山内健司(青年団)のワークショップ in 帯広

● ワークショップレポート 1日目
● ワークショップレポート 2日目
● 参加者感想文集     こちらから (8/11更新) 

 ワークショップレポート 1日目

記 富永浩至  

2006年7月22日(土)午後8時から 大通茶館にて

参加者は演研団員8名+柏葉高校の五十嵐先生の9名。まず、大通茶館のテーブルや椅子を片づけ、床にビニールテープで1.5m四方に区切りをつけ、正方形のスペースを3つ作ります。そして参加者を3人ずつ3つのグループに分け、それぞれの空間に集めます。この空間は「あなざーわーくす」のわたなべなおこさんがよくワークショップで使っているそうで、最小の舞台サイズだそうです。つまり、わたなべさんが寝転がるとすぐ測ることができ、その長さ(身長150cm)が1わたなべだそうです(^^)。

準備が整うと、講師の山内さんからの説明です。おもむろに会議などを録音する時に使う小型のカセットテープレコーダを取り出し、アシスタントとして前に出てもらった人とお喋りを始めます。
●そのお喋りをテープに録音します。
●録音したもの一部分を取り出し、そこを何度も聴き、正確に台本(原稿用紙一枚分くらい)におこしていきます。
●台本が出来たら、今度はその一つ一つのセリフを細かく分析していきます。ここで山内さんは「音の形を表現する」と言っていました。
●「高い、低い」「強い、弱い」「早い、遅い」「大きい、小さい」「伸びる、言い切る」「明るい、暗い」などなど、何度も何度も聞き返し、一言一言に対して書き込んでいきます。
●そうして出来上がったものを、演じてみる。

説明が終わると早速、作業に取りかかります。3人1グループなので、2人が話し、残った1人がテープレコーダを向けて会話を録音します。録音の仕方にもちょっとしたコツがあって、録音する人は並んでいる2人の後ろに立ち、後ろから手を伸ばし、マイク部分を下に向けて録音します。そうすると、他の音が比較的入らずにきれいに録音できるということでした。また録音している人は、話している2人がどのような状態なのかも観察していきます。

「いきなり話せと言っても話題がないでしょう」と、山内さんは東南アジア(「青年団」の「東京ノート」ツアーで行ってきたばかり)で買ってきたという色紙を取り出し、各グループに一色ずつ渡し、「色紙を見ながら、その色にまつわる思い出を話して下さい」ということで始まりました。我々のグループは、神山、金田、私(富永)の3人、ジャンケンで私が録音の係に決まり、2人が「紫」にまつわる思い出を話します。

2分間の時間をもらい、話し出しますが「紫」という色が難しいのか、2人の話は弾みません(^_^;)。それでも「夜の海」やら「なすび」の話をして、終了。早速台本におこしていきます。(下の写真参照。汚い字ですいません)

この作業をやっていると、無意識的に発している「あ」とか「ふ」とか、または文字に出来ないような音を、普段のお喋りの中で結構使っているんだなということに気づきます。台本をおこしたあとは、再び何度もテープを聞き、「音の形」を調べていきます。

そして、出来た台本の読み合わせ。自分で自分の役を演じるわけです。ここで山内さんからの注意。「もの真似ではないので注意しましょう」。ホワイトボードに「反応」「フォーカス」「目的」と書きます。「相手のどの言葉に「反応」したかを確認しましょう。その言葉によって自分の話す言葉をさぐる時間があります。そして、その言葉が見つかります。「フォーカス」、ちょうどカメラの焦点が合うように、その言葉が出てくる。そこを発見しましょう。この「反応」「フォーカス」の繰り返しが「運動」になっていきます」。ここで山内さんは、「引き金が引かれる」という表現を使ってました。「どの言葉によって「引き金が引かれ」て、次の自分の言葉が出たのか。そこを探って下さい。あと、「理由」、「〜だから」はダメです。「悲しかったから」。それはダメ。何かそうする「目的」があったはずです。「〜のため」を考えて下さい。その言葉は何のために発せられたのかを考えて下さい」。

2人の読みを聞いていて、録音していた人はダメ出しをしていくのだけれど、ここでも山内さんからの注意。「その言い方はダメとか、相手を否定するようなことは言わないで下さい。こんな感じだったとか、こういうふうに聞こえたと言うようなアドバイスをして下さい」。そして何度か読み合わせをしたあとに、発表。その時の自分がどんな状態だったか、どんな気持ちでいたのかなど、色々と思い出しながらそれぞれが発表しました。自分が話した言葉なのに、こうやって台本にしてみるとなかなかうまく話せません。面白いです。

