第12回公演
檸檬
作・竹内純一郎
演出・富永浩至

スタッフ
舞台監督 片寄晴則  照明 坪井志展  効果 片寄晴則  小道具 泉真由美  衣裳 浅野智子  
メイク 種田栄子   制作 上村裕子

キャスト
栄子・武田雅子 葉子・部田泰恵子 シンイチ・富永浩至 タカシ・佐久間孝 
ヨシロウ・水谷茂樹 

とき
1986年10月10日(金)開演午後7時 11日(土)開演午後7時 12日(日)開演午後3時 午後7時
18日(土)開演午後7時 午後9時 19日(日)開演午後3時
ところ
シアター&喫茶大通茶館(帯広市大通南6丁目)
前売り800円  当日1000円  (コーヒー券付き)  

 

上演にあたって

富永 浩至
 「うちの役者は演出と詰抗する力がないから、新しい出合いが生まれない。役者自身が、もっと演出的な眼を持たなければ駄目だ。」と言われ続けてきた。そして今回、その駄目な役者が演出をすることになった。創立十一年目を迎えた今年、劇団名も「帯広演劇研究会」から「劇団・演研」と変更し、気持も新たに若手中心に芝居創りに取り組んでみようという訳である。
 さて、そんな中で選んだ作品が、この「檸檬」である。それぞれの登場人物の奇妙な関係の中に成り立っているこの芝居、まさに一人一人の役者のぶつかり合いから生じる何かが重要になってくる。しかし、初演出の私が戸惑いながら演出すれば、初舞台の役者が更に戸惑うということがしばしば…。稽古が進まない日々が続いたこともあった。それでも初日が迫ってきたこともあってか、少しずつではあるが形になってきた。
 一人一人の団員がいろいろな困難を抱えながら芝居を続けている。何故芝居を続けているのか、その熱い思いが客席に伝わるような、そんな舞台にしたいと思っている“初演出”の私である。


つ ぶ や き

片寄 晴則
 ロートルはちょっと休んで、若手が中心に活動する予定の今年だったのだが……、いやはや、彼らは何だかんだと仕事をつくってくれる。それにしても、ロをはさまず黙ってけいこを見ている、このつらさ!「若い芽を育てる?フン!若い芽など最初から無いわい!」とブッブッ言いながら、気がつくと、若い連中と酒を酌み交している小生である。

坪井 志展
 “檸檬”手のひらにすっぽり入り冷たい……。みているだけで、自分の躰に変化が起こる……。
 全身─甘ずっばい。
 握りしめた時、口に含んだ時の、あの感覚を、日常の中で、私は忘れてはいないだろうか?

上村 裕子
 久しぶりにタ焼けをみました。絵の具を幾重にも溶けあわせたような、その色あいに思わず胸がいっばいになってしまいました。子供の頃、空に浮かぶ雲をみて、あれはきっとわたあめのようにホワホワしているんだと信じていたことを思い出します。
 一つの芝居をつくるうえで“現実の自分をさらけだせ”と、よく言われます。何を抱え、どう生きようとしているのか…同じ生き方をしても、決意があるのとないのとでは随分違う。”檸檬”が、登場する5人の起爆剤なら、私にとっての起爆剤はやっばり“芝居”。もしかしたら投げだすのはたやすく、楽になれることかもしれない。でも私にとって、幸福ではなくなってしまう。本日、おいでのお客様、貴方の起爆剤はなんですか?

「凄春を知らない子供たち」
佐久間 崇

 60年70年が終って   僕らは青春した
 60年70年を知らずに  僕らは青春した
 新人類になって    歩き始めた
 青春の歌を       口ずさみながら
 僕らの名前を      おぼえてほしい
 凄春を知らない     子供たちを

泉 真由美
 ある日、私は人間は何なのかと考えていた。人間はもしかすると仮の姿で、本当は違う何かで、本当の姿を生きている間に見つけられなかったら一生このままなのだろうかと…。
 18歳の誕生日を迎えて間もなく、私は私の中に自分とは全く違う何かが存在している事を知った。私の体を借りて何かを訴えてくるのだ。シクシクと涙を流して何かを訴えてくるのだ。そんな自分の姿を私は天井から見ていて、どうして私は泣いているのかと、不思議な気持ちで、ただ黙って見ていたのだ。この世の中が大きな舞台なら、そんな不思議があってもおかしくはないだろうと。ちっぽけな事だと…。けれど、それでも、その不思議のなぞが何なのか知ってみたくて、自分を、人間を、不思議を、どんな事でもいいから少しだけでもいいから知りたくて、私は芝居という形で捜そうとしているのかもしれない。そして芝居の魅力にもっとひかれてきている私がいる。

部田 泰恵子
 小学生の女の子が言いました。「わたし、なりたいものの夢なんかないの。只、自殺しないように生きるだけ」わたしにはわからないコトバ。そして知らない時代、彼女達の時代の檸檬。そして私達の時代の檸檬。私にとっての檸檬。あなたにとっての檸檬。

「真理ちやんへの手紙」
武田 雅子

 東京で暮す真理ちゃんお元気ですか?東京に滞在した3日間、とても楽しかった。ありがとう。卒業して7年たったある日、突然東京へ行くと言われ、とってもびっくりしたよ。東京で揉まれたい。東京で刺激を受けたいなんて……。真理ちやんが住む東京を見て、とにかく人の量に驚いた。こんなにたくさんの人の中で、自分を見失わずに生きて行く事は至難の技の様な気がしたよ。だけど真理ちゃんは、東京が好きだと言う。そんな真理ちやんを見て、ふと自分の事考えてみた。真理ちやんにとっての東京って、私にとっては、何にあたるのだろうってね。東京?札幌?ちょっと違うな。きっと自分に何らかの影響を与えてくれるところだと思うの。ならば私にとってはここ帯広の演研…。演研なのだと思う。
 本公演で初舞台を踏む私に素敵な刺激を与えてくれた街“東京”私も演研でがんばるからね。真理ちゃんも東京でステキなレディーになってね。
 P.S.ホントは初舞台を見てほしいな。東京からは「ムリ」かな。
武田雅子より

水谷 茂樹
 「アー、ついにこの場に、名前を連ねてしまった。これはアナタ、いわゆる、ひとつの犯罪ですぞ。しかも、檸檬屋の正体は、このワタクシなんですよ」「イヤー、重大事件ですね−。こんな奴でも舞台に立っちやうんですね」「そうなんですよ。これは完全な犯罪ですよ。あの演研の芝居に登場するんですから。……もっと恐ろしいのは、みんな知らないんですよ、僕が演出の座を狙ているという事実を…」

 

 

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