北海道新聞(夕刊)2001年10月6日(土曜日)より

 「一人一人の顔を見たら、うん、うん、やってるなあーって思えて。みんなが一つの集団になったようでうれしかった。道東から恥ずかしくないものを発信できたと思う」
 9月29日、30日の両日、帯広のライブホールメガストーン(東6南5)で、帯広、釧路、北見の三劇団がつどい「第1回道東小劇場演劇祭」が開かれた。2日間で約三百人の観客を動員し、帯広の劇団演研の片寄晴則代表(52)は、充実感にあふれる表情を見せた。
 参加したのは観客と一体感を持てる小劇場にこだわり続ける帯広の劇団演研、釧路の劇団北芸、北見の演劇集団動物園/撥条(ばね)屋演劇会。札幌に一極集中しがちな北海道演劇のすそ野を広げようと、同時公演を企画した。
 管外の劇団も参加しての本格的な「演劇祭」は、十勝では初めての試みで、二日間でそれぞれ一公演ずつを行った。公演がない劇団がほかの劇団のサポートに回るなど、長年あたためていた企画が実現し、メンバーは楽しそうに交流を深めていた。
 鹿追町出身の劇作家で演出家の鐘下辰男さん(37)も参加し、各公演後に批評を行った。第一線で活躍するプロの視点で、小道具の使い方や役者の心の動きなどをアドバイスし、「自分ならこうする」といったヒントもユーモアたっぷりに語り、会場をわかせた。
 演劇祭終了後、鐘下さんは「地方の時代というけれど、まさに地方が元気な現実を生々と見せつけられたよう。無理に盛り上げようと考えず、企画の趣旨を忘れずに二回、三回と続けてほしい」と、故郷の演劇人にエールを送った。

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