第51回公演 創立30周年記念連続公演第2弾!
『夫婦善哉』
作・平田オリザ
演出・片寄晴則

スタッフ
 照明 宇佐美亮  効果 神山喜仁  小道具 金田恵美 鈴木えりか  衣裳 村上祐子  制作 野口利香

キャスト
 桐山芳夫 富永浩至  桐山智子 坪井志展  広田佐喜子 上村裕子



 

つぶやき

坪井 志展
 「夫婦善哉」この作品を再演できることを、たいへん嬉しく思っています。
 4年前、とにかく走り出さなくちゃという思いで稽古に入りました。「私は止まってないよ、がんばるよ!」って、ただ伝えたい、それだけだった。
 今、あらためてこの作品と向き合ってみて、人って一体何なんだろう?と思う。
愛したり、恋したり、大事だったり、こだわったり、捨てたかったり、捨てられなかったり、忘れたくって、忘れたくなくって、色んな思いを抱えながら、毎日きちんとごはんを食べて生きている。出会いと、別れは大きなエネルギーを、与えてくれる。上手くは、生きられないけど、愛すべき人たちが、舞台の中にいるといいなあ〜。

上村 裕子
 4回目の春がやってきた。
 4年前のあの日々をどう表現したら良いだろう。芝居小屋がなくなるのは悲しかった。けれど、仲間との撤収作業は楽しかった。たくさんの熱い思いを経験できた芝居小屋。たくさんの思い出をくれた芝居小屋。仲間がいればこれからも芝居は続けられるのだからと、お世話になった芝居小屋に別れを告げたはずなのに・・・。その大切な仲間との別れが来るとは。こんな悲しい事があるのだと、現実をつきつけられたあの日。必死でつくった第1回目の「夫婦善哉」。あれから、もう4年・・・。いつの日か、改めて大切につくりたいと願い続けてきた「夫婦善哉」。それが大好きなこの大通茶館という空間での上演となった。
 生きているとたくさんのことを経験する。嬉しいことも悲しいこともたくさんある。生きることは、すべてがそんな断片の繰り返しなのだと、「夫婦善哉」という作品を演じながら改めて思う。
 私共の空間にようこそ!ご来場、感謝します。

野口 利香
 「夫婦善哉」の初演は第1回道東小劇場演劇祭でした。その年、芝居小屋と佐久間さんを失い本当に悲しい思いをしたけれど、それでも前に進むことができた芝居です。私が演研に入ってまだ10年にもなりませんが、きっと30年という長い年月の間いろんなことがあったと思います。それでも劇団を維持できているのは、前に進むことをあきらめないで来たからでしょう。今、この劇団の一員として芝居に関わっている事がとても幸せだし、誇りに思います。そして、演研にふさわしい役者になりたいと遙か遠い前を向いて思います。

金田 恵美
 この作品にまた触れることができて凄く嬉しいです。前回の『夫婦善哉』の公演ではどんな思いで参加していたのかあまり覚えていないのですが、改めて読み返してみて、人生の中の切り取った一場面なんだけど、凄く人というものを感じるというか、出ている3人それぞれに今まで感じたことがないほどの愛おしさを感じています。この何年かの間に舞台に関わる側も、観にきて頂いている方々も様々な思いを積み重ねて来ていると思います。観終わった後に、ここから出る時に顔上げて一つの旅立ちを一緒に感じて頂けたらと思います。

宇佐美 亮
 高校生の時に安部工房のエッセイを読んでから、自分も夢の中の出来事をメモするように心がけています。ですが、齢を重ね、ひとつずつ物事を諦めていくにつれ、夢の中でも想像力の欠如に悩まされます。
 この間の夢は酷かった。ある日手の甲に変な模様が浮かぶ。洗っても洗っても落ちない。妙なかゆみは感じるが別に痛みはない。日がたつにつれ、模様が浮き上がってくる。どうやらカジノによくあるルーレットの台のようだ。赤と黒に色分けされた円形の台が朝起きるたびに盛り上がってくる。そして、完全に浮かび上がった後、下に落ちた。そしてまた手の甲には赤と黒の模様が・・・。ひたすら繰り返される夢だった。
 朝起きて愕然としました。幾度となくルーレットの台は浮かび上がってきたにもかかわらず、一度として玉は出てこなかったのです。
 想像力の欠如はまだしも夢の中までも閉塞しようとは。
 今、閉塞しきっている自分にとって唯一外に繋がりあえるのが芝居です。思えば、演研に入り初めて打ったのもこの芝居、演研の芝居の中で一番好きな芝居でもあります。小さなことにメタファーを見出してしまうのは自分の悪い癖ですが、今の自分にとって、この芝居に関わってき、今関わることができることが大きな意味となるように、今日この芝居を観ていただく方々の中でも何らかの動きが生じることを願ってやみません。

鈴木えりか
演研30周年の第2弾目です。私が入るちょっと前に上演した作品なので、本番を見るのは今回が初めてになります。どうなるんだろう?稽古を見てると、役者の3人ともとっても楽しそう。きっと楽しんでやることが一番大事なことのように思います。
芝居は稽古をする度にぐっと締まった感じになり、3人の心の動きが静かな空気の中でどんどん変わっていくのがしっかりと見えて、見てる側もどんどん引き込まれていきます。
どうぞ皆さんも、楽しんで見て下さい。

神山 喜仁
 入団してから1年と半年ちょっと経ちました。前回は念願の初舞台を踏み、今回は稽古時の音響担当になりました。今までは稽古をただ見ているだけでしたが、役者の呼吸を感じながら音を入れるのはとても楽しいです。
 「隣にいても一人」、「走りながら眠れ」と先輩たちがやる平田オリザ氏の作品。今回も同じく平田氏の「夫婦善哉」。本当に本番が楽しみです。

富永 浩至
 第1回道東小劇場演劇祭、4年前の01年に道東の三劇団が集まり一挙上演という初めての試みを行った。その最後のステージ「夫婦善哉」が終わった後、アフタートークゲストの鐘下辰男氏の第一声は、「稽古は十分にしましたか?」という言葉だった。
 道東小劇場ネットワークを組んで10年。ずっと温めてきたこの企画には、創立25周年の記念に平田オリザ氏に書き下ろしていただいた「隣にいても一人」で臨む予定だった。だが、再演の稽古を始めたその次の日、我々は突然の訃報を受け取った。悲しみに暮れた気持ちを何とか奮い立たせ、演目を変更し稽古を始めてから本番まで、実質の稽古期間は2ヶ月もなく、確かに十分に稽古したとは言えなかった。その時はしかし、何とか上演にこぎ着けたことと、初めての演劇祭を成功させたことで、我々はとても満足していた。
 鐘下氏には、「この芝居は、コップに泥水を入れてかき回し、ちょっと経った後のような芝居だ。表面上はとても澄んでいるように見えるが、すぐ下はドロドロと泥が渦巻いている。演研の芝居は、ちょっとではなく、かなり経った後の芝居になっていて、ドロドロの部分が少ない。」との講評をいただいた。
 前回は表層をなぞることに賢明で、内面の深いところまではいってはいなかったかもしれない。さて、今回は・・・。

 

 

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