第24回公演
救いの猫・ロリータはいま・・・
作・清水邦夫
演出・片寄晴則

スタッフ
照明 武田雅子  効果 片寄晴則  衣裳 上村裕子  小道具 内山裕子  装置 富永浩至  舞台監督 片寄晴則  
制作 上村裕子 山田あゆみ 村上祐子

キャスト
あすか・内山裕子 巻子・上村裕子 山口・富永浩至 トオル・鈴木隆之 フミ・赤羽美佳子

とき
1993年6月26日(土)開演午後6時 午後9時 27日(日)開演午後3時 午後6時
7月3日(土)開演午後6時 午後9時 4日(日)開演午後3時 午後6時
ところ
演研芝居小屋(帯広市西2条南17丁目)
前売り1000円  当日1200円  (コーヒー券付き)

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●上演パンフレットより

 

上演にあたって

片寄 晴則
 ─ここは日本海沿いにある町の、町立図書館の分室。闇の底からかすかに聞こえてくる物音は猫の鳴き声のようであり、その悲痛な響きは時として鴉のようにきこえ、やがてそれは女のかん高い叫びとなって闇に消えてゆく─
 想い出に身を委ね、夢と現実の狭間を浮遊し続ける主人公「あすか」にとっての愛と真実を検証しつつ稽古は進んでいます。「時代」や「社会」とどう拘て生きているのかを念頭に作品を選定している私たちですが、なぜか三回連続で清水邦夫作品への取り組みとなりました。作者の描き続ける人間の生き様、青春へのこだわりに共感する部分が多いからなのでしょう。団員の多くが、自分の生き方、存在という事をより深く見詰め直す年令になってきたからなのかもしれません。しかし、その中での確実な共通 認識がひとつあります。それは、芝居を続けている限り、我々は青春のど真ん中を走っているという事。
 何年続けても完成度はまだまだですが、お客様を始め、多くの人々に支えらながら、快い緊張感の中で幕が開こうとしています。改めて─
 本日はありがとうございました。


つ ぶ や き

富永 浩至
 ちょっと内情を暴露すると、今回の上演作品の決定にはかなり苦労した。新人のお披露目公演をという気持ちは皆の中にはあったが、実際作品選びという段階になると今一つしっくりくるものがない。長年いる団員は、公演を打つばかりが芝居をする事ではない、エチュードなど基礎訓練をきっちりする期間も必要だという気持ちもあるせいか、作品選びに力が入らない。しかしそんな中、新人の 「とにかく公演を打ちたい」という強い気持ちに動かされ、この作品を上演する事となった。
 もともとやりたい作品ではあったが、人数の問題や、登場人物の虚々実々のやり取りの難しさからのびのびになっていたものだ。やりたいという気持ちに押され、その気持ちがあれば何となると取り組んだが、これがなかなか厄介で仕上がりが見えてこない。
 いろいろな問題を抱え、それを整理できず、そのまま提示する事になるかもしれませんが、本日お越しの皆様に、我々の思いが伝わる事を願って…。

上村 裕子
 我が演研の年二本公演が定着してから、十年近くになる。いつもなら、四か月近くかけて一本の芝居を創る。それが、演りたい作品と人数と力量 (これは今も昔も同じだが)又、それに向かう意欲の関係で演れない作品のギャップを埋めるのに時間がかかり、今回は二か月半で一本を創るということになった。宣伝材料プラン立て―発注をして、ポスターはりやチラシ配り、装置・照明・音響づくり、チケット売り(私は営業活動と呼んでいる)。一人一人の負担は大きいが、だからこそ、集団としてまとまりが生きてくる。
 チケット売りも進む頃、友人が「今度はネコの役?」と悪戯っぽく笑った。ネコは大好きだけど人間の役です。実年齢に近く演ろうと思っていたら、「もっと若く、二十五・六ぐらいでやろう」と演出からの指示。愛猫『にゃん』に「そん なに違わないから(?)演れるね」といたらあくびをされた。
 公演が近づくごとに、緊張のテンションもあがる。仕事をして、芝居をして、眠る。そしてまた、仕事をして芝居……そんな生活が、やはり好きです。

赤羽 美佳子
 私は小学校の低学年の時、作文を書くのが好きだった。すらすら何枚も書けて小説家になろうと思った程だった。その頃は何にでもなれると思っていた。あの不思議な自信は、どこから来てどこに行ってしまったのでしょう。
 ちょっと前まで、自分の人生は自分で切り拓くと豪語していた。でも最近、このまま私はどうなってしまうんだろうと、ふっと思うことがある。
 演出から、「子供っぽすぎる」「同棲しているイチャイチャ感が全くない」とダメが出る。やりたいことと、できることとの差を痛感する。
『子どもから大人になるのは、ただの一歩、ただのひとまたぎにすぎない、それは孤独になること、さわやかにたくましく孤独になること。しかし不幸にして、その一歩をまたぎそこねると、そいつはただの鴉になる。一生、苦い孤独と寂しさを貪り食って生きていくただの鴉になる…。』
この劇中のセリフが妙に胸にひっかかる。

