「トイレはこちら」アフタートーク

※今回、スペシャル企画として、司会に北見・劇団動物園の松本大悟氏をお招きし、6月1日と最終日6月15日にアフタートークを行いました。
 その様子を抜粋いたしましたので、ご覧ください。

 アフタートーク第2回目はこちらから

 

アフタートーク1回目(6月1日)
司会:松本大悟氏(劇団動物園)  参加者:富永、坪井、野口、金田

富永:それでは、これからアフタートークを始めたいと思います。
今日はゲストに北見から劇団動物園の松本大悟さんに来ていただいております。ここからは松本さんの仕切りで進めたいと思います。松本さん、どうぞよろしくお願いします。

松本:皆さん、お疲れさまでした。パンフレット読まさせていただきました。今回再再演ということですが、初演の相手役が片寄さんで、演出も・・・

富永:いや、初演の演出は私です。

松本:え、そうですか!

富永:そうなんです。パンフレットにも書いてありましたが、当初私と片寄の二人だけでやっていましたので、見ている人がいない。それで言い出しっぺの私が、成り行き上演出ということでした。

松本:そうですか、で、3回やられて、どれが大変でした?今回のトリプルキャストが大変でしたか?

富永:いや、今回はそうでもないです。最初はトリプルキャストなので、どう変えていこうかと思ったのですが、そんなに器用じゃないので、でも段々稽古をやっていくうちに、三人三様のキャラが立ってきたんです。それで、それに乗っかろうと思いました。

松本:今誰もいなくて、二人だけだと思って答えてください。一番やりづらかったのは誰ですか?(笑)

富永:え、ええ!いや、それぞれに特徴があるので、それに乗っかっているだけなので、誰がと言うことはないです。

松本:僕、今日2ステージ観て、やりづらそう感がなかったので、これはやりづらいのはカネちゃんなんだなって・・・。(笑)
 僕も、演研さんの作品をかなり観てますが、、物語の舵取りになっているのが、富永さんが多いので、今回はどう引っ張っていくのかなって思っていたんです。ああ、そう言う感じじゃないんだなって言うのが、今の話で分かりました。
 女性三名に伺いたいと思うんですが、では、一番お若い坪井さんから 。(笑)

坪井:はい。

松本:いや、リップサービスです。(笑)カネちゃんいいですか。

金田:はい。

松本:先輩お二人を観て、再来週に舞台を控えているじゃないですか、率直にどう観てたんですか。

金田:楽しんで観てました。二人のやられているのに引きずられるのかなとも思いましたが、それはそれでという感じで。それぞれ基本となるものは同じなんですが、ちょっと違った演出がつくのです。

松本:情報はいろいろ入ってくるじゃないですか、その中で面白いと思ったものは取り入れようと思うんですか。

金田:まあ、真似したいなと思っても、真似できないというか。

松本:そういう風には観ないんですね。なるほど。野口さんはどうでした。

野口:金田は私より若いですが、舞台経験は私よりあるので、稽古時間は私が一番とっていたと思います。

松本:え、月曜日野口さん、水曜日坪井さん、金曜日カネちゃんという風でなくて。

野口:ええ。野口、野口、野口、坪井、金田という感じです。(笑)

坪井:三回は続かないでしょ。(笑)

富永:土曜日は稽古時間が長くとれるので、その日は三人やって。

野口:いや、でも結構多かったと思います。

松本:それはどうなんです。稽古時間が長いというのは、至福の時なのか、地獄の時間なのか、それとも自分が試されてるのかなというか、片寄さん、どこかにいなくならないのかなという・・・。(笑)

野口:至福のときを除いた他全部ですね。(笑)

松本:成る程ね。(笑)

野口:演出していて、そういう稽古時間の調整は大変だったと思います。私は、まあ、家に帰っても芝居のことを考えて、家のことはとりあえず置いておいて、このところは仕事と芝居だけという感じでした。

