第83回公演  「ダウト〜疑い」
 作:ジョン・パトリック・シャンリー   演出:富永浩至

 


 スタッフ
  清水匠、小澤厳、上村裕子、賀来海穏、青木梨奈、片寄晴則  

 キャスト
  シスター・アロイシス:坪井志展
  シスター・ジェームズ:徳岡里桜  フリン神父:富永浩至  ミラー夫人:野口利香


上演にあたって

 

富永 浩至

 もう25年以上前になりますが、東京のベニサンピットという小劇場でジャン・コクトーの「双頭の鷲」というお芝居を観ました。当時は若かった堤真一が革命家、王妃役が麻実れいでした。物語は、19世紀の某国。嵐の夜に、国王を暗殺され生きることに絶望している王妃の寝室に、彼女を暗殺するべく送り込まれた青年が瀕死の状態で転がり込んできたところから始まります。孤独な二人の魂は激しく反発しつつも、お互いに強く惹かれあっていきます。しかし、立場の違う二人は死ぬことでしか結ばれないという悲劇の物語でした。この舞台に大きな感銘を受けた私は、いつかこのような重厚な会話劇をやってみたいと強く思ったのでした。

 さて、本日のこのホンは、うちの押し入れの奥に仕舞ってあったものです。インターネットが普及していなかった頃、東京や札幌へ行く度に、大きな本屋で上演できそうな戯曲を買い漁っていましたが、その中の一冊だったのでしょう。当時の我が劇団には、若いシスターと熟年のシスター役がいないので出来ないと仕舞い込んでいたのです。再び読み返してみるとこれがすこぶる面白い。そして我が劇団にも若い団員が増え、今までいた団員も年齢を重ねてきたことで、出来るのではと思い、今回取り上げることにしました。

 毎回のことですが、紙に書かれたものを舞台にするのにはとても苦労をします。その苦労が好きで続けているのですが、今回はいつもにも増して大きいように感じています。この戯曲の面白さを、なんとか皆様にも共有して欲しいと、連日稽古に励んでいるところです。若い頃に重厚な会話劇をやってみたいと強く強く思っていたのですから。

 本日はお越しいただき誠にありがとうございます。同じ時間と空間を共有してくださる皆様に感謝いたします。

 

つぶやき

坪井志展 

 演研に入って○年目になります。ここ数年、自分のセリフ覚えの悪さに辟易してたのですが、今回ほど苦労したのは、初めての経験でした。覚えたセリフを何度も口にだすことはあっても、覚えられないセリフを何度も確認する毎日は過ごした事がありませんでした。

 日常生活の物忘れが、芝居の稽古にも及んて来たかと思うと、若い頃、70歳まで舞台に立ちたいと豪語していた自分に責任が持てなくなりそうです。
 私はなんだか情けないかぎりですが、今回の新しい座組での芝居創りは、演研という集団にとって貴重な一歩になりそうです。

 本日は、お忙しい中、演研・茶館工房に足を運んで頂きありがとうございます。

 

上村 裕子 

 演研の歴史を振り返ると、新人が入らず、固定メンバーだけで活動していた長い時代がありました。再演を繰り返して、作品を深めていた時代もありました。ここ数回の公演は、新作が続き、その中で新人がデビューしています。

そして、何と、今回の作品でも新人がデビューします!!お客様からお金と時間を頂き、舞台に立つ事はとても貴重な経験です。必死に作品に取り組んでいる新人は、初舞台公演を終えた時に、きっと今までと違う自分と出会っている事でしょう。

  加齢と共に、ひたむきさを忘れていっている私ですが、劇空間に触れる事がやはり好きで、大切な時間だとつくづく思います。

本日はご来場ありがとうございます。私の大好きなこの空間を共有できます事、感謝致します。

 

 野口 利香 

 最近、スカートがキツくなった。20代の頃からサイズが変わっていなかったのに、はく毎にキツくなる気がする。これはまずいと、腹筋をしたりする。その時だけ。冬のスカートが再びはけるかどうか、衣替えが恐ろしい。