内山 裕子
 『人生はステージ、人々は役者である』
 これは、W・シェイクスピアの有名な言葉である。
 ライトが当たっていないとき、袖に引っ込んでいるとき、一体どうやって存在するか。今わたしはそういうことを考えてしまう。目の前に迫っているクリアしていかなければならない事がたくさんあるのに…
 そんな時、ふと頭を上げるとそこに仲間がいる。同じように悩んでいる人達が見えてくる。もうちょっと高く頭を上げると今度は私たちを見ていて下さるお客様が見えてくる。同じ時間を共有し、同じ空間のなかで同じ芝居の空気を吸っている人々が見えてくる。たとえ一瞬でも、その時何かが火花を散らしきらめくものがあればいいと思う。
 ちょっと落ち込んだりした時、昔の芝居仲間に長距離電話をかけてみる。─ホントに懲りないのよね。いやだとか、やめたいとか、苦しいとか泣き言いってるくせに。やっぱ、すきやねんね─そんなことをいって笑いあう。そうなんだ、きっと好きなだ。芝居が、人が、人生が…だって人生はステージ、だそうですもの。
 本日はおいで下さいましてありがとうございました。わずかな時間ですが一緒に存在できる事を本当にうれしく思います。

山田 あゆみ
 大人になる為の一歩を踏み出せずに、鴉のままでいる『あすか』。少女の頃のままの自分を引きずって、年だけを重ねていった不幸な彼女は、おそらく一生このままの姿であろうと思う。子どもから大人になる事は、難しいことではないかもしれない。誰もが通っていく道なのだから。だけど、道を上手く通り損ねてしまった時、一人自分だけが取り残された様な気がして、周りとのギャップに悩み、孤独に苦しむだろう。そんな人間 は、社会に適応できない甘えた脱落者だと、人は笑うかもしれない。けれど本当は、そんな人達でさえも仕方なく、フリをしながら、無理矢理大人になっていったのだろうと思う。私も鴉に近い人間なので、あすかを感じる事ができるが、過敏な彼女は、このまま生き続ける事は、困難だという気がする。あすかの台詞の中に、散りばめられている言葉言葉が、虚しく、美しく、悲しい意味合いを持って、私の胸に響く。多くの人に触れてほしい作品だ。

鈴木 隆之
 本日はご来場いただきまして、まことにありがとうございます。お初にお目にかかります。私、今回がデビュー作となります。よろしくお願い致します。
 デビューというのはいいもんです。初めて人前で演技する緊張感といったらたいへんなもんで、いやー緊張するなー。 デビューてのは一生に一度のもんだしなあ。あっ、でも考えてみたら場所とか、 一緒にやってくれる人が変われば、またデビューできるなあ。少し気が楽になった。よかった、よかった。

 

 

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アンケートより

・5人もキャストが出る芝居が初めてでしたので、最初少し驚いたのですが、とてもおもしろかったです。ただおもしろいだけではなく、病んだ心の痛みの悲しさのようなものに、切なくなりました。孤独というものは、こんなにも悲しいこと何ですね。(女性・28歳)

・初めての経験ですが、強烈な印象を受けました。それぞれの方は、昼はお仕事をお持ちなんでしょうね。わずかな時間を練習に打ち込んだ事が、私にも伝わって来ました。感動しました。(女性・事務員・47歳)

・楽しく拝見いたしました。前回とは違ったものを感じ、笑いもありながら、その中に作者のいわんとしていることが伝わってくる様で。孤独、考えさせられるものがあり、またひとついい体験をしたと思いました。(女性・49歳)

・私にはまだこの内容を見るには若すぎるように思えます。もう少し人生の苦渋をなめてから、もう一度見たい。初めて芝居というものを見ましたが、すごいなあと感じました。(女性・大学生・19歳)

・もっと過激な笑い、涙とか、まったくの淡々としたものとかに、徹底するべきではなかったかなと思います。(男性・22歳)

・職場の仲間が、イキイキとした表情で演じているのを見て、感激しました。仕事と練習の日々はつらい時もあったことと思いますが、今日の姿を見て、ああこんな感動があるから、やっていけるんだナーと感じました。深い部分までの表現は、とても難しいものがあると思いますが、その中にもコメディーあり、なげきありの内容であると見ている人にも共感が持てる演劇ができるのでは…と思います。(女性)

・よく練習していると感心しました。所々で感心して観ていられる部分があり、全体的に良かったと思います。少し気になるところはセリフをまちがった時に素にもどってしまうところ。セリフをいいなおすところも、芝居の流れをこわさないでほしかったものです。(男性・公務員・30歳)

・前回よりも内容がわかりやすかったと思います。あっという間に終わってしまった…と感じるくらい、良かったと思います。(女性)

・あすかのトリップかトリックなのか、あの分かれ目がもっとメリハリがあったら。若いアベックの初々しさ、若いゆえのけんか、もっとドキッとする気持ちが出ていたら。(男性・公務員・33歳)

・「からす」という表現が印象的でした。自分のまわりに、分室長さんみたいな人っているかなと思ったらおそろしくなりますが、自分にもああいうところあるかなあと思います。男の方々が一般 の人って感じで良かったなあと思いました。(主婦)

・毎回楽しみにしています。劇団員の年齢層が上がっているようですが、みている私の年齢も毎年上がっていますので、何となく共感できます。だんだん内容の深いものをみているような…。(女性)

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