富永 浩至
5年前に新国立劇場で「二人芝居〜対話する力」という企画のもと3本の海外作品が連続上演されました。東京へ観に行くことも出来なかったので、せめて読んでみようと思い、戯曲を取り寄せました。その中で最も心を惹かれたのが、今回の演目、カナダの劇作家モーリス・パニッチの「ご臨終」でした。すぐに翻訳した吉原豊司さんにメールを出し、上演の許可が下りるのかをお尋ねしました。
「入場料収入の10%または US$2,000の最低保証というのがこの種戯曲の場合の世間相場です。貴劇団の場合は、US$2,000 の最低保証は重荷と失礼ながら愚考。もし上演されるのでしたら、貴劇団に特化したレートを原作者から取り付けます。」との有り難いお返事を頂きました。
上演を決めた今回、吉原さんはその約束通り、破格の条件で上演許可を取り付けてくださいました。そして、その支払いのための海外送金に四苦八苦していた我々にかわって、なんと送金までしてくれたのでした。本当に感謝感謝です。
さて、私がこの作品に惹かれた理由の一つは、その斬新さです。ほんの数秒だけの短いシーンから長いもの、合わせて37もの場面の積み重ねで構成されている。二人芝居なのに、その一方だけに極端に語らせている。そして最後には……。しかし斬新ではありますが、どこか懐かしい、温かい気持ちになるハートフルなお話でした。そして今日の舞台で、お客様に少しでもそれが伝わるようにと只今、日々稽古に励んでいます。
最後になりましたが、この場をお借りして、装置製作を手伝っていただいた斎藤ヒロトさん、宣材に写真の使用を許可してくださった大久保真さんにお礼を申し上げます。ありがとうございました。
そして何より、12月というお忙しい時期にもかかわらずご来場くださった皆様、誠にありがとうございます。
つぶやき
坪井志展
5年前の朝、脳梗塞で左半身が不自由だった父が亡くなった。次の年に今度は母が、ベッドに横たわったまま亡くなっていた。二人とも一人ぼっちで亡くなっていた。
看取ることができなかった事、十分に看病ができなかった事、いつまでも続くであろう介護に日々を思って不安や大変さばかり考えていた事、今となっては後悔ばかり。なんとか自分を納得させようと思うけど、できなかった事、思った事実を消すことはできない。
死期がわかっていればもっと色々できたのだろうか、一緒に旅行へ行ったり、もっと優しくできたのかな、など二人の写真を眺めながら考えています。
父と母との別れは、なんだか自分一人置いてきぼりにされた気がします。終末期に差し掛かってきたせいなのでしょう、私も最後は一人で死んでゆくのだろうなぁ。
さて、この芝居の中の叔母の死に目に立ち会うために戻ってきたこの男、一体何を思って叔母さんのところへ来たのだろか。一見とても自分勝手な感じもするのだけれど、最期の時を過ごすために駆けつけた彼の事が、日々の稽古を重ねるうちにとても愛おしい男に思えてきました。題名に目にしただけで敬遠される方もいらしたかもしれませんが、とても温かなお芝居になっていると思います。
本日は暮れも差し迫ったお忙しいときに工房に足を運んでくださり誠にありがとうございました。
上村 裕子
師走というあわただしい時期に、ご来場頂き、ありがとうございます。私は現在、諸事情によりほとんど稽古参加をしていない状態です。新作に取り組んだ大切な仲間達の後方支援も出来ずにいますが、公演当日はこうしてお客様をお迎えできて、嬉しいです。
私達は公演体制の中の広報活動でポスター掲示のお願いに歩きますが、今回のタイトルは貼らせて頂くのに、ちょっとためらってしまいました。馴染みの場所ばかりなので、笑って貼らせて下さいましたが。お客様はタイトルから何をイメージしたでしょうか?
私は終活とかエンディングノートです。自分にはまだまだ先だとおもった日々はとうに過ぎてしまいました。最近、これから自分はどう歩いていきたいのかを考える事が多くなりました。歳、とったのでしょうね…。
どんな形でもいいから作品づくりに関わる事、表現者であり続ける事、を諦めない道を選んで進みたいです。
野口 利香
いつも公演パンフレットに「つぶやき」を載せますが、毎回何を書こうか大いに悩みます。そしてまさに今、第78回公演「ご臨終」のパンフに載せる「つぶやき」原稿の締め切り日23:00をまわったところである。何も浮かばない。しようが無いのでビールを飲む、金麦だが。
最近心に留まったことを書こうと思うのだが、何も出てこない。私には、日々の小さな発見とか、些細なことでの喜びとか無いのか?いや、たぶんあることはあるが思い出せない。いろんなことをちゃんと憶えておきたいのに、どんどん忘れてしまう、もったいない。
なんてことを書いて、そろそろ23:30。今日は初日3週間前です。今回も私には、とてもハードルの高い芝居。舞台上でその人として「存在」することは本当に難しい。人は常に何かを思って存在しているのだから、その思いを考えながら稽古に励んでいます。ついに0:00をまわってしまった。この原稿を送信します。
このしょうも無い「つぶやき」をご覧になっているお客様、本日はご来場誠にありがとうございます。最後までゆっくりとご観劇ください。
金田 恵美
勤続21年目を迎えた今年、長年働いてきたお祝いで数日お休みを頂きました。年末年始やお盆の休みとは違う、ちょっと特別な休み。せっかくなので何処かに行こうと思いつつも、なかなか決められず…ホテルや飛行機の手配を済ませたのは、出発二週間を切る頃でした。
悩みに悩んで決めた行き先は奈良・京都。数年前に先輩に連れられて一緒に旅行してから2度目の訪問。しかも今回は一人。巡る先は出発前に目星をつけていましたが、行った先での移動手段は、携帯があるから何とかなるだろうと見切り発車。迷う事もありましたが、何とかなりました。携帯様々です。
携帯が無かった頃は大変だったろうな…なぁんて思いながらひたすら寺社仏閣巡り。紅葉が始まった古都を楽しみ、リフレッシュしてきました。今回の旅で思った事は、意外と坂が多い。普段ほとんど運動しない私は、地元の人にあっという間に追い越される。歩くための健康と体力がないと寺社巡りは難しい、と思いました。沢山の御朱印と筋肉痛をお土産に帰路につきました。
さて、今回初めて制作を担いました。もう長いこと演研にいるのに知らない事が多い。一人では担いきれないので、助けて貰いながらの制作で「やりきった」とは言えませんが、良い経験になりました。
この度は工房に足をお運び頂き、有り難うございます。一緒にこの作品を楽しんで頂けたら嬉しいです。
清水 匠
今回の劇は2時間近い二人芝居ということで、台本を読んで「本当に十二月までにできるのだろうか」と考えてしまうようなボリュームでした。とくに役者はとてもきつかったと思いますし、もし自分が役者の立場だったらと考えるとゾッとします。
今回も私は稽古に満足に参加できず、他の団員に迷惑をかけてしまっているのですが、観るたびにどんどん変わっていく稽古を見てとてもワクワクしています。私自身は、せめて当日だけでも足を引っ張らないよう、丁寧に取り組んでいきたいと思います。
本日はお越しいただき、ありがとうございました。