各グループの発表が終わったら、今度は録音していた人がどちらか一方の人と交代して発表です。「何度も言いますが、もの真似ではありません。どこが言いにくいのかをよく考えてください。自分ならこうは言わないなど、違いを発見して下さい。そこが大切です」。各グループとも再び練習したあとに発表。終了後、各グループに山内さんが「どうでしたか?うまくできましたか?どんなところやりづらかったですか?そしてそれを克服するのにどんな工夫をしましたか?」などと聞いていきます。

私達のグループの台本は、
 金田 あとは?
 神山 あと?
 金田 あは(笑い)
 神山 あとは、ナスビとか
 金田 ああ
 神山 えへ(笑い)
 金田 ナスビね
 神山 ナスビ、ナスビの素揚げ、うまいすよね。
 金田 ああ、そう(笑い)
 神山 うふはははは
 金田 はぁ、素揚げなんだぁ
 神山 ふ、素揚げ、へへ
 金田 へぇー、あとなんだろう?
 神山 紫って、むずいっすね
 金田 むずかしい
 神山 へへ
 金田 で、何でおばあちゃんの思い出なの?
で、私は「神山」の役をやったのですが、ぼそっと言った「ナスビ」という自分の言葉で、引き金が引かれて、「ナスビの素揚げ、うまいっすよね」という言葉が出た。だから「ナスビ」と言ったあと「えへ」という笑いが入っている。これはこれから自分の言うことに笑ったんだと思う。などと言うことを話し合い、それを再現できるように発表しました。また、2人とも何の話をしようかということを頭の中で考えながら話していたので、その辺りにも注意しながらやりました。

こういうワークショップをやっていると、「山内さんは普段芝居をやる時にも、セリフをこんなに細かく分析していくのですか?」という質問をよくされるそうですが、原稿用紙一枚だからやれるのであって、普段はこんな事はしないそうです。ただ、全くというわけではなく、場合に応じて細かくやっていくこともあるとか。なかなか役者の作業も奥が深いなぁと思ったわけでした。え、私も役者やります。少しは考えていますよ(^_^;)。ただ自分のやっている作業を、きちっと言葉で説明できなければいけないと思いました。はい。

午後8時から始まったワークショップも、気が付くと10時半を過ぎたところ。質問などはこのあとの懇親会の中でということで、素早く大通茶館の椅子やテーブルなどを並べ宴会場へと変身、片寄さんも予め用意しておいた料理などを温めたりと喫茶店のマスターに早変わり。明日もあるということで、盛り上がった宴会も午前1時頃終了。明日はところを文化ホールのリハーサル室に代えて、午前10時スタートです。「明日はフィールドワークです。外に出て、インタビューしましょう」の言葉にちょっと気が重くなる。「え、知らない人に話しかけるの?」。さてどうなることやら・・・。

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 ワークショップレポート 2日目

2006年7月23日(日)午後10時から 帯広市民文化ホール・リハーサル室にて

昨夜、ちょっと具合の悪そうだった神山が発熱でダウン。代わりといっては何ですが、昨日はいなかった村上さんが参加です。「朝一なので、ちょっと他己紹介をやってみましょう」と言って、2人ずつの組になり(あ、一つのグループだけ3人になりました)、B4のコピー用紙が配られました。「その紙に自分の家、昔住んでいた家とか思い出に残っている家の地図を描いて下さい。描き終わったら、お互い相手に色々と質問をして下さい。出来れば、今だから言える秘密の話を聞き出せるといいですね」。

短い時間の中で色々と聞き出し、その後は聞いたことをさも自分のことのように、地図をみんなに見せながらそれぞれが他己紹介していきます。下の写真は片寄さんが書いた地図。「子供の頃は、自宅(斜線部分)から近くの銭湯まで、スポンポンで父に負ぶさり丹前にくるまって行ってました」と五十嵐先生が他己紹介、笑いを誘っていました。「これは自分では覚えてはいないのですが、2歳くらいの時に、家の前の側溝にはまって郵便局の方まで流されたことがあります」というエピソードも(^_^;)。

