●劇団動物園のつぶやき
「動物園と演研と私」
松本 大悟
「役者経験上、初めての感覚を体験した北見組。目標の高さを痛感しつつ楽しさ倍増の瞬間連続に感謝。演出片寄はやはり凄い。そして20年の付き合いは伊達じゃないと再確認。信頼関係は勿論、無言の圧力・さり気無い気遣い・広大な受容・率直な反応・思いやり・妥協なき目標・揺ぎ無き信念等々。どうやら『真正・隣にいても一人』が完成しそう!」
これは世界に発信している劇団動物園掲示板での稽古日誌とは別に、本音を綴った個人手記の最初の感想です。40年の人生において、今回ほど刺激的な日々を過ごした事はありません。『志が同じであれば距離は問題にならない』その様に信じ行動を起こした今年の一月。今にして思えば、あの時に動物園メンバーが快諾してくれなければ此度の公演は存在しませんでした。本当に感謝しています。合同公演が具体的に展開するにつれ不安が募りましたがそんな不安を吹き飛ばしてくれたのが合同稽古であり、演研メンバーの優しさです。僕を信じ共に歩んでくれる動物園メンバー、人間味に溢れ情熱的な演研演出、誠実に信念を貫く演研メンバー、非日常を一瞬で彩る茶館工房。僕らの聖域アトリエ動物園。劇団演研と出逢えた事は財産であり、追い掛ける事は喜びであり、共に創る事は目標であった劇団動物園。こんな幸せな日々は無いと何度も思いました。合同公演を企画した己を終生自慢する事と思います。僕は既に沢山の土産を手にしています。
そして本日、この日この場所にご来場下さった観客の皆さんに僕達のありったけをプレゼントします。
佐藤 菜美
初めての合同公演に、そして再演のたびに進化し続けているこの作品に創り手として参加できることは、本当に光栄であり幸せです。限られた時間の中での熱く濃密な稽古のたびに、なんともいえない充実感、幸福感を味わいました。
稽古は毎回が驚きと発見に満ちており、いかに自分が普段からいろんなものを纏って、装っているのかを痛感させられました。若輩者を温かく見守り、導き続けてくれた演研のみなさん。稽古にはなかなか参加できなくても、裏で支えてくれるいつもの動物園の仲間。私たちを包んでくれる最高の時間と空間。このとき、この場所で、このメンバーだからこそ実現する合同公演は、何物にも代えがたい宝物です。演研が大切に育て続けてきたこの作品に、ほんの少しでも新しい輝きを加えることができたらとても嬉しく思います。
ご来場のお客さま、いつも応援し、支えてくださる皆さまに心から感謝します。
岡 利昭
社会人になってから始めた演劇ですが、何の因果か、これまで所属した三つの劇団全てで遠距離活動を体験しています。演劇初体験は旭川で、そこでの旭川〜名寄 74kmを皮切りに、続く苫小牧の劇団では苫小牧〜札幌 62km、そして現在は北見〜札幌 310kmとほぼ北海道を横断する様に活動中です。転勤の多い職場にいる事が原因なのですが、遠距離活動の動機は「このメンバーといつまでも演劇を作りたいんだ!」という私の恋愛にも似た感情からで、それを続けられるのは温かく迎えてくれる仲間達がいるからこそと思っております。
今回の合同公演は帯広〜札幌 215km。峠に色鮮やかな花々が咲いていた7月初旬から始まり、猛烈な残暑の8月を駆け抜け、9月も半ばを過ぎた頃、峠にはススキ。ほぼ毎週末、日高山脈を越えて3時間30分、茶館工房に着くと温かく迎えてくれる演研の皆さん。濃密で刺激に満ちた稽古、週末が待ち遠しい日々が続きました。
帯広〜北見 163km、両劇団が距離を乗り越えて作品を作り上げました。お客様に楽しんで頂ければ幸いです。
岡 歌織
