第28回公演 創立20周年記念連続公演 第2弾
思い出せない夢のいくつか
作・平田オリザ
演出・片寄晴則

スタッフ
照明 山田知子  効果 片寄晴則  衣裳 赤羽美佳子  小道具 外山みゆき  装置 天野真也  
舞台監督 片寄晴則  制作 佐久間孝 村上祐子  協力・仁木雄人

キャスト
由子・坪井志展  安井・富永浩至  貴和子・上村裕子

とき
1995年7月1日(土)開演午後6時 午後9時  2日(日)開演午後3時 午後6時
8日(土)開演午後6時 午後9時 9日(日)開演午後3時 午後6時
ところ
演研芝居小屋(帯広市西2条南17丁目)
前売り1000円  当日1200円  (コーヒー券付き)

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●上演パンフレットより

 

上演にあたって

片寄 晴則
 演劇が語るべきものを失ったといわれるようになって久しい。本来、メッセージ性を色濃く打ち出していた小劇場でさえ、80年代後半のブームによって「笑いと軽さ」が主流になってしまっている。そんな中で、私達がここ数年、興味を持っていたのが゛何の事件も起きない、“静かな芝居”といわれている、平田オリザ氏の一連の仕事である。
 今までの私達が芝居を創る上で大切にしてきたのは「心理」とか「感情」といった精神的なものである。何かを伝えようとする時、その動機となる精神が重要と考えているからだ。しかし、平田氏の仕事は精神や行為といったものを描くことを捨て「状況」を描こうとしているのだから、今までの我々のアプローチでは全く通 じない─と言うより正反対のアプローチを求められているのではないだろうかと思う。役者は何もせず(もちろん何もしないわけではない)ナチュラルに舞台に存在する─簡単なようで、これ程難しいことはない。しかし、平田氏の戯曲は役者が余計なことをする必要がないように緻密に計算されて、書かれており、何もしない、何も言わない空白が雄弁に何かを語りかけ、観る者のイマジネーションを刺激する。それがとても面 白い。
 過剰な演出を押し出すことをしてきた 私が、これほど何もしないでいるのは初めてのことです。ただ役者を見守り方向性を示すだけ。役者・演出双方にとっても20周年の結節点を飾るにふさわしい新たな冒険であり、今後の創造活動への大きな糧となる作品だと思っています。


つ ぶ や き

上村 裕子
 演研が20周年を迎える。何年も前から何をやろうか、意識していた。けれど、まさか今回の芝居を打つことになろうとは思わなかった。本を読んだ時、「面 白い、舞台が観たい」とは思ったけど、演るなんてとんでもないと思っていた。日頃から過剰な演技をセーブされる私には、普通 に存在することがとても困難に思われたからである。
 「何もしなくてもいいから、普通にそこにいればいい」と演出のダメが出る。今までにも何度も言われてきたことなのに、普通 の私って…?と考えた込んでしまった。のめり込んで自己主張する役がとても好きです。日常では出せない感情も、芝居の中でなら居直って出るから… 何だかとても窮屈な思いをして、役を演じているけど、稽古を重ねる度に、作品が、役がとても好きになる。そして大切に作りたいと思う。
 今回、先輩というか“同志”の坪井志展を迎え、富永と3人で舞台に立てることが、実はとても嬉しい。この気持ちのまま舞台に立ちたいと思っています。

坪井 志展
 私は、よく寝ながら大きな声で話し出すらしい。パートナーによると”寝言”などという可愛らしいものではなく相手に返事を求める様な話し方をするのだそうだ。そしてまた、何事もなかった様に眠りにつくと言う。次の日、私はそれを聞いて人ごとの様に笑う。
 舞台の上でも、そんな自分であれば…と思うのだが、全身に力が入りなかなかそうはいかないのだ。しばらく離れていたのだから(年もとって…)少しは大きな心で芝居と対面 できれば、と思いながら稽古場に足を運ぶ毎日です。

富永 浩至
 数年前に、東京の文学座アトリエで別役実作「サラダ殺人事件」という芝居を観た。保険金のためにわが子を殺し、それがバレないかとビクビクしながら暮らしている夫婦の話なのだが、二場の初めのシーンに心をうたれた。居留守を使った夫婦が、客が帰ると仏壇の裏からはい出てくるのだが、その丸まった背中に、彼らの日常の生活ぶりが見え、とても泣けたのだ。
 さて、今回の芝居をどうしてもやりたいと、私は半ば駄々っ子の様に言い張った。三十過ぎて駄々っ子もないが、横浜にいる坪井が二十周年の公演に出させて欲しいといってきたのある。上村と三人で舞台に立ちたかったし、それにこのホンはおもしろい。新しい可能性を示している。実際、どの様なものになるかは観てのお楽しみだが、前述の芝居のようにお客様の心に入っていけるように、稽古にいそしむ毎日である。