他己紹介が終わったら、いよいよフィールドワークです。「いきなりインタビューといってもなかなか成功しないと思います。午前中の時間を使って、上手くいくように作戦会議をしましょう。まず、今日一日一緒に作業するペアを決めましょう」。ということで、再び2人ペア(今度は男女になるように)のチームを4つ作り、そのチームを2つグループに振り分けます。そしてこれから行うインタビューのタイトルを決めます。この辺りは駅の南側なので単純に「駅南物語」。「このインタビュー集「駅南物語」を最後に発表してもらいます。では、まず2つのグループで、何をインタビューをするのかを決めて下さい」。片寄・上村ペアと金田・五十嵐ペアのグループは話し合いの結果「夏の休日の過ごし方」。もう一つのグループ、富永・鈴木ペアと坪井・村上・宇佐美のチームは、図書館の前でインタビューすることにして、「最近読んで面白かった本について」に決めました。

インタビューをする内容が決まったら、次はどのように話しかけるかです。再びみんな集まって知恵を出し合います。山内さんの指示で、実際にシミュレーションしてみます。そして、インタビューされた人は、「今のは早口すぎたので、もっとゆっくり話した方がいい」とか「時間がどの位かかるか気になるので、1,2分と断った方がいい」など、意見を言っていきます。何度も繰り返し、おおよそ次のような話しかけ方が、いいのではということになりました。

「すみません。市内の演劇サークルのものです。今いろいろな人の話し言葉を集めているのですが、1,2分インタビューさせていただけないでしょうか?」

録音するというは抵抗があるだろうから、話し言葉を集めるという言い方になりました。ほぼ作戦も決まり、いよいよ外へ出かけます。「もうすぐ12時になるので、昼食時間も含め、午後1時15分には戻ってきて下さい」。

下の写真、左は会場の文化ホール。ロビーにいた人に話しかけたペアもいました。
右の写真は帯広駅南口。この辺りでもインタビューしました。

左下の写真は、手前に十勝プラザ、奥に長崎屋、そしてその奥が(見えませんが)文化ホールです。
右下の写真は十勝プラザから道路を挟んで、更に手前にある新しくできた図書館です。我々のチームは、図書館から出てくる人に、インタビューです。

私と鈴木ペアは、図書館の駐車場に行き、そこで挑戦。まずは鈴木が観察者で、私がインタビューをします。観察者はあとで、台本をおこした時にインタビューを受けた人の役をやるので、その時の様子を細かく観察する必要があります。図書館から出て来た2人連れの中年の女性に果敢にアタック。「すみません」と近づいていき、了解を得ようとするが、「どういうことでしょう?」と逆に尋ねられる。演劇のワークショップでいろいろとお芝居のための練習に使うことなどを必死で説明し、何とか了解してもらいインタビュー。しかし、了解を得られるまでの過程の方が生き生きとしたお喋りになっていて、こっちを録音したかった!という感じでした。了解をもらう前にいろいろと話をしてしまったので、インタビューはその内容をもう一度なぞるような感じになってしまいました。しかし、最初から成功したことに気をよくし、次は鈴木がインタビュアーになり、男性に話しかけます。ところが、これがなかなか難しく、ことごとく断られます。何とか4回目で、成功。淡々としたしゃべり方の男性が、最近読んだ「昭和流行史」という本のことを話してくれました。思ったよりも早く済んだので、長崎屋でゆっくりと昼食をとり、1時には文化ホールへ。あとからいろいろと分析したのですが、男性より女性の方が成功率が高かったようです。また場所がきわめて重要で、文化ホールのロービーだと安心するのか成功率が高く、図書館、長崎屋店内、街頭の順に成功率が低くなったようです。その場所が安全かどうかが、ポイントのようです。

1時15分に再び集合して、午後の部開始です。昨日やった要領で、録ってきたインタビューの一部を台本におこし、音の形を調べていきます。ここで山内さんがホワイトボードに「編集」「構成」と書きます。「録音したものを一通り聞き、台本におこす部分を決めて下さい。それをグループに持ち寄り、一つの作品にしてもらいます。その時に「始まり」と「終わり」が分かるように、構成して下さい」。

