第71回公演  「片づけたい女たち」
 作:永井愛   演出:富永浩至

 


 スタッフ
  片寄晴則、金田恵美、清水匠、村上祐子、鈴木えりか
  

 キャスト
  ツンコ:野口利香  おチョビ:上村裕子  バツミ:坪井志展   


上演にあたって

富永 浩至

  我が劇団には書き手がいないので、上演する芝居はほとんどが既成の作品である。例外として、創立25周年と30周年は平田オリザさんと鐘下辰男さんにそれぞれ書き下ろしていただいたが。なので作品選びには毎回苦労する。出版される戯曲が極端に少ないからだ。今回は、松金よね子、岡本麗、田岡美也子、女性三人の演劇ユニット「グループる・ばる」で上演した永井愛の本が出版されているのを見つけさっそく取り寄せた。

 彼女たちに当て書きされたこの作品はまさに我が劇団員と同年代の女性が登場人物。人生の半ばを過ぎた女たちが自分の人生において、いろいろと片づけておかなくてはならない問題を抱えているというお話だ。共感するところが多かったようで、40周年記念第2弾の上演作品に決まった。

 若い頃、演劇をやっていると言うと決まって、セリフを覚えるのは大変でしょうと言われた。「そんなことないです。だって稽古を何回もするので、その中で覚えてしまいます。(そんなことよりもっと大切なことがあるんです)」と答えていた。カッコ内は心の中で。実際に苦労はしなかったのだが、いやいや年齢を重ねてくるとそうはいかない。新作に挑む度に、なんでこんなにセリフが入らないのだと嫌になってくる。

 しかし歳をとったことで、もっと大切なことはにじみ出て来るのではないかと思っている。そう信じて、稽古を重ねる日々である。

 本日はご来場ありがとうございます。我が劇団にとって節目となる公演。時間と空間を共にしていただき、本当に感謝いたします。


 


つぶやき

坪井 志展

 先月、三条高校同期の女子会に参加しました。「久しぶりに近況を語り合いませんか?」というお誘いです。昼間の稽古を終えて、新得のコテージに着いた時には、理数科女子の8名が(全部で18名なので半分が集合です)鹿と牛肉のしゃぶしゃぶの鍋を囲んで盛り上がっていました。そのほか、サラダに揚げ物、それに名前の解らない凝った料理の数々が並んでいます。さすが女子会(私は何もしていないゴメンナサイ)

 約40年ぶり、こうして女子だけで集まると高校の教室の空気が蘇る。男女別れての体育の授業の前後かな…この感じ。学生時代の思い出話にはじまり、それぞれの近況を、行ったり来たりで話は尽きませんでした。夜中の2時に布団に入ると夜空に星が…(2階建のコテージには天井に窓)横になってからもまた話し込み明るくなってやっと眠りに。

 同じクラスで過ごしていたのに、覚えてない、知らない事が沢山ありました。印象が全く違ったり思い込んでいたり、でもあの時を一緒に過ごしていたのは確かです。入学式の日の掃除の時の話、おとなしそうに見えた私が、男子が居るにもかかわらず見るからに重そうな教卓を「よいしょ」っと持ち上げ運び出したのがとっても意外で、印象深かったと言われました。今の私からは想像できないけど、そんな時もあったんだなぁと少し嬉しかったりしました。

 楽しく不思議な一泊二日。愉快な報告ばかりではなかったけど、ちっとも嫌な気持ちにならず、いい意味で受け止めて聞き流すそんな大人の女たちの集まりだった気がします。

 今日のお芝居と少しリンクするような…

 

上村 裕子

 個人的な諸事情で、頻繁な稽古参加はできないものの、年1回か2年に1回位の割合で舞台に立ってきた。今年4月から就労条件を変えたことで時間がとれるようになったから、40周年だから、と理由は一つではないが、とにかく舞台に立ちたかった。

 初めての作家の作品は台詞の言い回しに馴染みがないからか、台詞が多いからか、とにかく台詞覚えと戦う日々となった。役をもらい自分なりにその人物像を作り上げていくときに、やらなければいけない作業が実はたくさんある。個性を持った一人の人間として立ち上がらせたく、役作りを深めていくのだが、いやいつもそれができているとは断言できないが、それを目指して作ってきたという思いはある。