「劇団演研さんとの合同公演が決定しました!」と合同公演の一報を聞いた瞬間は強烈な驚きで我が耳を疑うほどでした。演研のみなさんにとって特別で大切なこの作品を共に創ることができると知った時には正直鳥肌がたちました。身が引き締まる気持ちを抱えて稽古初日に夫と帯広まで車を走らせた日のことを、つい昨日のことのように思い出します。もちろん毎回の稽古は真剣勝負!そんな緊張する心と体をいつもあたためてくれたのが稽古の合間に頂く一杯のほろ苦い珈琲の味でした。この味が合同稽古の経験と統合されて私の小さな脳みその片隅に記憶として刻まれております。そしていつの日か、時々、珈琲の味と香りがこの作品作りの日々の記憶を呼び覚ましてくれるかもしれません。その時、わたしが何を感じるのか。発見の連続はこの先も未来永劫続いてゆくのかもしれません。得難い沢山の経験をさせていただきました事に感謝して限りある貴重な時間を大切に味わいたいと思います。
廣部 公敏
20年来のお付き合いをさせていただいている「劇団演研」との合同公演、私たちにとって何より興奮する出来事であり、夢のような企画であり、そして二つの都市間の距離への挑戦であり、限られた時間との戦いであったと感じています。
私自身は、仕事と私的な事情で週末の帯広の稽古にはほとんど参加できませんでした。稽古に参加した団員から新鮮で刺激的な、そしてなにより楽しく充実した稽古の話を聞き、悔しくもあり、羨ましくもあり、そしてその場のなんともいえない緊張感を想像すると恐ろしくもあり…。この公演を一番楽しみにしているのは、私たち自身かもしれません。
二つの劇団が共に創り上げた作品に、それぞれの土地のお客様の創りだす空気がさらにひとつになったとき、どのような空間が、世界が生まれるのか…。皆様と共に楽しみたいと思っております。
本日はご来場いただき誠にありがとうございます。
菅原 祐太朗
世の中、分からないことばかり。円周率、ピラミッド、ど根性大根、何故私が演劇に興味を持ったのかetc…。きっかけすら、今や不鮮明になりつつあります。でも、「ええじゃないか」
…ええ、もちろん。いえ、むしろ感謝致します。こんな素晴らしいものに出会え、始めたことで何人もの素敵な人に出会い、これはまさにキセキ…。
さて、話しは変わりまして、この度、道東の演劇史に新たな1ページが刻まれる瞬間に立ち会えることを、とても嬉しく思います。心から感謝申し上げます。
中村 聡
劇団動物園ナカムラです。
ついに劇団演研と劇団動物園との合同公演が実現の運びとなりました。演研さんとのおつきあいにおいて数多くの舞台を拝見した中でも、とりわけ印象深い「隣にいても一人」。書き下ろし直後の初演を観客として拝見してからおよそ10年になろうとは、あらためて驚きです。初の合同公演という意味でももちろんですが、今、自身の環境も大きく変わり、これまでとは大きく異なる印象でこの作品を受けとめています。
北見組の自主稽古に代役として参加したくらいで「この公演は一つの到達点であり、この舞台に触れられるお客様は幸運である」などと、プロセスは関係がなく、会場における生の交感こそ舞台作品の真の結果という大前提を承知の上で不遜ながら私が申し上げることは、かえってこの作品価値を下げることになりはすまいか…と案じながらもつい言葉にしてしまいましたが、ともあれ本日の一期一会を心よりお喜び申し上げます。
お楽しみください。
●劇団演研のつぶやき
坪井 志展
最近記憶の回路が破壊されている私ですが、演研25周年記念に平田オリザさんから脚本が送られてきた時の事は鮮明に覚えています。「隣にいても一人」、キャスト:佐久間、富永、上村、坪井、嬉しかった。とにかく嬉しかった。オリザさんから送られてきた原稿を読むために、一台のパソコンを劇団員皆で覗き込んだのがついこの間のことようです。何でもそうなのだろうけれど、長く続けていると素敵な事があるのだなあとつくづく思います。佐久間さん亡き後の青年団の大塚さん、龍昇企画の龍昇さんとの共演。そして35周年は劇団動物園との合同公演です。
