ごあいさつ
片寄 晴則
永い間北芸の代表を勤めていらした北山樵兵氏による「審判」帯広公演を、私達が少々お手伝いすることで、釧路北芸と帯広演研との交流が始まりました。以後、お互いの公演を観る為に、港の街と平原の街を行き来すること七年。別
役実・竹内銃一郎・清水邦夫・青い鳥‥‥上演する作品群にも共通するものがありますが、何と言っても、小劇場としての自分達の空間にこだわり続けている姿勢が同じであり、挙げ句、構えた拠点の名も同じ「芝居小屋」とは不思議なものです。
最初は、多少遠慮がちに互いの芝居の感想を述べ合う程度の関係も、帯広畜大で芝居をし、私達とは親しい間柄だった大久保氏が転勤を機に北芸に参加することで、親密の度を増していった訳です。そしてそれは、先頃の北芸帯広公演の実現で一層深いものとなりなした。酒を酌み交わし、演劇論、集団のあり方、果
ては恋愛論に到るまで、熱く、時を忘れて語り合う中、釧路と帯広の距離は一気に縮まってしまい、勢いで今回の公演が決定したという次第です。
地域に根ざし、社会人として生活する中で芝居を続ける難しさは、どこの集団でも抱えている悩みでしょう。私達も又、団員数の不足、その資質・力量
を考えた時、演りたい作品は多いものの、脚本選択には苦労しています。そんな中で巡り逢ったのがこの「ラヴ・レタ−ズ」です。初めてのスタイル、まして、今までは勢いに任せて押しきる芝居が多かっただけに、しっとりとした大人の味をどこまで表現できるかは、ひとつの賭けでした。狙いどおりに仕上がったとは思ってもおりませんが、せめて心を込めて舞台に立つ気持ちだけは、誰にも負けないつもりです。本日の舞台から、そんな私達の姿勢を汲み取っていただけたら、何よりの幸せと思っております。
最後になりましたが、今公演実現に御助力下さいました「ジス・イズ」の小林さん、歩さん、そして北芸の仲間達に心よりのお礼申し上げます。今回を機に、皆様にとっても釧路と帯広との距離が、より近いものになってくれると幸いでございます。尚、御高覧の後厳しい批評をお寄せ下さい。
本日はお越し下さいまして、本当にありがとうございました。
つ ぶ や き
上村 裕子
以前から、もっと芝居に係る時間を多くもちたいと望んでいました。三月に仕事を辞め、慣れ親しんだ士幌町に別
れを告げ、四月から帯広市民となり、快適な毎日を送っています。手放したものは大きかったけれど、生活が変わり今まで見えなかったものも見えてきました。何よりも生活の拠点が一つになったことは、不器用な私にとって良かったようです。日々思うのは、年齢はどんどん上がるのに、自分がそれについていっていないこと。今回とてもステキな作品に出会い、大切につくろうと稽古を進めながらも、小さな自分が小さな役を作り上げてしまう。
新しい一歩を踏み出した貴重な作品です。人生の深み、重みも、まだ何も分かっていない私だけれど、背伸びせず、二十九才の今の自分にできるすべてを舞台にのせることができたら幸せです。大好きな仲間たちと私たちの夢を理解して下さるお客様の前で精一杯輝きたい。これが私の選んだ道だから‥‥。
武田 雅子
勤め先で私が所属する部署には三人の若者が居る。最近はほとんど毎日と言っていい程一緒に夜遅くまで残業している。もう同世代とは呼べない程歳の離れた彼らを見ていると、遊びたくても遊べずにいる様な気がして、仕事を回している自分が三人の青春を奪っているのではないかと錯覚してしまう。稽古に行けない自分を棚に上げて‥‥。
以前は、他人のことを考えてあげられる自分で在りたいと思っていたにも拘らず、公演が近づくにつれてパニック状態になっていた。今回もかなりの焦りはあるが、何がどうなっているのか、どうしなければならないのか、冷静に判断できる自分に驚く。この歳になってやっと大人になったのか‥‥。仕事上人に接する機会が増して、回りの人を理解しようと努力した結果
