「畑澤聖悟の演劇ワークショップ」レポート

記 富永浩至  

講師:畑澤聖悟

アシスタント:工藤千夏、三上晴佳、細谷拓弥

場所:とかちプラザ5F 軽運動場にて

日時: 10月24日(日)
       9:00〜12:00

参加者:十勝管内の高校演劇部生徒60名

 畑澤氏の紹介の後、畑澤氏からアシスタントの紹介。工藤千夏さんは畑澤氏の主宰する劇団「渡辺現四郎商店」のドラマターグ。三上晴佳さんと細谷拓弥君はともに青森中央高校演劇部出身で、畑澤氏の教え子です。

畑澤:これから「シアターゲーム」のようなことをします。皆さんワークショップは色々と受けたことがあると思いますので、やったことがあるかもしれませんが、もしやったことのあるものでも初めてのようにやって下さい(笑)。そのあと、青森中央高校でやっている基礎トレを紹介して、最後にテキストを使って実際演じてもらいたいと思っています。では、皆さん大きな輪になってください。
 ということで、ワーショップの始まりです。

1.拍手回し

a. 大きな輪になって、全員で一定のリズムで手をたたく

b. 時計回りで一人ずつ一定のリズムになるように(繰り返す)

(ねらい:セリフは自分だけではダメ、相手のセリフが終わりました、はい次、自分ではない。リズムに乗らなければならない。皆で物語を共有する事が必要)

c. 2ヶ所同時スタート(同じ方向、逆方向)

d. 2ヶ所同時発進。方向を自分で決められる(体の右わきでたたくと右方向へ、左でたたくと左方向へ)

(ねらい:集中力を高める、集中力を分散できる)

2.歩く
この空間の天井を外して天から見た時に、人の配置が同じ密度になることを意識して動いてみる。均等な感じを崩さないで全員が同じスピードで歩く。(何も話し合わず)
そして、これを基本にして、条件を変え何度も繰り返す。

条件1.絶対に誰とも視線を合わせない

 ここで畑澤さんから厳しい言葉がでます。

畑澤:ちょっと待ってください。私はちょっと不満です。いいですが、言われたことに集中してやってください。ニヤニヤしない、照れているから、言われたことをちゃんとするのが恥ずかしい。それはその場から逃げていること。舞台の上で恥ずかしがっているのが一番みっともない。

 この言葉で会場の空気が一変。緊張感とともに参加者の集中力が高まりました。

条件2.多くの人と目線を合わせる

条件3.目線が合ったら何かアクションをする(手を挙げるとか、お辞儀をするとか)

条件4.目線が合ったら相手に触る

(ハイタッチをするとか。これは挨拶の基本。挨拶は互いの関係を表明すること)

条件5.目線が合ったらじゃんけんをする。一人一回だけ同じ人とはダメ。多く勝つには、多く対戦するしかありません。獰猛に取り組むこと。勝ちの数を覚える。

 一回も勝てなかった人はさすがにいなかったです。最高は16回勝った人、全員から拍手をもらい、会場は和やかな空気に。

3.仲間を集める
好きな果物、動物などのテーマで同じ好きなのも同志で集まる。孤立しないように全てのグループに出会う。お互いがアピールし合う事が大切。

a. 好きな動物

b. 行ってみたい国

 好きな動物では、やはり犬や猫が多数派でした。中には「カモノハシ」と言って孤立してしまう人も。基本的に大きな声を出すことは気持ちのいいこと、仲間を見つけるために、みんな大きな声を出しました。

4.8〜9人のグループになり丸くなる。各自自分の名前を好きな動物にする。最初の人がその動物名を言いながらその人の方へ進む、言われた人はその人が到着する前に違う人の動物名を言いながらその人の方へ進む。相手に到達されたら負け。3名になるまでやってみる。

畑澤:これの必勝法は、すべての名前を覚えないことです。3、4人の名前を覚えれば良いのです。あと特殊な名前を付けないこと。相手にすぐ覚えられると、自分ばかり指されることになりますから。

 ここでいったん休憩を挟みました。(10分間)

10:15 再開

畑澤:基礎練習はどんな芝居をするかによって違います。それに合った基礎練習が必要。例えば、ミュージカルのようなものだったらダンスの練習をするとか。青森中央高校の芝居は、会話が基本。だから正確な発声が求められます。しかし、基礎練習に多くの時間を使うのは間違い。それなら1本でも多く本番をやった方がいいというのが私の考えです。ではこれから、つらい事をする練習とだらだらする練習の二つに分けます。共鳴している声を出す為には腰から上がリラックスしている事が大事です。

