「鈴江俊郎ワークショップ」レポート

 

2009年8月1日、2日

十勝ヒルズ(幕別町日新 13-5)にて

記 劇団演研 富永浩至

1日目 8月1日午後7時より
 午後6時に演研代表の片寄が経営する喫茶店大通茶館に集まった道東小劇場ネットワークのメンバーは、各自、車に乗り合わせ、会場の十勝ヒルズに向かいました。前日に帯広入りし、演研・茶館工房での仕込みを終えた鈴江氏ら「昼ノ月」のメンバーも加わり、総勢21名で泊まり込みの合宿となりました。
 会場は、十勝ヒルズ内にある「楽屋」というライブなどの音楽イベントなどを行う広いホール。まずは、鈴江さんから自己紹介と「昼ノ月」のメンバー紹介があった後、さっそくワークショップに入りました。

◯「身体を探す旅に出よう」
  最初に私たちが挑戦したのは、縄跳び。鈴江さんと昼ノ月の二口さんが長いロープを回し、そこへ一人ずつ入って、ぬけるという簡単なもの。しかし、中年の域に達しているメンバーには少々難しかったようです(私のことですが (^_^;) 。何度かやって体があたたまり、慣れてきたところで、縄をなくして見えない縄での縄跳びに挑戦です。ここで鈴江さんからの注意。「大切なのは、縄を感じて跳ぶ事。引っかかったと思ったらそのことが分かるようにしてください」。実際、他の人たちが跳んでいるのを見ていると、本当に縄が見えるようです。引っかかる人がいると、笑いがおきました。
 一通り終わると、鈴江さんから、「芝居で縄跳びをするという指定があったら、皆さん上手く跳ぼうと演技をすると思います。しかし、今は演技をしようと思ってやってはいません。そこにある縄を跳ぼうと必死になっていただけです。これが周りから、つまりお客さんから見ると、リアルに見えるのです。」という説明。一同なるほどと頷きました。


見えない縄跳びに挑戦。縄に引っかかると笑いが起きた。

 

◯「台詞を探る旅に出よう」

 小一時間ほど縄跳びと格闘し、汗をかいた後は、テキストを使ってのワークショップです。A3のコピー用紙に3段組でセリフが書かれているものが全員に配られます。「台詞まわし」のワークショップです。全員が車座になって座り、一人がセリフを言ったらその隣の人が次のセリフを言っていきます。感情は入れずに、一定のスピードでハッキリとセリフを言います。ここで鈴江さんからの指示が出ます。「では次は前の人の最後の一文字に、自分の最初の一文字を重ねていって下さい」。つまりこういう事です。「なんかすごいね」「うん」「すごい」・・・というセリフを「うん」を言う人は、前の人の「ね」と同時に言う。その次の人は、「うん」の「ん」と同時に言うというものです。周りで聞いていると「なんかすごいねすごい」と聞こえます。(青色の部分は「うん」と重なっているので聞きづらいです。逆に重なっていないと、きれいに聞こえてしまいます)


「台詞まわし」はかなりの集中力が要求されました。

 これがなかなか難しい。集中して前の人のセリフを聞いていないと、すぐに遅れてしまいます。何回も失敗しながら何とか最後までいくと、次は2文字重ねていきます。それが出来ると3文字、4文字と増えていきます。そして最後は6文字重ねました。ここまでくると、前の人と言うより、その4人前くらいの人のセリフを聞いていなければなりません。かなりの集中力が必要とされます。

 役者はどうしても自分のいうセリフに集中して、相手のセリフを聞かない事があります。この練習をすると、自分のセリフなど関係なく、相手のセリフをよく聞くことが求められます。大切なのは、セリフをどのように言うかではなく、どのように聞くかということだということが確認されました。

 別のテキストが配られ、一日目最後の課題です。二人一組になって、セリフを言います。ここでも感情を入れずに、棒読みに近い感じでと指示が出ました。しかし、何度も二人で台詞を言っていくと、それなりに気持ちが入ってきます。そこをお互いにチェックしていきます。「気持ちが入りすぎている台詞はないか、無理に棒読みにしていないか、気が付いたことを言ってあげましょう」。

 日常だと近くにいる人に、そう大きな声で話さなくても聞こえますが、舞台ではそうはいきません。客席に台詞が届かなければ意味がありません。そこで、今度は二人の距離を遠くして、台詞を言い合いました。二人が離れた分、台詞の余計な部分に力が入ります。また、そこを指摘し合って、一日目のワークショップは終了しました。

 一日目の終了後は、中打ち上げです (^_^;)。次の日もあるので飲み過ぎないようにと言うことでしたが、中には交流を深めすぎて、明るくなるまで飲んだ人たちもいたとか・・・。

