第79回公演  「六月の電話」
 作:別役 実   演出:富永浩至

 


 スタッフ
  野口利香、上村裕子、清水匠、小澤厳、大澤真琴、片寄晴則  

 キャスト
  女:坪井志展
 男:富永浩至


上演にあたって

富永 浩至

 本日はこのコロナ禍の、しかも三密を避けるようにいわれている中、この狭い演研・茶館工房へお越しいただき、誠にありがとうございます。演研もお陰様で創立から45年が経ちました。ここまで長く続けて来られたのも、公演の度にこうして足を運んでくださるお客様あってのことだと団員一同、心より感謝しております。

 さてこのお芝居は、昨年公演時にとったアンケートで一番となった作品です。45周年記念公演の一本は再演にしようと、今再演可能な作品を5本選び作ったアンケートで、おまけのように入れた未上演のものが、計らずも選ばれました。しかしこの状況を考えるとそれは我々にとって一番良い結果になったと思っております。

 語りたいことは色々とありますが、こうして皆さんと同じ時間、同じ空間を共有できていることが、本当に嬉しくてなりません。

 最後になりましたが、目の前の素敵なオブジェの使用を快く許可してくださった鈴木隆さんに、この場を借りてお礼を述べさせていただきます。ありがとうございました。

 

つぶやき

坪井志展 

 本日は、演研45周年記念公演に、ご来場いただき誠にありがとうございます。「芝居は観客と共に成り立ち、成長してゆく」との思いで一つ一つの公演を行ってきました。この時を共有できたことで、今、私自身がここにいる事を、芝居にかかわっていることを意識することができ、私の中の時間に、確かなものとして心に刻まれてゆくのだろうと思います。

 日々、なにげなく眺めていたものが突如、恐ろしいものに見えてくる。いつでも手放せると思っていたモノが、実際に放した途端、心に大きな穴があく。そんなことの繰り返しで、この先も、私の中の時間を、生きてゆくのだなと実感しています

 

上村 裕子 

 本日はご来場、誠にありがとうございます。皆様、いかがお過ごしでしたか?日常生活に不自由を感じる、こんな時代がくるとは思いもよりませんでした。

 私にとっての演劇活動は、休むとかちょっと離れる事はあっても、辞めるという選択肢はない身体の一部になっている大切なものです。それが、公演がいつなら出来る?どうやれば出来る?仕事関係のバランスをどうとれば良い?個人の思いと社会人としてのルールをどう判断するかを問われる日々が今も続いています。とにもかくにも、公演当日として、皆様にお会い出来る事がとても嬉しいです。

 私達の空間へようこそ。こんなにゆったり、観劇頂けるのは初めてですね。そんなステージもあったと笑い話に出来る日が早く来る事が今の切なる思いです。

 

 野口 利香 

 昨年の今頃は思いも寄らない事態、しかも世界的な新型コロナウィルス感染拡大。人類とウィルスとの戦いなんて、まるで映画のようではないか。ところで、ウィルスっていったい何者?生き物なのだろうか?ウィキペディアで調べてみる、「他生物の細胞を利用して自己を複製させる…、生物かどうかについては議論がある…」う〜ん、結局何者か分からん。

 その得体の知れないやつのおかげで健康や経済が脅かされ、日常を変えなければならなくなったわけです。三密を避け、常にマスクをしなければならない。風邪をひいたときでもマスクなどしたことのない私だが、すっかり慣れてしまったと言いたいところだが、息苦しくてかなわない。でも、ほうれい線を隠せることは利点か…。

 6月に予定されていた公演も断念せざるを得なくなり、なんとなく空洞を抱えながら自粛生活を送っていたものです。しかし、いまや芝居が日常の一部になっている私たちは、どうすれば芝居が出来るかを考え、稽古を重ねてきました。45周年記念公演と銘打ち、本来であれば多くの皆様に観劇いただきたいところですが、座席数をいつもの半分以下とし、寒さが増す季節に窓を開けながらの公演となります。このような状況の中でも、足をお運びいただきましたことに感謝申し上げます。

 4年前に役者の健康上のことで公演中止となった作品であり、今年3月に逝去された別役実の作品です。別役作品独特のかみ合わない会話から見えてくるものは何か。最後までごゆっくりとお楽しみください。

 

大澤真琴 

 帯広演研を初めて知ったのは高校3年生の時。ミュージカル劇団に入ったばかりの私は、演劇というものがどういうものか大して分かっておらず(今もそんなに分かっていませんが)、「とりあえず何でも観てみよう」精神で演研の芝居小屋の門をくぐりました。

  夜の薄暗さの中、外にはテントが張られていて、味のある顔の男性がチケットとダンボールの切れっ端を交換している…。そんなレトロで少し怪しげな雰囲気に、思春期の私はワクワクしたのを覚えています。軋む急な階段、乾いた木の匂い、真っ黒な床と壁に照明の光がてらてらと揺れている。そこで芝居が始まるのを待っている時間も、自分にとって好きな時間でした。

 そんな劇団演研の、歴史の匂いがいっぱいする劇場が、私にとって特別なものから日常のものに変わったのは、今年の冬の終わりの頃です。富永さんからのお声掛けで、メンバーの一員として演研に関わってゆくことになりました。稽古を観たり、演技を観てもらったり、プロジェクターで東京のお芝居を観て感想を言い合ったり…そういう時間をこの劇場で過ごして感じたことは、「分からないことは正しいことで、分からないことを考えることで、人間は自分を少しずつ知っていくのかな」ということでした。

 答えばかりを求めて不安になったりすることもありましたが、分からないことを許容したり、皆で話し合って考えたりすることが自分を、ひいてはこういう世の中を救ってくれるのかな、なんて、そんな事を思いました。

 本日は劇場にお越し下さり、誠にありがとうございます。ごゆっくりとお楽しみください。

小澤 厳 

 今年1月から演研にお世話になっており、今回の上演が私にとって、ここで初めてのものとなります。新米団員ですので、よろしくお願いします。芝居に関しては長いブランクもあり、年齢も重ねていることから、他の団員の皆さんに迷惑をかけないよう、今後頑張っていきます。

 約9カ月が経ったとはいえ、この間コロナの影響で一時稽古が中止になったことや、私自身が仕事に追われたこともあり、ろくにお役にたてておらず、大変申し訳ない気持ちでおります。

 コロナの流行が始まり、自粛ムードが広まってきたころには、このまま演劇などの文化が衰退してしまうのでないかと心配しておりましたが、最近は行楽地を人がたくさん歩く光景や大きなイベントが条件付きで開催されているニュースなどを見て、ほっとしています。

 今回の芝居は、昭和の時代のノスタルジアを感じることができ、私自身も大変気に入っています。おそらく同年代の方々にも、その気持ちが共鳴していただけるのではないかと思っています。また若い世代の方も、「ある一つの恋愛」というテーマで、何かを感じていただけるのではないかと思います。

 本日は、お越しいただきありがとうございます。ごゆっくりご観劇ください。

清水 匠 

 今年はコロナの影響で、稽古が行えない日々が続き公演もできず、なんだか変な感じでした。公演が丸々中止になってしまった経験は入団してから1回しかなかったので……。

  今回はまさにその以前中止になった公演のリベンジ(?)ということで、どのような稽古になっていくか楽しみだったのですが、例年通り稽古にあまり参加できなかったのが残念です。幸い本番当日は無事参加できそうなので、こんな状況下でも公演ができることに感謝しつつ、やれることをやっていきたいと思います。

 本日はお越しいただき、ありがとうございました。

 

 

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