「杉山至(青年団)の舞台美術ワークショップ」レポート 記 富永浩至 |
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5月20日(日)午前10時 |
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WS3『原風景のワークショップ』 |
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一般参加者、杉本さん。子どもの頃よく遊んだ納屋の絵を描きました。他にも両親の農作業の手伝いをしている時に、畑から見た夕方の日高山脈の絵も描いてくれました。 | |
村上さんは「おもちゃんこ」をして遊んだ記憶を絵にしました。「おもちゃんこ」、私は初めて聞きました。「おままごと」のことらしいのですが、微妙にニュアンスが違って、「おもちゃんこ」は「おもちゃんこ」だと言っていました(^_^;)。 |
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この人は強烈でした。ちょっと見づらいですが、「猫を壁に投げつけたら、お腹が割れてそこからうんちが大量に出て来た絵」です。実はお腹が割れたのではなく、壁にぶつかった拍子に、うんちを漏らしてしまったというのが真相らしいのですが、子供心にお腹が割れて大変な事になったというのが記憶として残っているそうです。 | |
ちなみに私は、近所の空き地に大量に積んであった魚箱を少しずつ抜いていき、中に空洞を作り秘密基地にして遊んだ記憶です。今考えるとかなり危険な気がしますが、子どもの力で箱が抜けるというのは荷重がかかっていないので、抜いても安全という事でしょうか。 | |
各自描き終わったら、例によってグループ分け。そしてチーム名決めて、どこが共通なのかを発表します。 | |
みんな集まり、ワイワイやっていますが、一人二人となら合うのですが、2チームに分けるとなるとなかなか共通点が見つかりません。ここで杉山さんの一言。「こちらの人たちは視点が近いですね」なるほど、目からウロコです。無事チーム分けが出来ました。 写真のチームは、「少年少女探検隊」。夕方の日高山脈、通学路にあった入っちゃいけないと言われていた薄暗い林、禁止されていた鉄橋を渡ったことを描いたグループです。共通点は、視点が大きい事、そして未知なところへ行ってみたいというところです。私が入ったチームは猫や魚箱、あと踏切や店先にあるカエルの置物を描いた人たちです。共通点は視点が近く、手で触る事が出来るものを描いたところです。で、チーム名は「ACTION」。働きかけることによって、反応が出てくる共通点からつけました。 |
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「原風景は、その時の音だとかニオイ、肌触りなど五感を伴って記憶しています。様々な人の原風景があり、誰一人として同じではないですが、根元的には同じ部分があるのか、感覚的に分かりあう事が出来ます」 「では、次に自分たちのグループをアピールするプレゼン資料を作って下さい。自分たちのチームをイメージするスケッチを模造紙におこして下さい。そして、 ・タイトル ・コンセプト ・グループ名 を入れて下さい。ビジュアルを形にしていきます」 |
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これはちょっと戸惑いました。自分たちのチームをアピールする?どうやって?チーム分けするのにも苦労したのですから、これは更に大変です。おまけにプレゼンなどした事ないし・・・(^_^;)。しかし、要所要所で杉山さんがアドバイスをしてくれたことで、何とか出来上がりました。 | |
はい、苦労した末に出来上がったのがこれです。まず、「少年少女探検隊」チーム。タイトル「彼方へ」、コンセプトは「高さを乗り越えて。広がりを求めて。におい、音、空気感を感じられる。ひみつ」です。初めは、空の色、川、草原の色など塗っただけでしたが、時間切れ間近に模造紙に穴を開けて、紙の筒をつけました。「ここからのぞく事も出来ますし、その穴から別の世界へ探検にでる感じも出しました」 これが大正解でした。これをつけた事によって立体的になり、インパクトがあります。杉山さんも「この筒をつけて、抽象化した事がとても良かった。グループワークの面白さは、こういうところにあります。一人では思いつかないような発想が、違うイメージを持った人がぶつかる事によって出てくるのです」と褒めていました。その抽象化に関連して、杉山さんがピカソの「ゲルニカ」の話をしました。 「昔は、絵を描くという事は、事実を伝えるという意味合いもあった。見たものを正確に描く。しかし、現代では写真などがあり、その必要はない。では、現代の画家はどのように表現をし、どのように伝えるのか。ドイツの無差別爆撃を非難して描かれたピカソの『ゲルニカ』、あの絵には死体が出て来ない。抽象的な牛の絵などが描かれている。しかし、十分にその悲惨さが伝わって来る。あの牛などはピカソの原風景ではないだろうか」 |