二つの劇団の稽古は、若い北見組が北見と札幌から週末毎にやってくるという形で成立しました。動物園メンバーは前の稽古での演出からの要求を見事に克服し稽古場にやってきます。唯一人キャスト変更のない私は、プレッシャーを感じながらも新しい三人から新鮮な刺激を受けました。この三ケ月間は、緊張感と安心と愛情のあふれた稽古だったと思います。隣にいても一人だけど、一人がなくちゃ他者もいない。体力、精神ともにきつい毎日でしたが、すばらしい経験ができたと感じています。舞台でそれらをお伝えする事ができきれば幸せです。
本日は演研・茶館工房に、アトリエ動物園に足をお運びいただき、まことにありがとうございました。
上村 裕子
演研にとって、私にとって、とても大切な作品「隣にいても一人」がヴァージョンアップしました。平田オリザ氏に書き下ろして頂くという夢のようなことが現実となった、あれから10年も経つとは…。その間に、佐久間兄の急逝、芝居小屋の解体、プロの役者との共演、東京こまばアゴラ劇場での道東演劇祭inアゴラの実現、そして青年団プロジェクト公演「隣にいても一人」への参加、と悲しい事も幸せな事もたくさんありました。演研メンバーでの上演は初演の時だけですが、演研だけでなくたくさんの人が関わって再演してきたというのも大変貴重で嬉しい事です。今回はかねてより『同志』と思っていた北見「劇団動物園」との合同公演が現実になり本当に嬉しいです。そして、キャストから離れて改めて客観的に作品と向き合う(いつもこれがなかなかできません)事がとっても新鮮で楽しいです。数少ない稽古なのに十分には参加できませんでしたが、動物園の二人の役者のひたむきで真摯な姿勢に大変触発され、進化し続ける姿に圧倒される日々でした。若返り、新たな空気感の「隣にいても一人」にご来場頂きありがとうございます。
野口 利香
夫婦になるとはどういう事なんだろう。他人同士が家族になり、親兄弟よりも長く生活を共にする。この芝居を見ていると、夫婦になるきっかけは何でもよく、そこからどう関係を築いていくのかが大事なんだと思ってしまいます。皆さんはどう感じられますでしょうか?劇団動物園と新たに作り上げた「隣にいても一人」、何気ない会話の中から見えてくるものがきっとあるはずです。
では、ごゆっくりとご覧ください。本日はご来場いただきありがとうございます。
金田 恵美
合同稽古、その一回一回が刺激的でした。以前から交流はあったものの、一つの作品を一緒に作る事は初めて。稽古の度にぐんぐん伸びていく動物園の二人に驚きを隠せませんでした。果たして自分は芝居に対して役に対してそこまで力を注いできたか?この稽古を通して自分の在り方を何度も考えさせられた気がします。まだ答えは出ていませんが、受けた刺激をバネにして飛躍する事ができれば、と思っています。
富永 浩至
そんなに野球に興味がある訳ではないが、イチローの10年連続200本安打には興奮した。そしてその日のスポーツ新聞にイチローのお父さんのコメントが載っていた。
『宣之さんは、イチロー選手が子どものころ「一つのことを続ければ、世間から認められるようになる」と教えたエピソードを披露。遅い馬でも十日間走り続ければ名馬に追いつけることを意味する中国の荀子の故事「駑馬十駕(どばじゅうが)」と書いた色紙を見せながら、「天才ではない。コツコツとやってきた結果だと思う」と心境を話した。』
まさかイチローは遅い馬ではないだろうと思いながら読んだのだが、同時に自分たちのことを考えた。35年間遅々たる歩みで続けてきたが、もっともっと遅い馬である我々はさらにコツコツと続けなければならないのだろうと・・・。
さて、今回の合同公演は、道東小劇場ネットワークを結成時から夢でした。実際、それを前提にし、合宿をして稽古を行ったこともありました。そして、ついにその夢が実現します。コツコツした歩みの中のその一歩に立ち合っていただけて、本当にありがたい気持ちで一杯です。