上演にあたって
帯広演研 代表 片寄晴則
『活発な日常活動を持続することにより、地域に根ざした創造活動を!』をスローガンに集団を結成して四半世紀になります。その間、随分いろいろな作家・作品を取りあげてきましたので、傍からは「節操のない集団」と映っているのでは、という危惧も少々あります。しかし、私達にとって、その時、その時代、その状況の中で自分達が最も興味を抱いた結果として、今までの作家・作品群があるのです。そして今は、それが平田オリザ作品です。
そんな訳で創立 周年の今年は平田オリザ3連続公演というコンセプトで進むことになり、4月の「思い出せない夢のいくつか」に次いで、今回の苫小牧公演の運びとなりました。秋には平田さんが我々のために書き下ろして下さる新作が控えています。
さて、今回のこの作品は、明治から大正にかけて、短い生涯を駆け抜けた大杉栄と伊藤野枝の、最期の二ヶ月間の日常生活をスケッチ風に描いたものです。
自由恋愛を唱え、アナーキストと女性解放運動者として、互いの思想とその生き方を尊重し、同志として生きながら深い愛に結ばれた男と女。ラジカルに生きたそんな二人ですから、その日常もさぞかし……と思ってしまいますが、ここでは実に淡々とした調子で、夫婦の会話が繰り広げられます。ところが、その生き方の背景を少しでも知っていると、何気ない話のひとつひとつが実に示唆に富んだものとなり、想像力を喚起し興味深く、面白く思えるのです。しかし、二人についての予備知識がたとえ無くても、実際のところ生活はこのように淡々と時が流れてゆくものだと、改めて感じていただけるものと思っています。構えることなく、ゆったりと約1時間、私達にお付き合い下さい。
釧路・北見・札幌に続き、我々にとって道内4ヶ所目の出立て公演となるご当地苫小牧の地で、またどんな素晴らしい、新しい出逢いがあるのか、団員一同、胸が高鳴っています。どうぞ忌憚のないご意見・ご感想をお聞かせ下さい。それこそが、我々が旅に出る理由なのです。
最後になりましたが、この紙面を借りまして、公演実現のため御尽力下さった、苫小牧4丁目劇場の仲間達に、心より感謝いたします。
つ ぶ や き
デジタル対アナログ
佐久間 孝
テレビはすごい、タダで(某局の受信料があるか…)ドラマでも何でも見られるし、ビデオだと映画館に行かずとも気軽に楽しめ、よく知らないがドラマ仕立てのテレビゲームもあるとか。
それに引き替え芝居の方は、好きな時に、好きなものが見られないばかりか、おカネまで取るときている。
確かに、多彩なテレビドラマは姿を消し、多様な映画も配給ルートに乗らず、芝居だけは何でもありで、少ない観劇人口ながらしぶとく延々と細々と続いているようです。
デジタル全盛の時代、アナログの芝居ですが、こうして苫小牧と帯広で、そして各地の小劇場から、相互の舞台交流を通じ、いろんな人生やら人間が垣間見られるといいですね。
しかも、壊れかけた十七歳に充分な想像力と自身の価値観の成長をいつくしむヒントまでが、そこにあると善いのだが。
※今回は、ダジャレのつぶやきを都合により休載いたします。
軽白
上村 裕子
演研で、『旅に出よう!』をスローガンに掲げたのは、いつだっただろうか。かつて、釧路・札幌・北見と活動拠点は違うものの、同じ『芝居が好きだ!』という仲間達に助けられ、新しい出逢いを重ねてきた。
そして、いよいよ苫小牧
4丁目劇場の皆さん、我々にこのような機会を下さってありがとうございます。
良質の作品に出逢い、再演を繰り返す度、集団の中にも新しい感動が生まれています。又、新たな出逢いの中で、ワクワクしながら、さあ、開演です。
坪井 志展
4丁目劇場様
私が初めてこのカマボコ劇場に足を踏み入れたのは2年前の苫小牧4丁目劇場第4回公演『できなかったね』の時です。
「ワークショップを開き劇団員を集め、既成の脚本と創作を交互に上演している」と聞き、「こんなおもしろいそうな劇団があるんだなあ、まだまだ演りたい事が山積みになっているんだろうなあ」っと感じた事が思い出されます。前回の若手公演でも、皆が一つの方向に『パワフル』に向かっているのが羨ましくさえ思いました。そんな集団と共同作業をすることができとても嬉しいです。
『走りながら眠れ』は今年で3年目になります。芝居を続けてゆくうえでの大きなステップになるでしょう。実在の伊藤野枝とは全く違いますが、自分の内の野枝の部分が少しでも舞台に上げられればと思っています。
野口 利香
演研に入団して、私も早3年目となりました。入団して、初めての公演がこの「走りながら眠れ」でした。初演、三都市連続公演となった昨年の再演、そして今公演と一つの作品を見つづけていると、登場人物の人間性に深みが出て、幅も広がっていくのがよくわかります。芝居全体もどんどん変化していく。芝居とはやはり生き物で成長するのだなと、つくづく思います。
舞台の上で、いかに「その人」として存在するか−それは自分自身として存在することでもある−のかな?
福澤和香子
この度は、「シアターカマボコ」を使わせていただいて有難うございます。出立て公演でいつも思うことですが、みんな芝居が好きなんだなぁ。ここにもこんなに芝居作りに真剣に取り組んでいたり、貴重な土曜・日曜に、劇場に通ってくれるお客様がいることがなんだかとってもうれしいです。他の都市に来て改めて日常の狭い自分の世界に気がつきます。そして「もっと頑張ろう!」というパワーを皆さんからもらって帯広へ帰るような気がします。今回もいっぱい色々吸収して帰ろうと思います。
本日は本当に有難うございました。そして又お会いできる日を楽しみにしております。
西部 一晃
演研に入って早二回目の公演。月日が経つのは早いものです。少しは上手になったんでしょうか?自分……。今回公演の「走りながら眠れ」は、私が初めて観た演研の芝居。思い入れがあります。舞台も客席も、夏のあの時へ……
うーん楽しみだな。
富永 浩至
釧路の「北芸」、北見の「動物園」、そして帯広演研で道東演劇ネットワークなるものをつくっている。といっても、そんなに大げさなものではなく、お互いの芝居を上演し合うというのが主な目的になっている。今までに北芸が3回、動物園が2回、帯広で公演をし、そして我々が釧路で3回、北見で2回、公演を行っている。制作的には赤字覚悟であるが、こうすることによって同じ作品を何度も上演できるし、また、いわゆる仲間うちでないお客さんの目にさらされることで、大きな刺激を受けることが出来るのである。
さて、今回の公演がまた新たな展開を生むことを期待して…。