ここで各グループが集まり作戦会議。私たちのグループは「駅南物語〜新図書館編」というタイトルで、
まず富永・鈴木ペア〜「通信制の大学に行っているので、図書館はよく利用します」と話してくれた中年女性。
次は、村上・宇佐美ペア〜「帯広には最近来たばかり」というサラリーマンの男性。
坪井・村上ペア〜図書館に来ていた小学生くらいの女の子。
宇佐美・坪井ペア〜中学生の女の子。見知らぬ男性に話しかけられビビリながらも答えてくれました。
鈴木・富永ペア〜「昭和流行史」という本の話をしてくれた中年男性。
の順にやることに決める。そこで困ったのが、「始まり」と「終わり」。さんざん悩んだあげく「図書館のドアが開くと鳴る、ピンコーンという音が耳について離れない」と言った坪井の一言をヒントに、みんなが横一列に並びドアの役をし、「ピンコーン」という音で横にスライドし、後ろから人が出て来てインタビューをする、それを交代で回していき、最後は横一列に並び礼をするという何とも芸のない構成で落ち着きました(^_^;)。

これだけ決まればあとは練習のみです。左下の写真、坪井・村上ペア、坪井が小学生に話しかけた時の再現です。右下の写真は、もう一つのグループ。2つの会話が同時進行するところをつくり、「青年団」ぽい感じです。

そして最後に発表。最初は我々から。演じていたので、どんな感じに見えたかは分かりませんが、楽しくできました。自分のことで言えば、見られる緊張感がある中でやっているので、インタビューを受けた人のゆったりした感じを出すのが難しかったです。

もう1グループの発表は、右上の写真のように椅子を4脚置き、座りながらの発表でした。お見合いパーティーに見立てて、初めてあった人同士が「夏の休日の過ごし方」を尋ねるという感じで進めていました。その辺の設定が少々分かりにくかったですが、話の内容がバラエティーに富んでいて面白かったです。インタビューする人は劇団員なのでよく知っているが、されている人は知らない人、実際現場ではどのようなだったかを想像する楽しさもありました。

発表が終わったあとは、山内さんが1人1人にどうでしたか?と感想を尋ね、また山内さんの方からも1つ1つの発表に対して感想を述べていただきました。

そして最後に下の2枚のプリント(クリックすると拡大します)を配り、ワークショップのまとめとして話をしてくれました。左側は音を形にする時の方法を、右側は、山内さんが今俳優として考えていることを書いたものです。

2日間のワークショップもあっという間に過ぎ、とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。今まで演出家のやるワークショップはずいぶん受けましたが、俳優が俳優のために考えたオリジナルワークショップを受けるのは初めてでした。山内さんは「スポーツなどとは違い、話すということは誰でも出来るので、俳優がセリフを話すことも簡単だと思われている。俳優がセリフを話す時に、どのような作業を行っているか、もしくはどのような作業が必要か、ということをスポーツ選手の訓練と同じように、もう少しシステマティックに考えたいと思った」と話されていました。「昔はこのようなことは演出家がやることで、俳優にはあまり関係ないと思っていた。しかし、実際にやってみると自分の役作りにもとてもプラスになる」とも話していました。

午後5時に会場をあとにし、食事をしながら感想などを話し合いました。みんなそれぞれ刺激を受けたらしく、とてもいい顔をしていました。そして、山内さんに「時間が出来たら、また来て下さい」と何度もお願いしていました。あとで分かったことですが、その日の夜の最終便が欠航して、山内さんは次の日の午後の便で東京へ戻ったそうです。これに懲りずに、また帯広に来て下さいね。

終わり 

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 参加者感想文集 

   山内さんのワークショップの感想  坪井志展

 話し言葉を、せりふの状態に置き換える。せりふを自分の話し言葉にする。役に付いた時に、セリフを自分の話し言葉にする行為は、自然に誰もがやっていると思う。自分たちの言葉を用いて反対の作業をする事により、言葉や身体(心)の反応を明確に感じることが出来た。物まねではなく、相手の気持ちに乗る。言葉の理解だけでは書き取った文字が言えなかった。
 なんでもない会話を録音し、くり返し聞いているうちに、だんだん楽しくなってきた。人って面白い!生きてるって楽しい!何気無い事がこんなに面白いなんて・・・不思議な気がした。
 私は毎日、患者さんに薬の説明をし、相手の体や心の状態を尋ねたりもするが、会話がなかなか進まない事も多々ある。
 外に出かけてみて自分がインタビューをする立場になり、聞いている方が主導権を持っているわけではないのだなあと思った。くり返し録音した会話を聞き、再現することにより、相手の心の有り様をより深く想像した。
芝居のワークショップだったけど、日々の仕事にも役立っている気がした。
  あっという間の二日間でした。終わった後にどっと疲れが・・・普段使わないところをいっぱい使ったのだと思います。頭?