 ところが、今回は・・・加齢のせい?台詞覚えがこんなに大変だったとは・・・久しぶりの新作というのもあるのか、いろいろ思い知らされている。演劇的体力も日常の体力も落ちている中で悪戦苦闘の日々は少しずつ、楽しい時間へと変わってきている。相手役の二人に対して、高校時代をともに過ごした友人という実感ができてきたのだと思う。

 幕が上がるまで、もう少しジタバタします。貴重なお時間の中、ご来場ありがとうございます。楽しんで頂けましたら幸いです。

 

野口 利香

 人生50年を超すと、これまで生きた年数よりも、これから生きる年数の方が短い訳ですが、何年生きても悩みや迷いは尽きないものです。おそらく、そういったものを最後まで抱えながら、人生を終えるのでしょう。いきなり暗い話ですみません。ただ、過去のつらかったり、悲しかったり、嫌な記憶は意外と忘れるものです。忘れられないものもあると思いますが、私は結構忘れます。忘れないと前に進むことが出来ません。人間何年生きても、生きる意欲を失う訳にはいきませんから。

 この芝居は、私と同世代の3人の女性のとある一夜のお話です。人生の中間点を過ぎて、ちょっと疲れが出てしまった時期に未整理物がいろいろ出てきて…。実は私も、「忙しい!」を言い訳にして、本当は向き合わなければならない事から目を逸らしていることがいくつかあります。そろそろきちんと向き合わなければと思いつつ、何年も経過していたりして…。

 この作品は演研にとって新作であり、いくつかの課題に挑み試行錯誤しながら公演に漕ぎ着けました。同世代の女性の方はもちろんのこと、そうでない方も何かを感じ取っていただければ幸いです。

 本日はご来場、有難うございます。

金田 恵美

 本日はご来場頂き、有り難うございます。

 芝居の題名『片付けたい』から、自分が片付けたいと思っている物。押し入れの中の思い出の物が詰まってる箱。気に入って買ったけど、年齢的にもう着ないであろう服。読まないであろう本。教科書(捨てたかな?)。テーブルの向こうに山積みになってる書類。職場の自分の机の上&引き出しの中(そろそろ注意されるかも!?)。他にも片付けたい物は色々あれど、日々見て見ぬふりしてます(笑)。

 最初はどうなるかと思った芝居。少しずつお互いの歯車が噛み合ってきて、それぞれの片付けたい物が見えるようになってきました。女同士って面倒くさい、でも心強いし、楽しい♪そんな雰囲気を感じて頂けたら嬉しいです。

 

清水  匠

 演研に入団して2回目の公演を迎えました。

 今回の芝居は50歳を越えた3人の女性の物語ということで、自分のような人間には共感しづらい世界のように思えましたが、いざ観てみると身に覚えのあるようなこと、共感できるようなことがたくさんあり、とても面白いです。

 また、今回は初めての台本ということで芝居を一から作り上げていく過程を見ることができ、とても勉強になりました。

 今回は前回に比べて稽古にあまり参加できず、色々な方々に迷惑をかけてしまいました・・・ですがそれを言い訳にするわけにもいかないので、自分のやるべきことをやっていきたいと思います。

 本日はご来場いただきありがとうございました。

 

 

ご挨拶

片寄 晴則

 私こと、この度10月1日を以ちまして、創立以来務めて参りました劇団代表の座を富永浩至に移譲し、創造活動の前線から一歩退くことになりました。永きに渡り支えて下さった皆様に、この紙面を借りまして心よりお礼申し上げます。

 好きなことを我侭にこうして続けて来られましたのも、多くの皆様のご声援あってのことと、今更ながら身に沁みて感謝いたしております。お客様のあたたかな拍手が、活力の源でした。

 前線から一歩退くと申しましても、全く芝居から離れる訳ではありませんし、演研の裏方として今後とも皆様にお目にかかるつもりでおります。今公演はその第一歩として、富永を先頭に今後とも走り続ける決意表明の創立40周年第2弾であります。

 お客様あっての私達の活動です。今後とも変らぬご支援と、増々のご声援をお願いしつつ、言い尽くせない感謝を込めて、私の挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。そして、今後とも劇団演研をよろしくお願い申し上げます

 

 

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