 

 

 

 

2日目 8月2日午前10時より
 朝8時に起床して、昨夜の酒を抜くべく皆で温泉へ行きました。そこで朝食も済ませ、2日目のワークショップの始まりです。

 午前の部、始まりは縄跳びから。一人で跳んだ昨日とは違い、一人ずつ大縄に入っていって最終的に10人で跳ぼうということでした。これがまた大変。(運動神経が余り優れていない人たちが集まったせいかな?)なかなか達成できずに、最後は目標を7人に下げて、なんとかOKとなりました (^_^;)。

 朝一で汗をかいた後は、昨夜やった「台詞まわし」の復習です。一度やったものだから、スムーズにいくかと思いきや大違い。ここでまた別の汗をたくさんかきました。

◯「出会いを探る旅に出よう」

 ここでまた新たなテキストが配られます。今度は一人一人に役が当たり、実際にそのシーンをつくっていくことになりました。登場人物は11人。AチームとBチームの2チームに分かれ行いました。まずは、鈴江さんからの説明です。「これは、宇宙船の中の話です。さて、宇宙飛行士というのは、どんな人達でしょう?この最初のシーンで、お客さんにここは宇宙船の中だと分かって欲しいのです。でも、台詞にはそのような説明がありません。皆さんの動きで、そうだと分からせて欲しいのです。さて、宇宙飛行士はどんな人達でしょう」。鈴江さんは、具体例を挙げながら、かなり詳しく説明してくれました。その説明を踏まえて、実際にやってみました。


鈴江さんからこのシーンはどのようなものかの説明があり、皆それに聞き入ります。

 このテキストは、昼食をはさんだ後も続けられました。実際ひとつのシーンをつくり、見ていた人たちから、どこが良くなかったのかを指摘してもらい確かめていく。そしてその事を踏まえて次のチームがやってみる。また、見ていた人からどこが良くなかったかを指摘してもらう。それを何度も繰り返しました。

 「このシーンをつくるのは、チームプレイです。出来ていない人がいたら、それを指摘してあげることが親切です。本人はその事に気づいていないことが多いです。その人が出来ていないために、そのシーンが出来ないのですから、言ってあげることが本人のためになるのです」。鈴江さんからの指摘も受け、どんどんその場が締まっていきます。

 ある程度出来てきたら、次は、鈴江さんの方からいろいろな注文が出て来ます。「このシーンは兎に角キビキビと動きながら、やって下さい」

それに答えるべく、皆、必死に動きます。しかし、動きにばかり囚われると、自分の台詞を忘れてしまいます。そんな失敗を繰り返しながら、何とかクリアすると次は「この人の台詞で、全員が一瞬止まって下さい。そして、また動き出します」という注文がでます。

 こんないろいろな要求に答えようとすると、相手の言っている台詞を注意深く聞いていないと、すぐに止まってしまいます。自分の台詞をどう言おうかなど関係がありません。いかに集中してセリフを聞くか。全体の中で今自分は何をしなければならないのかが、常に意識されます。

 何とか最後まで通して終わりということにしたかったのですが、時間切れとなってしまいました。その事が少々悔やまれますが、2日間のワークショップもあっと言う間に終わってしまいました。鈴江さんがどのような芝居を目指し、またそれを実現するためにどのような作業をしているかが、とてもよく分かるワークショップでした。道東小劇場ネットワークの仲間達もそれぞれに大きなものを受け取ったと思います。


キビキビと動きながら、しかも相手を意識し台詞を言う。かなり高度な要求に皆四苦八苦でした。

 

 

 

「演劇ユニット昼の月」帯広公演終了後のワークショップ
(写真で綴ります)

8月3日 演研・茶館工房にて 


まずは二口氏のコーナーと言うことで、パントマイムを使って日常の動きを再現しました。


結構の数のお客さんが残ってくれて、一緒にやってくれました。


次は、押谷さんのコーナーです。劇中の動きを再現してくれました。かなりユーモラス(^^)


最後は、鈴江さんのコーナー。「顔を見ないと忘れる」の一場面をやりました。


演出の意図などを織り交ぜながら、どのようにして場面がつくられたのかを解説。


観客の皆さんも声を出して、テキストを読みました。


何人かが代表で舞台に上がり、やってみました。


「昼ノ月」のメンバー。左から押谷さん、鈴江さん、二口さんです。お疲れ様でした。

あ、公演前の仕込みの様子ものっけておきますね。


中央は宣伝美術担当で、今回の公演では音響オペレーターの脇野さんです。


二口さん、大活躍でした。本当にお疲れ様でした!

 

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