富永:旦那さん、理解があるんだね。

松本:そこまでやるというのは、どういうことですか。

野口:パンフレットにも書きましたが、私が新年の抱負で役者をやりたいと言って、まあ言ったからにはやらなければいけないということで、でも途中これは無理かもという感じになりましたが、どんな形になれ言ったからには、やらなければならないと思いました。

松本:はい。では、最後坪井さんに聞きますが、どうでしたか。

坪井:難しかったです。作品の理解度の違いというか、富永さんと演出は何度もやっているし、体の中にしみ込んでいるものがある。それを伝えてもらうんだけれど、なかなか理解できないというか、金田、野口の稽古を見ていると、ああこういうことかと分かるんだけど、自分が中に入ると分からなくなる。あっちへ行ったり、こっちへ行ったりして役作りをしているような、なんだか今でも難しい芝居だなと思ってます。

松本:今坪井さんが言ってくれたのすで、伺いたかったことなんですが。これは片寄演出に二週間後のアフタートークに伺おうと思っていたのですが、片寄演出は今回のトリプルキャストで、それぞれのキャラで、このキャラはここを目指そうとしているのか、それとも完成形はここにあるのだが、それぞれのアプローチが違うかこうなったのか、どっちなんですか?異なる三つの答えが用意されていたのか、それとも答えは一つなんだがアプローチの仕方が違うのか。

坪井:コースが違っただけ何じゃないですか。

松本:カネちゃんは?

金田:分かんないです。

富永:ダメ出しを受けるじゃない。それは私が受けたのと他の人が受けているのと同じだと感じるの?

金田:同じところと、微妙に違うところがあります。だから二人に言われていることが、自分にも通用する時と、通用しない時があります。

松本:なるほどね。では、頂は同じだけど、登る道が違うということですかね。

坪井:そうですね。同じところを登るのは無理!って感じですね。

松本:そうですね・・・。(苦笑)これは女性三人に聞きたいのですが、私、ここだけは他の人より勝っているわ、と言うところを何か一つ聞きたいのですが。カネちゃん。

金田:分かりません。

松本:上手だな、この子。(笑)じゃあ、坪井さんは。

坪井:え、可愛いのカネちゃん。(笑)え、え・・・。

富永:それ、難しい質問だね。

松本:役者さんって、客観的に見ているじゃないですか、自分を。

坪井:自分は分からないですね。他人を見て、この感じは私には出せないなというのはあります。

松本:あ、それ面白いですね。じゃあ、それ聞かせて、野口さんのここ面白いなって所は。

坪井:私の想像できないようなことをする。それが野口自身なので面白かったりする。

松本:じゃあ、カネちゃん、坪井さんと野口さんの面白いところは。

金田:う〜ん、野口さんはそうですね。でも、二人ともありますね。ああ、こんな発想するんだと思うところはあります。それまですごく苦しんでいることは分かっていて、吹っ切れた時の、急にコロッと吹っ切れるんですね、二人とも。そうなった時の力はすごいなって思います。

松本:野口さんはどうですか、この二人を見て。自分のことで精一杯とか言わないでくださいよ。(笑)

野口:ええ、そうなんですが。(苦笑)でも、坪井さんが最初の頃は全然稽古をしてなかったのですが、舞台に現れた時の存在感はすごいなってはあります。

松本:なるほどね。富永さんはどうですか。この人のここはすごいなってのはありました。

富永:ベンチがあるじゃないですか。で、女が座るシーンがじゃないですか。座る位置を考えてくれる人とそうでない人がいます。そのあとに二人並んで座って話したいのですが、どかっと真ん中に座るんです。

松本:坪井さんですね。(笑)

富永:う、う〜ん。いや、動きがかわるんです、そのあとの。そういうのは面白いなって。そういうことの積み重ねで、またそういうことがその人の味になっていくんだなって思いました。