5.ツタンカーメン

a. 仰向けになり、両手を交差させ掌で肩をさわる、上半身を斜め45度上げる。スタッカートで「ア・エ・イ・ウ・エ・オ・ア・オ」。

b. 上半身斜め45度右に上げ カ行

c. 上半身斜め45度左に上げ サ行

d. 両足を上げ タ行

e. V字バランスで ナ行

再びa〜eまで繰り返しでワ行まで

f. 背筋を使って  ガ行・ザ行


6.仰向け膝立て(曲げ)起き上がって体の空気を全部吐き出す

 いち シャー(吐き出す) 25回

畑澤:ここで「シャー」というとき、カッコつけてやること。辛い練習は楽しくやることが大切です。

7.無声音 声帯を震わせないで音が出せる

 仰向けになり左足を直角に曲げ右手でおさえる。左手はまっすぐ横。首は右向き。このまま無声音(キ・シ・チ・ヒ・ク・ス・ツ・フ・プ・ピ・シュ)を発する。発声練習ではなく筋トレです。左右繰り返す事。

8.笑い20秒毎 3段階 1,2,3でMAXの笑いになる
(笑いながら人を指ささない、一人で笑う事)

畑澤:役者の筋肉を鍛えるべきところは太ももの前側。ヒンズースクワットを毎日1000回繰り返すと効果があると思うが、それでは楽しくないのでスパイダーをします。

9.歩くスパイダー


二人背中合わせ、腕を組んで立つ、次に空気椅子で静止、その状態で歩く

畑澤:すべてを相手に任せること。密着しているところを相手に預けながら突っ張るだけです。相手を信頼し体重を預けることが大切。できたら4人でもやってみましょう。

 ここで、こつが飲み込めないのか立ち上がれない組がでました。畑澤さんはワンツーマンで指導します。

畑澤:では、次はランニングです。でも演劇部ですから、走ると同じくらいつらい事を演劇部っぽくやりましょう。

10.アブラハムと7人の子(歌いながら、スキップします)

♪アブラハムには 7人の子 一人はノッポで あとはチビ(ここで屈みます) みんな仲よく 暮らしてる。さあ おどりましょう(で、止まる)右手、右手(右手を大きく振ります)

次は右手を大きく動かしながら、繰り返します。そして、次は「♪右手」の後に「♪左手」を加えます。左手も大きく振ります。またはじめから繰り返します。そして、だんだん動かす箇所が増えていきます。次は右足、次は左足というように。最後は両手足をめちゃくちゃに動かしながら進みます。今回はやりませんでしたが、このあと首、お尻と続くそうです)

 ここで休憩。しかし高校生は元気です。何人かが今やったアブラハムを隅の方で練習していました。まさに疲れ知らずです(^^;)。

11:10 再開

 次は新入生に対して行う発声練習です。

12.会話 

a. 二人ペア、パンチが当たる位の距離でテーマは「部活の先輩について」

b. 距離を2.5倍にして テーマは「学校の事」

c. さらに1.5倍にして テーマは「私について」

畑澤:何が変わったか、音量、身振り、テンポ、しっかり聞くこと。演劇で使う声は大きな声を出す事ではない、ちゃんと相手に伝わる声です。ちゃんと聞かせよう、ちゃんと届けようとすると知らず知らずに声は大きくなるのです。

13.二手に分かれ対面になり、相手に声を届ける

畑澤:下腹の筋肉は使いますがヘソから上は力を入れないで胸を共鳴させます。「ん〜」と口をあけてもこのビリビリを維持するように。体のどこにも力を入れないで、音を相手の顔にぶつけるようにして欲しい。俳優に大事なのは想像力です。相手に対して、「ん〜」という音を飛ばします。相手はその音を受けて下さい。そして、受けたことが分かるアクションをしてください。

14.テキストを読んでみる。「修学旅行」より

畑澤:ちょっと時間の調整を失敗して、もうほとんど時間がありませんが、最後に私が書いた戯曲「修学旅行」の1シーンをやってみましょう。読みたい人いますか?
では、5人、前に出てきてください。このホンは、ステータスが元になっている。ステータス、分かりますか?会社でいえば、社長さんはステータスが高く、一般の社員は低いのです。しかし、例えば会社が倒産して、給料が払いないような場面になると逆転します。社員が「社長どういうことですか!」と詰め寄ります。このようにステータスはいろんな場面で逆転します。このホンでは、5人の女子高生が部屋で喧嘩をするのですが、彼女たちのステータスバランスが変化します。そのことを気にしながら読んでみましょう。

 ということで、始まりました。畑澤さんは身振り手振りで、面白く演出をつけていきます。演出をつけられると、生徒がみるみる変わっていくのが分かります。もっともっと見ていたかったのですが、時間の都合で一組だけで終了となりました。

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