 公演近くになり稽古が佳境に入ってくると、少しは痩せるだろうと高をくくっていたが、その兆しはまだない。いつも年始には、今年は暖かくなったら週末早起きして歩こう!と思うのだが、今年も暖かくなり、さらに暑くなり、また寒くなり冬に向かっているが、一度も実現していない。(平日の早起きは考えもしない)

 こんなことをつぶやきながらも、今は本番まであと2週間。今回は重厚な台詞劇です。役者、スタッフ各々が役割を全うしようと努力を重ねています。良い舞台をご覧に入れられたら幸いです。

 茶館工房にお足をお運びいただき、ありがとうございます。

 

小澤 厳 

 外国人作家の芝居「ダウト」は、やや日本には馴染の薄い内容でありつつも、その心情は日本人でも起こり得るもの、あり得るものだと感じている。

 思い込みとか固定観念、先入観などというものも、私たちの生活では排除しなければならないと思いつつ、往々にして抱いてしまう感情であり、それは負の感情と思いつつどうしても拭いきれない時があったりもする。いろいろな人間が絡み合って生きている世の中で、いかに公平・公正な目を持ちながら生きていけるか。そんなことを考えているといい歳をとった自分の未熟さに嫌気がさすこともある。そんな芝居だと思った。

 今回は照明デビューです。芝居を壊すことなく盛り上がるように、きちんと役目をこなしたいと思っています。

 本日は、観劇に来ていただきありがとうございました。

 

清水 匠 

今年も気がつけば11月でもう1年の終わりに差し掛かってきました。あっという間ですね……。

 これまで信仰とはあまり縁のない生活を送ってきた私ですが、今回の芝居の稽古を見ていて、自分が当然のように信じてきたことや基準にしてきたことが実は間違っているんじゃないかと疑うことはとても辛くて大変なことなんだということを考えさせられました。今回も今までとはまた違った芝居をお楽しみいただければと思います。

 本日はご来場いただきありがとうございました。

 

徳岡 里桜

 未経験で初舞台なので、緊張しますが、頑張ります。
 本日はご来場いただき、誠にありがとうございます。

 

賀来 海穏

 今回で、入団して、2回目の舞台となります。高校時代の演劇部では、役者しかやったことがなかったので、音響の機材に触るのは初めてです。不慣れなことではありますが、舞台にとっては、なくてはならないものだと稽古を通して感じています。照明や、音響など、スタッフ仕事があってこそ、役者は輝ける。そんな高校時代の顧問の言葉を思い出します。

今回は特に場面転換の多い劇なので、音響と照明の仕事が重要になってくると感じています。精密に、より違和感のない装置操作を心掛けますので、どうか、違和感があっても、暖かい目で見て頂けると幸いです。

 本日はご来場頂きありがとうございます。お楽しみください。

 

青木梨奈

 小学校の学習発表会で劇をした際に、誰かになりきって演じることがこんなにもおもしろいのかととても興味を持ったことを覚えています。しかし、私の出身の田舎では演劇を習う場所もなく、小学1年生で始めた水泳に全力を注いできたのでスケジュール的にも不可能でした。けれども2年ほど前に水泳を引退し、帯広に演劇ができる場所があることを知り、すぐにでも入団したいと思いましたが、全く経験がないことで勇気が出ず、ずるずると迷いに迷ってやっと4ヶ月前に心を決めて入団しました。

 演研の皆さんは本当に温かく優しく迎え入れてくださり、毎回の稽古が楽しくて仕方がありません。

 今回の作品は「疑い」についての話です。「疑い」というくらいですから、真実は不確かで自分が一方的に持っている気持ちであり、疑いを感じてしまうとどうしても曇りガラスで相手を見ているような感覚になります。相手の本来の姿が揺らぎ、モヤがかかってしまうのです。

 皆さんは「疑い」を持ったこと、あるいはかけられたことはありますか。また、その時どのような行動をとりますか。このダウトという作品はそんなことを考えさせられるお話だと私は感じました。

 本日はご来場頂き誠にありがとうございます。4人の役者さんの引き込まれる演技で、セントニコラススクールで生じた「疑い」の世界をどうぞお楽しみください。

 

 

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