第31回公演
飛龍伝-ふたたび-
作・つかこうへい
演出・片寄晴則

スタッフ
照明 上村裕子 武田雅子  効果 内山裕子  舞台監督 片寄晴則  制作 上村裕子 村上祐子

キャスト
男・佐久間孝  嫁・赤羽美佳子  父・富永浩至 

とき
1996年10月10日(木)開演午後6時 11日(金)開演午後8時  12日(土)開演午後6時 
13日(日)開演午後2時 午後6時 19日(土)開演午後6時 20日(日)開演午後2時
ところ
演研芝居小屋(帯広市西2条南17丁目)
前売り1000円  当日1200円  (コーヒー券付き)    

上演にあたって

片寄 晴則
 私達の集団は昨年、創立20周年の節目を連続四本の新作上演という暴挙(?)で走り抜けました。そして今年、更なる一歩を踏み出すにあたり、活動の柱のひとつとして、過去の上演作品の見直し、つまり「再演」に積極的に取り組んでいこうという事になりました。第一弾として選んだこの「飛龍伝」は、学生運動の闘士として青春を生きた男と、それを阻止することに情熱を注いだ機動隊員との奇妙な友情と、こだわりの物語です。
 今を生きる自分達が時代や社会とどう向き合い関わっているのか、という点を重視し活動してきた私達ですから、今、この作品を再生するにはかなりの時代的なギャップを感じているのは事実です。その必然性についても、作品選定の段階でかなり議論しました。確かに若い人達には、作者・つかこうへい氏の企みである、時代や社会に対する毒気のある笑いはダイレクトに伝わらないのかもしれません。しかし、芝居の中に出てくる三里塚、佐世保、新宿西口といった地名を耳にするだけで「あの時代」が甦ってくるであろう世代の人達だけでなく、今のやさしい若者にも、人間の生き様は伝わると思うのです。それがたとえ、既に風化してしまった過去の話であっても…。
 今を生きる私達は、そんな思いで熱い稽古を続けています。


つ ぶ や き

 旅に出よう
佐久間 孝
 
旅というやつが、どうも苦手というか下手みたい。
 ひとり旅―ここは一念発起で、感傷に浸り、男のロマンと…。が、これがなんとお仕事の出張。切符、宿の手配、相手先のアポ、スケジュール調整も事務的にこなし、観光マップの立ち読み、旅行バッグに所定のグッズを詰め込み、いざ××へ―
 やっぱり、何んの目的もなしにフラフラと放浪できない。カネもヒマもないんだけど、なんてったってほかの人が認めない行動って、良識ある社会人(?)はやりませんもんね。
 自分だけのための時間と空間―ひとり旅。日常に追われ、とりあえず必要とされてるであろう、職場に家庭に背を向けて、行けやしませんできません。縛られるのが厭なくせして、でも、何かに繋がってないと不安でたまらない。
 こうして、時代も年齢も暮れていく。今日も出来事、昨日の出来事、昔、あの頃、事件の数々…静かに笑ってしまいましょう―この芝居小屋で。「ささやかに、こだわりをもって…」

上村 裕子
 
短かった夏が終わり秋が深まると、本番が近いことに気付く。そんな日々を何度繰り返してきたでしょうか。
 「芝居をやりたい」気持ちだけで集まる仲間達は、それぞれの仕事をこなし、日常生活を過ごし、この暗い空間に帰ってくる。睡眠時間が減り、目の下にクマをつくり、体がクタクタに疲れていても、精神だけは満ち足り、透き通っていく。芝居と、仲間と巡りあえた自分の幸福をしみじみ思う。
 今年はこの小屋で、観客の皆様と一度しか会えませんでしたが、演研は二十一年めを歩き出します。
 さあ、「飛龍伝」開幕です。

赤羽 美佳子
 
私が演研と出合ってから 年の月日が過ぎた。知らない子どもに「おばさん」と何の抵抗もなく呼ばれ、ムッとすることも多くなった。
 今回の『飛龍伝』は、演研としては再演である。憧れてビデオを観ていた私が、まさか大先輩2人の胸を借りることになるとは思わなかった。演出から「自己主張が強すぎる。」「耐える女で演ってほしい。」とダメが出る。そして、「相手の言葉を受けて、言葉を発すること。」と言われる。それは、日常生活の中では、自然に行っていることである。なのに、舞台に立つと何と難しいことか。そして楽しいことだろう。
 体力だけには自信があった私も、点滴パワーとマッサージの力を借りて、稽古に励む毎日である。

富永 浩至
 
昨年7月の「思い出せない夢のいくつか」、長期間のワークショップ、そして3月の発表会と我が劇団は平田オリザの芝居作りと深く関わり、少なからずその影響を受けた。今までやってきたことと一八○度別なことではないにしろ、その考え方には改めて気付かされることが多かった。そして、今回の飛龍伝。いわゆる「静かな演劇」と呼ばれている平田作品とは明らかに対称的な「パッションの演劇」とも言うべき、つか作品である。
 個人的なことを言えば、この作品は非常に思い出深いものである。十年前に上演されたこの作品は、5月11日に初日を向かえるはずであったが、何とその一週間前に急遽延期が決まったのだ。このようなことは演研の二十年の歴史の中で、後にも先にもこれ一回だけである。実は私が交通事故をおこして、入院をしてしまったためなのだが、(この辺の内容は終演後片寄に聞いていただければ、おもしろおかしく、さらにくわしく、あることないこと教えてくれます。)チケットの回収、公演日延期のお知らせなど、ほかの劇団員にかけた迷惑を考えれば笑い事ではない。
 また、再演ということで、否が応でも十年前の自分と向かい合わされる。そして、いかに成長していないかを思い知らされ、愕然としてしまうのだ。しかし、なかなか自分というものは自分ではわからないものである。このように、昔の自分を見つめることによって、今の自分を知ることはいいことなのかも知れない。
 何はともあれこの公演、「昨年から学んできた平田メソッドをこの舞台で、果たして生かすことができるのか?」「十年前の自分と今の自分を相対化する中で、何か新しいものが生まれるのか?」と、いろいろと課題は多いが、その答えを出すために日夜稽古にいそしむのである。

 

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