なのか。要するに今までが子供過ぎただけだった‥‥のだと思う。彼ら三人を見ていて、若いということが羨ましいと思う事はあるけれど、今は戻りたいという思いは無い。今の私には派手さは無いけれど、奥が深く、静かな青春がある。それを形として表したのが今日の舞台です。
何年か後、きっと私にも今の時代を懐かしむ頃がやって来るだろうと思う。戻りたいと思う時期がやって来るのかも知れない。けれど今は今日を大切に大切に生きて行かなければ思う。
『稽古不足を幕は待たない。』
私が出来る事を精一杯やるだけです。
富永 浩至
昔芝居をしていた友人に会うと、必ず 一様に「まだ続けてるんだ。」と言う。その言葉には、その歳になってまだそんな事やってるのかというニュアンスが感じられる。しかし、しばらく芝居の話をしていると、「俺もまたやりたいなあ。」という言葉が口をついて出てくる。それならまた始めればいいのにと思うが、やはり会社や家庭など、いろいろな状況を考えると大変なようだ。
今年の春、東京で芝居をしている友人と話す機会があり、その話になった。やはり彼も同じ経験をしている様だ。昔の仲間がまだ続けているというのは嬉しいものだ。自然と会話も弾んでくる。幸いなことに、私の大学時代の友人はまだ芝居を続けている。互いにしばしば連絡を取りあっているわけではないのだが、彼も頑張っているのだから自分もまだまだ頑張らなくてはと思うのである。
さて今回の芝居だが、今まで演じてきたものとは少し毛色が違っている。果
たしてこの新しい試みが、御客様にどのように受け入れられるだろうか。友人の顔を思い浮かべつつ稽古に励む毎日である。
新人達のひとこと
真鍋 伸志
僕は小さいころから、映画や演劇などで、舞台に立ってたくさんの観客の中で演技して見たいという夢を持っていました。ちょっとしたきっかけで帯広に「演研」という劇団があることを知り、思いきって入団しました。
まだ、高校生なので社会人の方々とうまくやっていけるかどうかという不安もありましたが、先輩方も物覚えの悪い僕をとても熱心に指導してくれて、今はこの劇団に思いきって入って良かったなと思っています。
僕のこれからの目標は、就職してもこの劇団での活動を続けていき、いつかは舞台の上に立ってお客さんの心を引きつけられるような役者になれたらいいなと思っています。
平山 ゆり
私は以前から演劇に興味はあったものの、帯広に劇団があるということを知らなかった。偶然ポスタ−を見かけ、友達を誘いすぐ観に行った。それが、この「ラブ・レタ−ズ」であり、演研の一般
客として観た唯一の芝居になってしまったのである。
入団してみた感想は「面白い!」の一言。練習日が、いつも待ち遠しい。劇団員の方々も、夢を追い続けている素敵な人達ばかりで、それがとても嬉しい。
しかしただ楽しいだけでなく「人前で演じること」の難しさも初めて知り、困惑してもいる。演劇経験の全くないペイペイの私は、今はただ団員の皆さんの後ろをちょこちょことついてまわることしかできないが、いつかは役に立てる日が来ることを信じて頑張るしかない。
横田 育香
私は子供の頃から小説を読むのが好きでした。自分の経験はごく限られたものでしかないけれど、小説を読む事によって、他の人の人生まで生られる。自分がその小説の中の主人公になれたらと思ったこともありました。
そんな夢を実現するひとつの手段として演劇というものに興味を持ちました。人一倍人見知りが激しく、恥かしがり屋なので、人前に出て演技をする自信などありません。しかし、この「ラヴ・レタ−ズ」の帯広公演を観たのをきっかけに、思い切ってこの集団に飛び込みました。
まだまだ、恥ずかしいという気持ちは抜けません。小さいけれど、やっと踏み出した一歩です。それを大事に、いつか舞台に立って生き生きと演技ができるように頑張りたいと思います。