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さて、我々のチームは、チーム名「ACTION」。タイトル「当たりクジ」「当たると動き出すケロヨン。動くヒモを引っ張ってみてね」、コンセプト「思いもよらぬことが起きる現実」です。坪井の描いたスケッチに出て来たヒモと宇佐美が描いた店屋の前にあるカエルの置物(たたくと頭が揺れるアレです)などから発想しました。何かをすると反応があるという共通点から、長いカラフルなヒモを引くとカエルが動き出すという事を決めて描き始めましたが、杉山さんから「楽しいだけになっていて、当初あった不気味さみたいなものが無くなっている」というアドバイスを受けました。で、考えたのが、紙芝居形式。2枚目の絵を描いて、当たったはいいが、動き出してみるととんでもない怪獣だったというオチです。カエルに人が食べられています(^_^;)。 ここで午前中のワークショップは終了。杉山さんからの講評です。(以下要約。といってもテープに録音していたわけでないので、正確ではありません。あくまでも私が聞いた印象です。あ、このレポートすべてそうです(^_^;)) 午後に続きます。
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5月20日(日)午後1時 |
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私の場合、空高くではなく、とても低いところを気持ちよく飛んでいます。いかに低いかを表すために、横に犬を描いておきました(^_^;)。しかし、同じ飛んでいる絵と言ってもその感覚はまちまちです。落ちそうな恐怖感がある人とか、楽しいのだけれど落ちないように必死になって飛んでいる人とか。 余談ですが、子どもの頃は飛ぶ夢とか、落ちる夢をよく見ましたね、あと追いかけられる夢とか。最近は全然見ないですけど。 |
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「では、グループ分けをしますが、今回は、今まであまり同じグループになっていない人同士でグループを作りましょう」 |
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こちらのチーム「夢ひとり」。 何せ、今まで一緒になっていないという事でチーム分けしたので、チーム名を考えるのも大変です。私を含め3人が空を飛んでいる夢を描いたのですが、一人宇佐美は「手のりカッパ3匹を駅のホームで落としてしまって、見つからなくなって茫然としている」という奇想天外な夢です。「手のりカッパ」って何?! とても困ったのですが、みんな、夢の中に自分一人しか出てこないという事に気づき、この名前にしました。駅のホームにいるのに自分一人というのも分かりませんが(^_^;)。 |
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それぞれが模造紙に自分のイメージする言葉を書いていきます。 | 拡大してみました。いろんな言葉が書かれています。 |
そして、共通する言葉を線で結んでいき、それに合わせて、気になる言葉を書き出していきます。 | 大分整理されてきました。物語は、日常から離れて冒険にでる。目的は『手のりカッパを探す』です。やはり手カッパが頭から離れませんでした(^_^;) |
こちらのチーム「木のまわり」です。 いろいろ相談していたようですが、内容は分かりません(^_^;)。その後、話が煮詰まって気分転換をするためか、稽古するためなのかは分かりませんが、楽屋部屋の方へ移動していました。 |
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「アフォーダンスという言葉があるのですが。心理学者のギブソンがつくった言葉です。afford(〜を与える)という動詞から来てるんですが、生物が進化するとき、環境の可能性をしめす言葉です。例えば、椅子がある。その椅子の座り方はひとつです。つまり、椅子が人に対して座り方をアフォードしている、という事です」 面白い考え方です。インターネットで調べるとこんな例も出ていました。 > 例えば、1枚の紙がある。これは、破れるだろうか?紙は普通、破ることをアフォードしていると言える。しかし、ダンボールだったらどうだろうか。よっぽど力に自信がある者でない限り、破るということをアフォードしていないのである。 「自分がはっきり意識していないが、ひかれるもの。そこから何か出てこないか、気づきがないかという事です。ここに芸術の可能性があると思います」 |