佐久間 孝
 此の頃は国の内外ともに、不確かなこと此の上もないですね。
 マルクスもヒットラーもビートルズも居ない、それからマリリン・モンローも居ないしなあ…
 それでも、空気が結構汚れてる割に星空は見えるし、小市民的生活は、去年のお米騒動なんかあったけど、取り立てて混乱の態もなく、しっかり平静そのもので、「そう」時代は平成ですもんね。
 不確かながらも、いい湯加減、いい塩梅っていうのかな、何事も中くらいってのが、「いいもんだな、これが」…
 だけど、誰かがどっかに隠し玉かなんか持っててさ、「ポワーン」とか「テリャー」ってなことになりそうな、そんな気もしますよね。
 まあ、いいっかあ。
      ・・・・・
 本日は、演研芝居小屋発、平成銀河鉄道“思い出号”に、ご乗車いただき誠にありがとうございます。

山田 知子
 日常会話…って生卵みたいだなぁ、と思う。割れないように気を使いながら、たまに妙に口惜しくて、全部割れてぐちゃぐちゃになってしまえと思う。すれすれなのが怖くて、怖い以上に暖かくて、優しい。
 一緒に汽車に乗りましょう。そうしたら忘れている何かを想い出せるかもしれません。今宵はごゆるりと想い出せない夢にお酔い下さい。

外山 みゆき
 研修生から準団員になって二度目の公演でやっと、芝居を作り上げていく中に、一歩踏み出せたような気持ちでいます。今回も仕事の関係で、四日間合わせて八回の公演全てに参加、というわけにはいかず淋しい思いをするけれど、最後まで稽古に出られるようになっただけで、十分今までとは違ったものを得られるようになりました。
 何も分からなかったけれど、公演を重ねるたび、少しずつでも何かを知っていくものなのだ、ということは分かってきました。頑張ってもっともっと沢山のことを吸収したい、早く自信を持ちたい。

 

 

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アンケートより

・暗転の後の星空が素敵でした。マネージャーが立派で、社長のように見えたのがちょっと気になった。(主婦・47歳)

・スキです。すごく三人、いかったです。私はセツナクなってしまいました。終点につくことなく三人でずーっと一緒にいて欲しいですね。まさかこんな作品をみせられるとは・・・。ホントいい脚本ですね。(男性)

・今までと違って、本当に普通の会話って感じでした。いきなり、黙ってしまう所など、よくあるなあって思ったし、話の腰をおるところなんて、おかしかった。これからも色々なものをやって下さい。(女性・25歳)

・以前にテレビで平田オリザの芝居をやっているのを見ることがありましたが、何もおもしろさがわからず、テレビを消してしまいました。かといって、今日の公演に面 白味があったかというと、まだわからず、よく考えてみなければ・・・何かわかりません。(男性・24歳)

・「え」「なにか」がセリフに多用されていましたが、ほとんど同じ調子で話していたのが気になりました。あと、上村さんがセリフのとき、上半身がもう少し動けばより自然に見えると思いますがどうでしょう。(学生・20歳)

・留萌で自分が所属している劇団「鳥」も昨年20周年を迎えました。パンフレットを拝見しますと、色々な傾向の作品を上演なさっているので、驚きました。このような小さなスペースでの芝居は初めて見ました。おもしろかったです。演劇に限界はないのですね。(女性)

・よくわからなかった。何でキワコはボーっとして歌いながらリンゴ配ってたのかな?歌手の人の「超新星〜」って何だ?マネージャーの人とキワコはできている。三角関係だ。(看護婦・23歳)

・新得から汽車に乗り、1時間かけて帯広へ。その延長だったような。今までにない、間なのでとまどいました。(獣医師・35歳)

・不思議な感覚--うーん。何か、懐かしいような、ちょっと詩的な印象を受けました。三人のユニットの変化(入れ替わりなど)が、とてもよく計算された作品のような気がします。会話がゲームのようで楽しめました。ジョバンニとカンパネルラの物語の影が色濃いですね。でもね、本当はもっとHOTなステージが好きです。(男性)

・電車の旅でのおしゃべりは自動車や飛行機とは違った、線路の ガタンガタンという音を思わず聞いてしまうというような不思議な沈黙が生まれるものですが、その雰囲気がよく伝わってきました。(学生19歳)

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