第76回公演  「 おやすまなさい」
 作:前田司郎   演出:富永浩至

 


 スタッフ
  坪井志展、上村裕子、清水匠、村上祐子、片寄晴則
  

 キャスト
  1 野口利香、2 金田恵美、サザエ(声) 清水匠


上演にあたって

富永 浩至

演劇ならではの表現というものがあります。例えば、登場人物が「ここは宇宙です」と言えば、舞台は宇宙空間になるのです。映画などの映像ではそんなことはあり得ません。莫大なお金をかけて、宇宙のセットを作らなければならないのです。いやまあもちろん演劇でも、舞台にそれなりの説得力がなければ、宇宙空間には見えないのですが。

 二〇〇七年に、この「演研・茶館工房」を設計してくださった青年団の杉山至さんのワークショップを、まだ作りかけの工房で開催しました。そのグループワークの発表の時、そんな演劇ならではの奇跡を見ました。二畳ほどのカーペットの上で、4人の女性がおままごと遊びをしているシーンで、そのうちの一人が突然腰を浮かし「あ、私たち飛んでいる」と言ったのです。その時、本当に彼女たちが空飛ぶ絨毯の上にでも乗っているかのように見えたのでした。莫大なお金をかけなくても、そんな奇跡的な瞬間が演劇には訪れます。

 さて、今回は、2年前に新人お披露目公演としてとり上げた「びんぼう君」の作者、前田司郎さんの戯曲です。「ストーリーには興味がない」と公言している前田さんらしく、誰でもない二人が、ダラダラとたわいもない話をしているだけのお芝居です。でも、その戯曲にとても魅力を感じました。そして、この面白さをなんとか表現したいと思い、今回上演することにしました。

 平田オリザさんはその著書の中で、「伝えるべき主義主張や思想や価値観は、もはや何もない。だが、伝えたいことなど何もなくても、止めどなく溢れ出る表現の欲求は、私の中に確かにある。私に見えている世界をそのまま記述したいという単純で暴力的な欲求だ。」と語っています。まさに前田さんも同じではないでしょうか。前田さんは確かにこのような世界が見えているのだと思います。そんな前田さんの世界を、我々なりに立体的に再現させるため、日々稽古に勤しんでおります。皆様に楽しんでいただければ幸いです。

 本日は、演研・茶館工房へ足をお運びくださり、誠にありがとうございます。

 

つぶやき

坪井 志展

 結婚してから暫く、欲しい物があるときには、紙に書いて2ヶ月待つ、そして2ヶ月後もまだその気持ちが続き変わっていなかったら買いましょう。というルールが我が家にはありました。

 私はいつも、その時に一番欲しいもの+「生猫」と書きました。社宅扱いのマンションでは動物が飼えるはずもなく、猫のぬいぐるみをあてがわれました。それはそれで嬉しかった事を覚えています。いつしか猫のいる生活が当然となり、暗黙のルールはいつの間にかなくなり、今は欲望のままに生きている気がします。折り返し地点を過ぎると人って我慢がなくなるのかな。

 などと書いていたら、テレビ(WOWOW)で前田司郎、監督、脚本の映画「ふきげんな過去」がはじまった。小泉今日子、二階堂ふみ共演のヒューマンコメディ。始まる前の解説で、小山薫堂氏が、「物語はよくわからないけど、とにかくせりふがおもしろい。何度も観たくなる」と話していた。私も見終わった後その通りだと思った。非常識の中の常識、自分の中の常識、理解の出来ない事が廻りには幾つものあるなと感じました。「おやすまなさい」もそんな風に感じていただけたらと思います。

 本日は、貴重なお時間のなか「演研・茶館工房」に足を運んでいただきありがとうございました。


上村 裕子

 7月上旬、とても久しぶりに東京まで『青年団の新作舞台』を観に行ってきました。(富永、坪井と一緒に)終演後、平田オリザさんにはお会いできませんでしたが、青年団の役者さん逹にお会い出来ておしゃべり出来たのはとても嬉しい事でした。その時に、今回の作品の作者である『前田司郎さん』もいらしていて「お久しぶりです」と声をかけてくれました。前田さんは以前にも増して、爽やかな青年でした。あの時、今回の上演が決まっていればもっといろいろ話せたかも知れないと思うと、とても残念です。

 今回の作品はちょっと不思議です。前田さんの爽やかな笑顔を思い出す度に、あの笑顔の人がこれを書いたのか…と思うと、作家の人としての奥深さを感じます。

 いつもご来場頂いている方、初めてご来場下さった方、久しぶりにご来場頂いた方、ありがとうございます。ちょっと不思議な世界を楽しんで頂けましたら、幸いです。

 

 野口 利香

 前田司郎氏の作品、2度目です。前回「びんぼう君」では、びんぼう君の友達、つまり小学生を演じました。その時も、舞台上でどう存在すればいいのかなかなか掴めず苦労しましたが、今回も悪戦苦闘の連続でした。

 眠りたい人と、寝て欲しくない人という設定のみで、なんか変な話で盛り上がったりする。心と身体の柔軟性に乏しい私は、なかなか自分の言葉に出来ず、稽古後に我が身を呪いながら帰途につくこともしばしば。でも、この本を読んだときに、なんか面白いし、心にしみる台詞もあったりして、楽しい舞台になるんじゃないかと思ったことを思い出し、稽古を重ねています。

 自分の不器用さを目の当たりにし落ち込みつつも、一歩一歩前に進んでいます(只今、公演3週間前です!)。ちょっと不思議な世界ですが、何かを感じていただければ幸いです。

 本日はご来場いただき、誠にありがとうございます。

 

金田 恵美

 安室ちゃんが引退して1ヶ月ちょっと…引退日が来るのもあっという間でしたが、引退後もあっという間に過ぎ、気付けば葉が色づいていました。引退商法に引っ掛かってるのかと自分でも思うくらい、ここ数ヶ月安室ちゃんに嵌まりまくりです。とうとうメルカリにまで手を出す始末…。昔、ヤフオクで取引した事はありましたが、今の便利さに驚いています。昔は、振り込むのに出品者の口座番号控えて郵便局に走っていたのが、コンビニでいつでも支払い可能。なんて便利なの。いつの間にか時代に取り残されている事は多々あって、気付かないでいる事の方が多いのかも?あまりの手軽さに、ホイホイ購入してたら気付けば安室ちゃんビンボー…気を付けなければ。

さて、今回の作品。何が言いたいの?と思う方も多いかと思います。私もその内の一人。でもやっている内に、楽しさが勝ってきています。何気無い話の中のただ一言でも、見ている方の心に何かを灯す事ができれば…と思います。

 

清水  匠

 今回は仕事が忙しく、稽古になかなか参加ができませんでした。ただ間隔があいていたためか、久々の稽古では役者の表情や動きがどんどん変っていく様がわかり、それはそれで面白かったです。

 今回の芝居は2人の登場人物がだらだらおしゃべりしているだけに見えるのですが(実際にそうかもしれないですが)、その空間で流れる不思議な空気を観客の皆様にもぜひ楽しんでいただきたいです。

 本日はお越しいただきありがとうございました。

 

 

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