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さて、我々のグループ。完全に行き詰まりました。大体の物語は出来たものの、それをどう具体化していくか。夢ひとりチームなので、登場人物をひとりにして、場面毎に他の人たちで草原や森の中などを表現するようにしたらどうだろうなど、意見は出るのですが今ひとつピンと来ません。そこに杉山さんの一言、「その冒険をそのまま、話にしない方がいいです。例えば、旅行代理店でカッパ探検ツアーの企画をみんなで話し合っているとか。そちらの方がイメージがふくらみます」おお、そうか!またまた目からウロコです。そこでまた話し合い、何とかまとまったところで実際に練習です。結局、時間がなく十分に練習できませんでした。状況設定は出来たので、話すことを大まかに決め、あとアドリブで勝負することに(^_^;)。では、我々のチーム「夢ひとり」から発表です。 |
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舞台は、例の舞台奥の天井裏スペースを使いました。片寄と金田がそこにのぼり、梁に板を渡し、手前の柱に金田、奥の柱に片寄、それぞれが柱に耳をつけているところから。私がタイトルを言って始まりです。 文字にすると面白さが伝わりませんね(^_^;)。杉山さんは絶賛してくれました。「これは成功です。面白かったです。手のりカッパが何か分からないところが、またいいですね。手のりカッパをどんなものか説明しなかったところが良かったんですね。最後の所も、一度見えなくなってから、また現れるまでの時間が、どうなるんだろうと想像力をかき立てられました。良かったです。はい、次のチームはハードルが高くなりましたよ」 |
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では、「木のまわり」チームです。タイトルは「宇宙(そら)へ」。 中央に毛布が敷いてあります。4人の女性が一列に並んで、いかにも気だるそうに入ってきます。ここでもう笑いがでました。そして、4人が座ると、夢の話や子どもの頃の話を一人ずつ始めます。これは、村上さんが描いた「おもちゃんこ」のイメージです。初めのうちは、みんなボソボソと素のしゃべり方で、猫のぬいぐるみを順々に回しながら、話をしています。段々と話に興じてくると、順番を無視して話すようになります。そして、ちょうど坪井が話しているときに、村上さんがぬいぐるみを取り上げました。思わずムッとなる坪井の表情がとてもリアルで笑えました。そこからぬいぐるみの奪い合いになり、坪井がぬいぐるみを投げるのをキッカケに、誰かが「あっ!」と叫びます。 |
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すると4人が腰を浮かし、下を見ます。「私たち、飛んでる」。この瞬間が素晴らしかったです。観ている側は、本当に浮かび上がったように見えました。そして、4人の、飛んでいることへの反応は様々です。写真手前の2人の表情がよく見えたのですが、村上さんは楽しそうに上を見上げ、「きれいな星空!」と目を輝かせています。しかし、隣の杉本さんは下を見て、やや不安そうな面持ちです。この辺りも面白かったです。この後、さめた調子に戻って、「あーあ、面白かった」と言いながら、4人はもと来たところへ戻っていきました。毛布を引きずりながら(^^)。 これもかなり面白かったです。飛んでいる場面など、まさに演劇ならではの表現方法だったと杉山さん、これまた絶賛です。この話がどのように作られたのか、坪井さんのレポートを次にのせておきます。 |
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はじめは、真面目に“おもちゃんこ”をしている大人をやろうとしていたのですが、杉山さんから「演じているようにしか見えないので、どこか素の部分を出したほうがいいのでは?」とアドバイスがありました。その後もしばらく“おもちゃんこ”にこだわって稽古をしていたのですが、やっぱりうまくいかない。 またまた、杉山さん登場「出だしは、普通に大人で始めたらどうだろう?」ふむふむ・・・・ |
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その後、なんでこのゴザに私たちは集まるのだろうと考える。設定としては、「入院中の患者4人が内緒で飼っている猫のもとに集まり、たわいの無い話をする。その後は私たちの夢の世界“宇宙へ”」にまとまる。そういえば最初、猫は人がやった方が良いのでは?とも言ってくれましたが、対処できずぬいぐるみを使用しました。 「ラストに誰かがゴザを持って行っちゃたりしてもいいよね」とのアドバイスもありました。ってみんな杉山さんに動かされたって事かな? |
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ということで、2チームの発表が終わりました。それぞれのパフォーマンスも良かったし、とても充実した時間を過ごせました。で、杉山さんからのまとめです。 |