 

   ワークショップに参加して  五十嵐英実

 今回のワークショップは、非常に示唆に富んだもので、とても刺激的でした。
 まず、自分が喋った言葉を録音し、それを聴き返す作業をすることで、普段無意識に喋っていても、音の高低とか速度が、実にバリエーションに富んでいるということが分かりました。
  高校の演劇部の活動では、台詞が棒読みになってしまう役者に対して、演出が「もっと抑揚をつけて」と言っても、うまく改善されないことがよくあります。本人は、一生懸命抑揚をつけているつもりでも、その幅が非常に小さいのです。声を発する側と聴く側には、捉え方にギャップがあるのだなと感じてはいたのですが、そういう場合、役者に普段自分の喋っている声を聴かせると、何かきっかけがつかめるのではないかと思いました。
  さらに、反応とフォーカスを意識するという試みでは、辞書上の意味を持つ言葉でも実際には無意味な音として発せられている言葉があることを改めて認識しました。実際、録音を聴き返してみると、まったく意味もない言葉を吐いていることがけっこうありました。そして、その音は非常に平坦であること、逆にフォーカスが合ったときには声の高低や速度に大きな変化が起こるなどの発見もありました。
  これらを意識して再現しようとすると、わざとらしくなってしまうのですが、時には意識的に発話してみることで、逆に意識の流れをつかむヒントが得られることもあると思いました。
 インタビューのための作戦会議で、相手にプレッシャーを与えない距離感や目線を考えることもいろいろと発見がありました。検証していく過程で、自分の生理の動きを意識することに面白さを感じました。また、一日目に、発せられる言葉には、意味とは関係なく目的があることを話していただきましたが、インタビューの相手に心を開いてもらうために、「こんにちは」と「すみません」のどちらがいいか話し合ったことなどは、その実例だったと思います。
 今回のワークショップでは、自分の身体の中と頭の中の動きを客観視する経験をしましたが、それは今後の活動に大いに活かせるものとなりました。ありがとうございました。

 

 ワークショップ感想  金田恵美

 普段何気無く話している言葉に、こんなにこだわったのは初めてで、凄く新鮮でした。自分が発した言葉なのに、再現するのが難しかったり、次の言葉を探している時間が自分で思っている以上に長かったり。知らないうちに妙な相槌ばかり打ってたり。一度発した物を振り返ってみる事に楽しさを感じました。“言葉に興味を持つ”っていう言葉がすーっと自分の中に入ってきて、話すこと聞くことのコツみたいなものを教えてもらった気がします。本当にありがとうございました。

 

 ワークショップ感想  片寄晴則

 演出をしている私は(役者を演らないので)大抵のワークショップでは傍らで見学している事が多いのですが、今回は「観ているだけではつまらないですよ、演ってみなければわかりませんよ」との声に押されて実践に参加した訳です。そして・・・・そのとおりでした。
 「しゃべり言葉を調べる」という今回の内容は、普段やり過ごしている自分達の会話を本当に微細に検証しながらそれを再現していくもので、とても興味深いものでした。演出するうえで、役者が無防備に台詞をはくことがありそれが気になっていましたので、「どの言葉に反応し、フォーカスしていくのか」という検証は本当に参考しなりました。そして、会話の中のどの言葉に反応しているのか、その言葉を捜している時間と見つけた時間を自分で細かく認知していく作業は、うなずきの連続でした。
 平田さんの作品に取り組む中で「台詞は言うものではなく、聞くものだ」と役者に言い続け「それがきちんと出来たら、自然に次の言葉が出て来るはずだ」と言ってきた私にとって、そのとおりの事がワークショップで検証できたことが収穫でした。そして、そういった状態(相手の言葉を聞ける)にいるためには身体をナチュラルに置かなければならないことも改めて確認できました。
 発表の場では、演出の性でしょうか、やはり分析が先に立ってナチュラルに再現・体現できない「役者ではない、役者はできない自分」を再確認することとなりました。そして「役者って大変な作業だなあ」と痛感した次第です。
 改めて自分と向き合い確認・検証の2日間は楽しかった!山内さん有り難うございました!