松本:逆にそう言う細かいところまで、片寄演出はガッツリやっているのかと思いました。そうではなかったんですね。

坪井:作品のここのすれ違いは面白いんだということは言われましたが、その他の大まかな動きについては、各自に任せるみたいなことでした。

松本:そいういことを聞くと、頂は決まっているが登り方は任せるみたいな感じですね。いや、僕は今日、全然違う二作品を観せられた感覚があります。野口さんの舞台を観た時は、この二人が不確かなのか、世界が不確かなのか、どっちが不確かなのって言う、相反するものを見せられた感覚があって。坪井さんの時は、死の言葉を発する彼女の方が生に対する執着が強くて、男の方が死に向かっているのではないかと感じました。一つの物語が役者が違うことによって、全然違う作品が観られるんだなって思いました。と言うことで、皆さん、二週間後、また、楽しみにして下さい。(笑)
  今日は有り難うございました。

 

アフタートーク2回目(6月15日)
司会:松本大悟氏(劇団動物園)  参加者:片寄、富永

松本:サッカーは負けてしまいましたが、アフタートークは楽しくいきたいと思います。(笑)芝居を観終わったあと、ああ面白かったなという感じで終わるのですが、会場の皆さんもそんな感じでしょうか?拍手で確認したいと思います。(会場、拍手)ありがとうございます。よし、頑張ろっ。(笑)
 初のトリプルキャストということですが、どうでしたか。大変だったのですか、面白かったんですか。

片寄: いや、割と軽い気持ちで、企画として面白いんじゃないかと思って始めたんですが、いざ稽古をしてみると大変だったですね。楽しむまでいかなかったです。先々週幕を開けて、やっとそのあとの稽古で、僕自身は楽しめるようになりました。役者は大変だったと思います。

松本:片寄さんが今楽しめるとおっしゃいましたが、どういう状況になると楽しめるんですか。

片寄:幕を開けるまでは、役者にはどうやってもらうかをいろいろと伝えるんですが、役者がそれを自分の中で咀嚼して自分のものになるまでですかね。とにかく役者には楽しんで舞台に立てるといいねと言っているのですが、それがなかなかそうもいかなくて。初日あけたくらいから、やっと楽しめるようになったのかな。いろいろと決めごとがあって、ここではこうしなければならない、あそこではこうと、最初はどうしてもそれにとらわれてしまう。段々それがとれてくると、全体に柔らかい感じになってナチュラルになってくる。そう変わってきた役者を見て、僕自身は面白いかなって。

松本:じゃあ逆に富永さん。今の演出の話を聞いてどうです、役者が感じていることと一致しているのか、それとも必ずしも一致していないのか。

富永:演出はダメ出しをする中で、良かったら良いと言いますので、そう言われるとこれで良いのかなと思います。役者自身がすごく良いと思ってやっても、演出がダメと言ったら、それはダメじゃないですか。だから、私は正直なところは分からないんですよ。演出が良いと言ったら、それを信じてやるしかないんです。まあ、今演出が言っていたように、言われたことにとらわれているうちは楽しめないですね。

松本:片寄さんにお聞きしたいのですが、演出が見ている完成形と役者が見ている完成形は、同一のものと思っていますか。

片寄:そこいらへんはちょっと難しくて、必ずしも役者と演出は、立場も違うので同じにはならないでしょう。昔は、僕が見ているものと役者が見ているものが同じじゃないと、ダメだと言うか、許さなかった。今は、基本が、ベースになっているところが同じなら、役者がどうやっても、そこから外れて行くと修正すれば良い訳だから、役者がそこを押さえた上で、自由にやってくれれば、それが理想型だと思っています。

松本:では、富永さんにも今と同じことをお聞きします。演出と同じものを見ようとしているのか、または違うものを見ようとしているのか、自然と見ちゃうのか、どうですか。

富永:演出がどう思っているのか、本当のところは分かりませんが、稽古しているうちにああ、こんな感じかと思う訳で、さっきも言ったように、自分でやっていることが全部客観的に見られれば良いんですが、そうもいかない。自分がすごく良いと思っても、ダメって言われれば、ダメじゃないですか。

