第19回公演
今は昔、栄養映画館
作・竹内銃一郎
演出・片寄晴則

スタッフ
照明 武田雅子  効果 片寄晴則  衣裳 村上祐子  舞台監督 片寄晴則  制作 上村裕子

キャスト
監督を自称する男1・富永浩至  助監督と呼ばれる男2・上塚俊介

とき
1990年10月27日(土)開演午後6時半 午後9時  28日(日)開演午後3時 午後6時半
11月2日(金)開演午後9時  3日(土)開演午後3時 午後6時半  4日(日)開演午後3時 午後6時半
ところ
演研芝居小屋(帯広市西2条南17丁目)
前売り1000円  当日1200円  (コーヒー券付き)

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●上演パンフレットより

 

上演にあたって

片寄 晴則
 ─念願の芝居小屋を設け、その柿落し公演を終えると、立て続けに三本の舞台をプロデュ−ス─
 今年の初めから走り続けた我が身を振り返って、ふと気がついてみると、集団創立から十五年、今の商売を始めてから十年の歳月が流れ、小生も四十歳を過ぎてしまった。長い活動の間には、集団を維持できるかどうか(主に団員数の問題なのだが・・・)の危機が何度かあったような気がする。しかし、その度にちょっとしたカンフル剤になるような出来事がもち上がり、精神的な若さを取り戻しては、こうして続けてこられた訳である。今のカンフル剤はこの芝居小屋。自前の劇場をいかに充実させて維持していくか、それが自分の支えとなっている。そして周囲の協力と理解とで、我武者羅に我がままにこうして続けさせてもらっている我が身の幸福をかみしめている毎日である。
 さて久し振りに、汗とツバのほとばしる男二人の芝居です。「トイレはこちら」のロングランで、少し味の出かけてきた富永浩至と、このところスタッフが続いていた上塚俊介が、ガップリ四つに組めるかどうか。互いに信頼し合って舞台に存在する姿が、そのまま、監督と助監督との愛と友情と信頼にオ−バ−ラップするはずである。ふたりの役者にとっても、我々にとっても、これから先を考えるうえで楽しみな作品なのだが・・・。上手い下手は関係なく、どれだけ良い舞台にできるのか、連日深夜の稽古が続いています。「花のさかり・・・」のつぶやきで、団友の小林寿子が書いた一節、『若い熱気につつまれる稽古場で、ふと胸が熱くなる。芝居にとりつかれたこの魂の群れは、どこに行こうと、時が経とうと、ふり返るとドアの所に花のさかりの日々が立っていて、心の花束を抱きしめながら、歩いて行ける魂なのだろう。』
本当に、そんな我々で居続けたいと思いつつ・・・。本日も又、ようこそお越し下さいました。そして、ありがとうござ います。


つ ぶ や き

富永 浩至
 この芝居をやることになったとき、高校生活最後の学校祭のことが頭に浮かんできた。当時生物部に籍を置いていた私は、演劇部OBの連中に「ちょい役だから出ないか。」と甘い言葉で誘われた。「3年生だからクラブは引退した。しかし、もう一度芝居をやりたい。人がいないので出てくれ。」というのだ。頼まれるといやと言えずに参加したが、全てのことが初体験の私は、しだいにその刺激的な世界に引き込まれていた。場所もいわゆる舞台ではなく、教室に照明器具を持ち込んだだけの小さな劇場、というより見せ物小屋という感じだった。
  その同じ場所を使って、映画同好会も自主制作の映画を上映するという。彼らは、それこそ少ない小遣いを出し合い機材を買い込み、日曜日ごとに撮影に出かける。撮ったフイルムを編集し、気に食わなければ撮り直しする、というように金と時間をかけて気の長い作業をやっていたのだった。自分たちの公演が終わった後すぐに観た彼らの映画は、若者の青臭さと熱ぽさがあった。(余談だが、監督をしていた奴は映画を撮るんだといって東京に出て行った。その後音信不通 だったが、先日ビデオ屋に行ったとき、アダルトビデオのコ−ナ−にそいつの撮った作品があったのには驚いた!)
  この芝居の稽古をしていると、あの頃の自分たちの姿がオバ−ラップしてくる。あの熱にうなされたような映画、初めて舞台に立った緊張と興奮、お祭り騒ぎに浮かれている友人達の顔などなど。色々なことが、ない交ぜになって思い出されるのだ。「栄耀栄華」という言葉がぴったりくるような、そんな時期だったのかも知れない。

上村 裕子
 柿落し公演を打って、半年が過ぎた。私たちが産み出した芝居小屋も、乳児でいえば離乳食になり、泣いたり笑ったり本当に、そんな我々で居続けたいと思い 大忙しの時期(?)であろうか。維持していく団員と、見守ってくれる団友と、そして支えて下さる御客様といった幾重もの輪の中でこれからも成長していくのだろう。イヤ、させていかなくては・・・。そんなことをつらつら考えている。
 「今度の芝居、男が二人?どんな芝居?」そう聞かれる度、「ん−。男の友情であり、愛情であるってとこかな・・・まあ観に来てよ!」となかば半強制的(?)に、誘ってしまったのは私です。
 立原道造の詩に
 ─夢みたものは、一つの幸福ねがったものは、一つの愛─
というフレ−ズあり、私はとりわけ気に入っている。しかし、幸福の形も愛の形も、人それぞれで本当にいろいろあるものだと思う。
  あと5分・・もう5分・・5分はきっとくる・・きっとこない・・
  現実か?虚像か?貴方の心には何が残るでしょう?