 

 ワークショップ感想  宇佐美亮

 すごいワークショップでした。
 他では、行いや感じ方を半ば強制されることが多く、いつも萎縮してしまうことが多いのですが、今回は山内さんの見事な進行と許容によって、リラックスして参加することができました。日ごろなかなかないことなので、こんな状態でいていいのかという自分自身に驚きました。そして生身でいる自分の不甲斐なさと無力さを改めて感じました。
 本当は、自身の体からは詩の一片がこぼれて落ちて欲しいのにどうしても雑多なつまらないものでできているのですね。残念。

 

 ワークショップ感想  神山喜仁

 今回のワークショップは風邪を引きながらの参加となり一日しか体験できなかったことがものすごく心残りです。意見交換の時にもっと早くに帰って体を休ませとけばと後悔しております。
 今回の収穫は今まで先輩方に教わって自分なりの感覚でやろうとしていたことが間違いではなかったんだとわかったことです。しかも、今まで感覚で体現しようとしていたことをこと細かく分解して教えてもらったことがなによりの収穫でした。教わったことを自分の身に付くように意識して日々の稽古を続けていこうと思います。ありがとうございました。

 

 ワークショップ感想  鈴木えりか

 1日目は、「何をするんだろう?」とワクワクして受けました。五十嵐先生と坪井さんとのグループで、坪井さんが録音係をして先生と二人で話したのですが、自分って「こんなふうにしゃべるの?」と思ったのが第一印象でした。何だか、今まで知らなかった自分を知れた気がします。
 次に五十嵐先生を私が、私を坪井さんがやってみると、自分をやるより色んなことを考えながら話していて、話している内容も知らないことを話していたりしてすごく難しかったです。でも1日目の最後で、ウロコ団子がわからなくて想像もつかなかったという事を言うと、山内さんがそういう事は役者をやってて沢山あると言っていて、すっとその言葉が入ってきました。WSより芝居をやる方がわからないことだらけで、だからそこを埋めなきゃいけないんだと感じました。
 2日目は「知らない人と話す」ということで気弱な私は「出来るだろうか?」と内心、すごく不安でそれが一番の山でした。断られながらも特徴のある人と話せてよかったです。実際にテープで起こしてみんなの前でやったことは、坪井さんも言ってたけど、自分で見たり聞いたりして自分で体験したことだからなのか芝居の役作りをする時より「どうやって作ったらいいのだろう?」という意識をあまり持たず出来ました。テープを起こして聞いたことと自分で見たりしたことを頼りにやったことは今思うと不思議な感覚です。
 みんなの前でやったことは真似じゃなく、忠実に出来たかはどうかは自信がないけど、でもとにかくあの2日間は楽しかったです。うまく言えないけれど、山内さんの俳優としての取り組み方とか、あり方が2日間関われて見えた気がします。ありがとうございました。

 

 「仕事関係でもワークショップを企画していたので、団員より1日多くワークショップを受けた私はとても得をした!」   上村裕子

 演研ワークショップの1日目と同じ内容のものを前日にも経験した訳ですが、参加メンバーの空気感が違う。相手が違う。だから、当たり前だけれどそこにうまれるものが違う!これは非常に面白い経験でした。そして、仕事の顔と演研での顔を使い分けている自分を改めて感じたひとときでもありました。日頃、言葉の深さや難しさを痛感していますが、山内さんのワークショップは「言葉に対する愛おしさ」を実感させてくれました。
 仕事の上では,相手の言葉を理解するために・・・とか,相手の言葉を引き出すために・・・を意識して囚われてしまうことが多々あります。相手の気持ちがこの言葉になって出ていたのか・・・という発見と実感はとても面白かったです。
 相手を緊張させない山内さんの雰囲気は、仕事関係の方達にも大好評で『ああ,このあと「青年団」の芝居があったら、もっとチケット売れるのに・・・』とさえ思ってしまいました。(話がそれました。)
 演研メンバーの中で、チームをつくり「ああでもない、こうでもない」と話し合って作り上げていく課程もとても面白かったです。『本当は芝居もこうやって作りたいんだよな』と代表がつぶやく一コマもありました。話している言葉にも、言葉の裏側を探る作業にも個人のカラーが出ていて、言葉も人間も面白い!
 ちなみに、私が書いた地図は幼児レベルで、恥ずかしかったです。

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