松本:そのダメって言われたことは得心がいくんですか。

富永:まあ、それは場合によりますが、でも、多分ダメなんですよ、自分がどんなに良いと思っても。結局お客様に観てもらって芝居は完成しますから、演出はお客さんにどう見せたいかという目線で見ていますから、その演出がダメって言うことは、ダメなんですよ。

松本:あ、そこの話が出たので流れで聞きたいのですが、片寄さんは実際はお客さん目線で観ているんですか。

片寄:いや、お客さん目線というか、僕が第一の客ですから、そう言う意味では客の目線ということはあるでしょう。でも、観たときにどう客観的にとらえるかでしょう。昔、自分が役者をやっているときに、その状況にどっぷりと浸かってやると、役者としてはとっても気持ちがよくて、でも演出として見た時には、これはダメだなって思って。で、そういうことがあったので、客観的に見るようにしています。

松本:今日はここにいない女優陣の話をしたいのですが、ここにお客さんが誰もいないと思って答えて下さい。三人の女優さんの中で誰が一番やりづらかったですか。

片寄:それはそれぞれやりづらさがあります。

松本:大人っ!(笑)難しかったですか、どうなんです三人というのは。

片寄:基本は、求めていることは同じつもりなんです。その場面場面で、その役者が出来ることと出来ないことがあるんです。ですから、役者を見て要求の仕方は違ってはいます。でも基本、別役の芝居はやりづらいです。これは前から言っているのですが、役者が別役の文体を好きって思ってくれないと、その言葉が吐けないんじゃないかと思うんです。好きじゃないと、いろいろと考えてしまうんじゃないかと。役者というのは書き言葉を話し言葉に変換しなければいけません。そこに持っていくのに割と早くできる人となかなか出来ない人がいます。

松本:今お話を聞いていると、三人の女優陣には同じ設定をしてたけれど、得手不得手があるから、三つに分かれたという感じですかね。

片寄:基本はそうです。この芝居の女はこういうキャラクターということではなくて、女と男の関係の中でどうなのかという基本は変わらない。それにあわせて、各女優がどうなっていくか。一週目を終えて面白かったのは、坪井と野口は一度舞台に立って、その後は集中的に金田の稽古をしたのですが、二人がダメだしを見ていて、自分のダメ出しのようにちゃんと受け止めてくれて、ずいぶん変わってきた。

松本:僕は舞台を観て、三通りの演出をつけたと思ったのですよ、舞台が全く違うし。受けの富永さんがすごい素敵だと思ったんですよ。1週目はヘタクソでしたが。(笑)

富永:(爆笑)

松本:いや、冗談ですが。(笑)今日のカネちゃんの舞台は、上質の喜劇を観せられたという、いや、全く死をまとってない彼女と富永さんのやり取りは、何かいけないものを観たという感じがしました。で、その後、野口さんでしょ。いや〜、野口さん良かったですね。

片寄:上手だね、上手だね。(笑)

松本:最後の野口さんの言葉がグッと来ました。そう見ると色々とやり方を変えて、片寄さんが色んな形で、まあ手をかえ、品をかえ役者を一皮も二皮もむいていくという作業をしてると思ったんですが、意外と御任せっという感じだったんですか。

片寄:まあ、そうですね。でも、キャラクターがまるっきり違うので、それをどう生かしてやるかということはありますが、やり方をまるっきり変えるということはないですね。多分今回、役者は自分の役を他の人がやるというのはあまりないので、自分の役を他の人がやるのを見ていて、自分のダメだしの時に気がつかないことが、他の人をやっているのを見て、気がつくということがありました。今回は良い経験になったと思います。

松本:そうでしょうね。

片寄:まあ、最初はどうなることかと思いましたが、普通の芝居で2ヶ月かかるとすると、3人なので単純に6ヶ月かかるじゃないですか、ですからどうなることかと思いましたけど、やっとここまでなって、役者たち頑張ったなと思います。まあ、これで良いとは思っていませんが。

松本:ありがとうございます。今日は本当にお疲れさまでした。

 

 

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