上演にあたって
片寄 晴則
5月・6月にかけては「走りながら眠れ」をもっての釧路・北見・帯広三都市連続公演。7月には「この子たちの夏」そして今回と、今年は3本続けての再演ということになりました。お客様にしてみれば『ああ、またか〜』という思いがあるかもしれませんが、創る側からすると、前回気付かなかった微妙なニュアンスが見えてきたりして、再演というのは、仲々楽しい作業なのであります。
貧乏作家の夫は、売れっ子女優の妻とその妹の両方を股にかけた二重生活の日々。そこに妹の恋人、妹を陰ながら慕う中年男、はたまた、貧乏作家にせまる妹の友人までが登場し、三角関係ならぬ多角形関係を繰り広げるその一人ひとりの恋愛模様に、各々の人生が見え隠れします。可笑しくも、時に哀しく、真剣に人を愛する姿に今の、そしてちょっぴり昔の自分の『恋』を投影すると、お客様の胸もキュンとするかもしれません。
今回は劇団夢幻・劇団演研合同公演ということで、稽古場はいつも以上に賑わっています。違うメソッドを持つ二つの集団が遠慮のないところでぶつかり合い、一つの作品を作り上げる楽しさを味わいながら、日々の稽古は進んでいます。楽しくも心に残る舞台を目指して?。
つ ぶ や き
演研に限り今年は冷夏
佐久間 孝
我が演研の場合、昨年の「うしろの正面だあれ」で四人の役者が出れば多人数な訳ですよ。今回は、何と七人ですものね、もちろん劇団夢幻との合同公演だからこそなんですけどね。
ここんところ年に一度は舞台を踏ませてもらってんですけれど、稽古場でもある芝居小屋にゴロゴロ人が居るんですものね、そりゃついつい浮かれちまっておやじギャグの一つ二つ三つ、いやもっとそれ以上に出ますってね。
それやこれやで、真夏日が何日間だったか知らんけれども、これが冷房いらずでしたもの―そんな稽古の日々でしたよ―はい
上村 裕子
例年になく暑さの厳しい8月の上旬、『恋愛日記』の再演が決まった。「嬉しい、舞台に立てる、役者やれるんだ」と、心躍らす反面
、体力がもつのだろうかと不安にもなった。
生活の中で、私は器用じゃない事実を思い知る。できない事実を気力のみで乗り越えようとするため、結局は周囲に迷惑をかけることになる。人に迷惑をかけるというのは、この上なく心苦しいことである。仲間もさることながら、多分それは職場にも及ぶ。若い頃から、「仕事もまともにできない者は、芝居をするな!」と代表に叩き込まれているはずなのに・・・。そして第一の犠牲者は家族だろう。ネコは異常に甘えん坊になり、パートナーには、リラックスの方法が下手だと言われる。それでも・・・演りたいのよね、芝居。理屈じゃないのよ!私が私であるために・・・これだけはどうしても譲れない。
さあ開演―。
内山 裕子
どうも世の中は世紀末らしい。
胸が詰まる悲惨な事件事故が多発している。そういう中で友達が立て続けに子供を産んだ。いつの世も、私たちは笑い、泣き、恋をし、増殖する。まるで明日がないかのように。自分の存在を確かめるかのように。
4年ぶりの舞台です。たくさん笑い、泣き、恋をしたいと思っています。観に来て下さった方達と、仲間達と、支えてくれる友人とパートナーと。
「明日のためにその一、ワンツー。ワンツー…」
本日はありがとうございました。
野口 利香
人を好きになる感情とはおもしろいものです。他人の恋愛ほど理解できないものも無いかもしれません。「なぜ、あんなひどい男を好きになるのか」、「あんないい人をどうして振ってしまうのか」、「いつもケンカばかりなのに、どうして一緒にいるのか」等々。私はといえば泥々した恋愛は苦手なため、けっこう気楽な恋を経て、今に至っています。
この芝居に出てくる人達は皆、恋に一途な人ばかりです。いくつかの人間関係が交差し、ぶつかり合う中、それぞれの思いは唯一つ「好きだ」ということだけです。恋愛って、とってもシンプルな感情なんですね。
坪井 志展
「傷つきやすい人は、傷つけたがる
あの愛しさは、修羅であった」
手帳に書き留めてあった言葉から、今回の芝居を思った。人物一人一人がとても愛しい人達なのである。
今回は夢幻も加わり、稽古場はいつにも増して活気があり、充実した日々を過ごすことができた。是非ともそれが舞台に表れてくれればと思っている。
初めて御覧になる方、又二度目(?)の方にも楽しんでいただければ幸いです。
福澤 和香子
今回も照明係をさせていただきます。普段の稽古中、客席側には蛍光灯をつけていますが、公演体制に入ると蛍光灯を消し、客席用の明かりをつけます。いわゆる『客電』というものですが。暗がりの中この『客電』をつけると、なんとも言えない緊張感が漲ってくるのです。日常の中で暗くなればパチンとつける明かりですが、こんなにわくわくする明かりは他にないかな。今、これをお読みになっている間もわくわくな『客電』がみなさんにあたってるんだけど、どうです?
青砥 俊文
前回客演した恋愛日記から、早いもので4年が経ってしまいました。恋愛日記を機に役者をおり、今回の恋愛日記で役者復活・・・、縁を感じざるをえない状況であります。初めて演研の芝居を観たときから十二年、来年二十五周年を迎える演研の皆さんと、一緒になって舞台をつくり、立つことを、非常に嬉しく思います。また、夢幻にとって実に二年ぶりの舞台となりました。やはり生活のパターンとして、仕事・芝居稽古&拳法・睡眠と、このサイクルが自分にとって最も充実しているとしみじみ実感しています。この二年間人数不足で、足踏み状態が続いていましたが、これを機会に新たに一歩踏み出そうと思っています。本日は、御来場下さり、誠にありがとうございました。
吉田 里香
いろいろな人がいるように、恋愛もその人なりの形があって、きっとそれは数えきれない程の数になると思う。他人から見れば大した悩みとは思えなくとも当人にしてみれば重大な悩みであったり、昨日まで悩んでいたかと思えば嘘のようにふっきれて、また別の新しい恋を探していたり…。「恋」というものは、誰もが必ず一度は経験するひとつのイベントであり、それは時にはとてもロマンティックで、時にはとても残酷で、その恋に翻弄されてしまう自分がいたりするわけだけれども、それでも人を好きになり愛するということはとても素敵なことだなぁーと今、改めてそう思う。
今回、この「恋愛日記」に合同公演という形で演研の方々と一緒に同じ舞台に立つことができ、とても嬉しく思っています。そしてこの芝居の中で繰り広げられる恋模様を楽しんで観て頂ければと思います。
本日は誠にありがとうございます。
富永 浩至
春の公演での役名もオオスギであった。しかし、内容はまるで違う。お客さんにとっては、同じ劇団の芝居とは思えないのではないだろうか。この辺が座付き作家のいる劇団と違うところである。よく言えばバラエティに富んでるし、悪く言えば節操がない。けれど、役者としては、いろいろな役ができるということは幸せなことである。