武田 雅子
 自分が下手な役者と知りながら、六年前、演研の舞台に立つことを夢見て入団した。なのに、ちょうど昨年の今頃、役者としての能力がまるでない事をいやという程知らされ、自らスタッフ宣言をしたのだった。
  それまで私は、「芝居をする事、イコ−ル役者として舞台に立つ事。」という持論を持っていた。しかし、それが完全に崩れたのだった。
  けれども私はまだ芝居を続けている。何故・・・?
  単純にいってしまえば、好きだから。人それぞれ適正というものが有ると解ったから。そして芝居は役者だけ、スタッフ、だけでは成立せず、双方のバランスがとれていないと成り立たないと理解できるようになったから。
  三年前に畜大の演劇アンサンブルがこの作品を上演した際はスタッフとして関わっていながら、お客様気分がぬ けず緊張感のないまま終わってしまった。その反省をふまえて、新たな気持ちで光りを入れたいと思う。舞台で動き回る二人の役者がキラキラ輝くそんな瞬間をお眼に掛けましょう。
本日お越しのお客様、あと五分で我々の昨日の記憶がよみがえり、そして芝居が始まります。どうぞお楽しみ下さい。本番。ヨ−イ、スタ−ト!

上塚 俊介
 今回、役者として「熱海殺人事件」に出演してから三年のブランクを経ての舞台である。そしてこの作品は、三年半前自分が畜大演劇アンサンブルに在籍していたときに演じたものでもある。
  少し前の事であるが、友達に「また芝居をやるのか。」と半ばあきれ顔で言われた。確かに、芝居をやってない時期もそれなりに楽しい日々を過ごしてきた。では、何故またやろうと思ったのか。それは、この作品がというよりここに登場する男達が好きであり、芝居を作っていくことが好きであり、そして何よりも、一緒に芝居を作っている人達が好きだからだ。
  この三年の間に、いろいろな事を見聞きし、いろんな場所へ行き、いろんな人に出会い、そして悲しい別 れもあった。そういういろんな経験の中で、三年前に比べると幾分大人になったかもしれない。が、その分、悲しいことに夢を見ることも少なくなったような気がする。
  今回ご来場下さった皆様、ささやかな夢を見ていって下さい。
  さあ、あと五分で開演です。

 

 

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アンケートより

・あと五分という時間の設定の中で、これだけのセリフを作れるのは素晴らしい。終わりが良かった。日常生活の中には芝居ほどセリフがないと痛感した。(女性・42歳)

・このように少人数の芝居を見たのははじめてであります。これだけの強さがあるなんてほれこんでしまします。いっしょけんめいばんざい。(女性・18歳)

・はだかで、汗びっしょりの熱演に感動しました。(女性)

・なぜか私は、笑えませんでした。おもしろくないということではないのです。個人的な(ことばに対する、間などをふくめた)好みの問題でよう。(男性・45歳)

・ウイットに富んだセリフを言うには、力不足のような気がする。男1のほうは、もう少しメリハリが必要だと思う。(女性・28歳)

・2人しか出演してなかったがなかなかおもしろかった。パンツがきたない。(男性・26歳)

・今回、演研の公演を初めて見せていただきました。このような、本当にお客さんの息づかいを感じながらというのは、あるイミでは、演じる人にとっては怖いコトだと思います。(女性・19歳)

・熱が入っていて、迫力があった。(男性・25歳)

・この場所、みかけはかなりせまく感じるけど、実際公演がはじまってみるとそんなことを感じさせない、ということが驚いた。じっと見入ってしまったけど、何が自分でおもしろかったのかを、僕は知りたい。(男性・20歳)

・とみながさんですか、男1の、顔がいいです。かっこいいとか…というんでなく、いい表情します。男2の方もおもしろいキャラクタで、これからもたのしみにしています。(女性・25歳)

・エンディングがとても良かったです。自分が本当に来る予定だった客になったような気持ちになってしまいました。(女性・18歳)

・助監督を演じた方が、私個人としてはとても好きでした。二人の熱い演技が、男の愛と友情をほんわかとかもしだしていたように思います。一番ビックリしたのは電話のベルです。日頃からウソの無い芝居というのが自分の中にありましたが、その通 りの芝居だったように思います。又、この芝居小屋は、それだけで不思議な空間をつくっていたように思います。(女性・22歳)

 

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