上演にあたって
帯広演研 代表 片寄晴則
この作品は、東京の演劇制作体「地人会」の主宰である、演出家・木村光一氏が多くの書物、資料をもとに、現実の被爆体験の手記、詩歌を構成して朗読劇という形にまとめたもので、一九八五年の初演以来、今も毎年夏に東京及び全国を巡演し続けているものです。また、「地人会」の公演だけではなく、全国各地の様々なグループやお母さん達によって自主上演もされており、私達も戦後五〇年の節目にあたる一九九五年の七月に、帯広市民文化ホールで上演させていただいております。
当時から「平和について改めて考え直したい」「もっと多くの人達に聞かせたい」「いつまでもこの悲惨な体験を語り継いで欲しい」などの声が私達のもとに寄せられており、こうして今回、音更町文化事業協会の御支援と「地人会」の協力により再び上演する機会を得られたことを感謝するとともに、その責任を痛感しております。
平和に慣らされ、気がつくと「ガイドライン関連法」なるものがあれよあれよという間に可決され、不況とはいえ、今こうして繁栄の消費社会に生きる私達が忘れてはならない多くの人々の死。ヒロシマ・ナガサキで生きていたあの子たちの夏を、短い命を、その母たちの悲しみを、今もなお原爆症に苦しむ人達の姿を語り継いでいきたい。そして生きていることの素晴らしさを皆様と分かち合いたいと、切に思っております。