久間さんのは、一度しか観られなかったけど、印象に残ってますね。私たちの仲間内では、佐久間さんが良いという佐久間ファンがいましたから。


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※「隣にいても一人」初演、(2000年)。中央が佐久間孝。


杉本さん:再演をやっていく中で、役者が一人変わると作品が変わっていくのも面白かったです。役者が替わると違いますよね。

富永:違いますね。それこそ「隣にいても一人」は平田さんが全国各地で作って、まあ方言を話してたってこともありますけど、それぞれ全然違いました。

杉本さん:「隣にいても」は良いですね。孤独も感じるし、自分と重なる所もあったりして、面白かったです。あと、最近のものだと、漫才をやったやつ。

富永:ああ。タイトルが長いからすぐに出ないけど、坪井と大塚さんが出た、えっと「よわくてやわらかくてつよい生き物」。

杉本さん あれも好きですね。あ、「思い出せない」も好きです。

富永:今も金田を見ると、親の気持ちになります?(笑い)

杉本さん:そうですね、一番最初に大通茶館で「忠臣蔵」をやったじゃないですか。こんな近くで人にお尻向けちゃってって。そんな近くで他人にお尻向けられたの初めてだったから、ひーって思って。(笑い)金田さん、そんな、他人の目の前でストレッチやってはいけませんって。(笑い)

富永:はい、はい。(笑い)

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※第42回公演「忠臣蔵ー劇団編」、大通茶館にて。村上祐子が25年振りに小劇場の舞台に復帰した。


杉本さん:「飛龍伝」にしても、熱い感じがあって、演研って円熟したものを見せてくれるんですけど、時々そういった若い感じのもあって、そのギャップがまた面白かったり。最初に平田作品をやったのって、15年前くらいですか?

富永:「思い出せない」が20周年の時だから、20年前ですね。

杉本さん:その時に平田作品は、地味だと思ったんです。で、私、単調だと割と寝るんですけど、その時は寝なかったんです。で、観た後、悶々として、それを引きずっていて。最初意味が分からなかったんですけど、再演をしたり、平田作品を何作か観ているうちに、あースゴイなって。味というか、後からじんわりと来て、凄い作家さんだなって思いました。最初は、何を言っているのか分からなくって、ついていけなかったですね。

富永:あれをやる時に、劇団内でも、お客さんに伝わらないんじゃないかって意見も出て、やるかやらないか迷った作品でしたね。

杉本さん:いや、でも回を重ねるごとに、これは演研さんにぴったりだと、思うようになりました。あの本の中の色々なものを引き出して表現するって、凄いなって思います。アフタートークで平田さんのお話を聞いて、ああこういう人なんだって思ったり、あと映画、

富永:あ、「演劇1・2」、すっごい長いやつ。(笑い)

杉本さん:そうです。あれも面白い試みだなって。映画の中で、舞台裏みたいなものも観れて、こういうのも良いなって。

富永:茶館工房がミニシアターになってましたね。

杉本さん:平田作品はこの20年の中で、スルメのように味わってます。何回再演しても、絶対観に行くだろうなって。また、役者が変わるとまた違うのかなって、楽しみです。

富永:最後ですが、今後演研に期待することとかありますか?

杉本さん:本当に帯広に演研さんがあって良かったなって、つくづく思います。質の高い演劇を見せてもらって、感謝しているんですよ、しかもリーズナブルに。小さなスペースっていうのも自分はとても好きで、舞台が近いので身近に感じられて良いなって思いますし。時々、道東小劇場演劇祭みたいに、違う所から来てもらって、セッションしてもらうとか、ああいうのをまたやってもらいたいですね。

富永:分かりました。今日はどうもありがとうございました。

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