第39回公演 創立25周年記念企画平田オリザ連続公演
思い出せない夢のいくつか
作・平田オリザ
演出・片寄晴則

スタッフ
照明 野口利香 西部一晃  効果 吉田里香(劇団夢幻)  装置 青砥俊文(劇団夢幻)  小道具 佐久間孝
舞台監督 片寄晴則  制作 坪井志展 上村裕子 村上祐子

キャスト
貴和子・福澤和香子  安井・富永浩至  由子・坪井志展

とき
2000年4月15日(土)開演午後8時 16日(日)開演午後3時 午後6時 
22日(土)開演午後8時 23日(日)開演午後3時 午後6時
ところ
演研芝居小屋(帯広市西2条南17丁目)
前売り1000円  当日1200円  (コーヒー券付き)

※舞台写真を見る

上演にあたって

片寄 晴則
 『活発な日常活動を持続することにより、地域に根ざした創造活動を!』をスローガンに集団を結成して四半世紀になります。その間、随分いろいろな作家・作品を取りあげてきましたので、傍からは「節操のない集団」と写っているのではという危惧も少々あります。しかし、我々にとって、その時、その時代、その状況の中で自分達が最も興味を抱いた結果として、今までの作家・作品群があるのです。そして今は、それが平田オリザ作品です。
 そんな訳で、創立25周年の今年は平田オリザ3連続公演というコンセプトで進むことになりました。5年振りの再演となる、第一弾のこの作品のあと、6月には「走りながら眠れ」苫小牧公演が続き、10月には我々のための書き下ろしとなる新作が控えています。
 今は売れなくなってしまった歌手と、そのマネージャー、付き人の3人が北へ向かう列車で旅をしているその車内での会話が続きます。その何気ないやりとりの中に、微妙な人間関係と内面が見え隠れして……。
 初演時は平田メソッドに縛られていた感が否めませんでしたが、今は少しはそこから解き放たれて、演研の色がちょっとは出ているのではないかと思っています。ストーリーを追うだけでなく、もう一歩踏み込んで、この空間に漂う空気も味わっていただくことで、更に楽しみも増すことでしょう。さあ、皆さんも御一緒に銀河鉄道の旅へ出発です。


つ ぶ や き

 思い出したくない夢のいくつか
佐久間 孝

 「あれ、次は何だっけ 」 よくある本番の数日前の夢である。夢は実現するものであるという、強いポリシーを持つこのわたしは、この夢を何度も実現してきている。
 二十代にしてこれである、ましてや四十代も半ばを過ぎると、常にこの夢は現実と背中合わせにある。
 「ええ」、「ああ」、「そう」がちりばめられている、現代口語演劇の平田作品にあっては、これ云い違えるとそのときの心理・心情がかわっちゃうわけですよ。それほど平田演劇はコワ〜イ、よって平田さんもコワ〜イ人かと思えば、見た目だけは違うかな。
 三人の役者さん。私の思い出したくない夢は、どうぞ夢の中にそっと閉まっておいてくださいね。
 さて、開演だぞ、と…

坪井 志展
  25周年第一弾です。四半世紀続いてきた劇団に今、現在関わっています。五年前に初めて平田オリザさんの作品を演じたときは、ただただ日常らしくみせる事に意識が集中していました。今回の「思い出せない〜」はこれまでに自分自身が新しく発見したもの又、亡くしたものが、舞台上にぼんやりとでも、あらわれればと思っています。苦しく、楽しい稽古の日々でした。観ていただける事をとても嬉しく思います。

野口 利香
 子供の時、天の川を見た覚えがあります。ちょうど夏休みの頃、花火をしているときや、盆踊りの帰りに空を見上げると小さな星の集まりが川のように見えました。
 近頃というか、大人になってからは昼でも夜でもただボーっと空を見るなんて事はなくなったのですが、たまに夜空を見て思う「星が少ない」。あの星たちはいったい何処へ行ってしまったのでしょう。何だか宇宙がせまくなったようです。いつも目先の雑事に追われて、日毎に自分の世界がせまくなっていくように。
 芝居小屋という小さな宇宙の中で皆さんの心が果てしなく広がるような芝居であったらと思います。どうぞゆったりとした時をお過ごし下さい。

福澤和香子
 演研創立25周年に2度目の舞台を踏ませていただく事になりました。役をもらい稽古に入ると、自分を真正面からつきつけられ、やーな気持ちになり、ひとつひとつそれを受け入れる毎に楽しくなり、やーな気持ちになり、楽しくなり・・・・。私はとても今を楽しんでいます。
そんな楽しさがみなさんに伝わるとうれしいのですが。
そう思いながら今夜も小屋に向かう私です。

上村 裕子
 春が来た!
 さわやかな春風の中で、演研25周年第1弾の幕が開く。
 稽古に来たり、来なかったりする現状の私としては、劇団を維持してくれる仲間達には感謝の言葉がいくらあっても足りない。気持ちだけは、一緒だと思い続けながら、日常を過ごしている。そして、いつでも帰れる我が家のように、演研を感じている、それが今の上村です。
 この作品は、初めて取り組んだ『平田作品』で、観たい!とは思っても、演りたい!とは思ってもみなかった脚本でした。芝居を通じて自己主張を、ある意味覚えた私としては、なんとも窮屈な思いが残っています。その後、平田作品に数多く触れていき、我々の日常はもっとシンプルで、そして意外と、劇的なのではないか?と感じてきました。
 今日は、見に来て下さってありがとうございます。『由子』と『貴和子』と『安井』の世界を大いに感じて下さい。

西部 一晃 
 今年二月に、一応一年間という前提で『演研』に入団させてもらった西部です。しかし、本当に一年で終わるかどうか、ちょっと怪しくなってまいりました。何しろ稽古が楽しいし、来年進学できるか分からないし…
 それはともかく、やっぱり『演研』は違いますね。演劇に対するしっかりとした体制と意識、そして先輩方の大人の演技や演出、さすがは『演研』!といつも感じています。
 学ぶことが多いです。見て、聞いて、感じて、考えて、そして全てを動かして学んでいきたいです。

富永 浩至
 早いもので、あれから5年が経った。20周年記念公演のために、当時横浜に住んでいた坪井が、一時帯広に戻り芝居を打つことになった。作品選びの段階で、私はこの作品を強く推した。今までとは違った新しいタイプの芝居に、反対意見も多かったが、半ば強引に押し切った。それほど魅力的な作品だったのだ。そして、偶然にも作者の平田氏が地元新聞社の主催で、一年間ワークショップをやることになった。そこから、演研と平田氏との交流が始まった。平田作品二作目の「走りながら眠れ」の上演、そしてその再演での三都市連続公演。幕別での平田オリザワークショップ。平田オリザ作品である龍昇企画「夫婦善哉」の芝居小屋公演。そして秋には、新作の書き下ろし。最初の出合いからは想像もつかない展開である。
 そして25周年の今、最初の出合いとなったこの作品を再演することはとても感慨深い。もう一度この作品に向かい合うことで、この5年間を振り返り、そしてまた、次の5年に向けて進んでいきたいと思う。

 

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