坪井:え、そんな所から聞くの?ええと、中学生の時に、帯広に劇団四季が毎年来ていて、父がチケットを買ってくれて、姉とよく観に行ってて。加賀まりこの「間奏曲」とか、「オンディーヌ」とか観て、それで劇団四季に入りたいと思って、四季の養成所に手紙を書いたんだよね。
ーー ほー、中学生で。
坪井:そしたら、高校卒業しないと入れないと言われて、
ーー で、高校の演劇部に入ったんだ。
坪井:いや、私の目指しているのはプロだから、演劇部には入らなかった。(笑い)で、市内の劇団に電話かけて。大人は皆プロだと思っていたのかな、まだ中学生卒業したばかりだったから。で、学生さんは入れませんって、片寄がいた「あかねの会」には断られたんだけど、「扉」にいいよ、来なさいって言われて、そして「扉」に入った。
坪井:それで「扉」に入ってたんだけど、まだ高校生だったから役もつかずに、でも稽古場に早く行って、準備してたりしてて。まあ、大人といるのが楽しかったってことだと思うんだけど。でも、高校演劇もやってみたいと思って、1年生の途中から入ったかな。
ーー ほー、それは誘われて?
坪井:いや、違う、仲良い人誰もいなかったから。(笑い)で、演劇部もやりながら、「扉」にも行ってたんだけど、帰りが遅くなって、父親に怒られて、
ーー 高校生だもの、当たり前だわ。(笑い)
坪井:稽古終わった後に遠くから来ている人を車で送ってく人がいたんだけど、私もそれについて乗ってたの。だから遅くなったんだけど、ただそれだけなんだけど、その人も怒られて、皆怒られて、そんなんで行かなくなっちゃったんだよね。
ーー その後は、高校演劇一本で?でもプロを目指していたのはどうなったの?
坪井:太ってたんだよね。
ーー えっ?
坪井:プロ目指している自分が太ってちゃダメだと思ったんだよね。まあ、薬剤師にもなりたいとも思っていたから、そっちに行ったんだけど。・・・いやだな、なんかこのインタビュー。(笑い)
ーー まあ、まあ。(笑い)
ーー 大学を卒業したあと、帯広に就職したのはどうして?
坪井:どうせ、将来嫁に行って帯広を離れると思っていたので、1回実家に帰ろうと思って。後々ここにいるとは思ってなかったから。
ーー はい、はい。それは演研があるから、帯広に就職したわけではないのね。
坪井:だって、演研があるのも知らなかったから。
ーー ああ、そうか。大学に行っている間に出来たのか、演研は。
坪井:帯広に帰ってきて、片寄が喫茶店を開いたのは知っていたから、あ、片寄は高校のOBで演劇部によく顔を出してたから。で、大通茶館に来て、先輩と後輩の話をしてたんだけど、私はいつ「演研に入らない?」って声をかけてくれるかなって思ってたんだよね。
ーー 仕事しながら、芝居は続けたいと思ってたんだ。
坪井:もう大学生の頃は、仕事しながらやっている人とプロとの区別はついていたから、「扉」に戻って、お芝居をやるっていうのもあるなって思って、「扉」の公演も観に行ったんだけど、ちょっと路線が違ってて。で、大通茶館に通って声かけられるのを待っていたんだけど、ついに自分から「稽古見に行っても良いですか」って言って。
ーー 「楽屋」は今までに4回上演しているのだけど、2回目以外は全部出てるよね。最初の公演のことは覚えてる?
坪井:私、8月に入って、次の年の7月に「楽屋」をやったので、入ってすぐみたいな感じで、女優Cという役がついたんだけど、
ーー 一応、大女優の役だよね。
坪井:でも新人だから、大女優でも何でもなくて、それに若かったし、役とのギャップがひどくて、どうやっていいのか自分でも分からなかった。その器ではないと自分でも思ってたし、周りもそう思ってたし、そういう状態で舞台に上がることが怖くて仕方がなかった。
ーー なるほど。
坪井:最初のステージは煙草を吸ったんだよね。私、煙草は吸わないので、慣れてなくって、吸えないから火をつけてすぐ灰皿に置いちゃって。で、吸わないでずっと置いてあるもんだから、ガラスの灰皿がパッキンって割れちゃったの。大通茶館のガラスの灰皿2、3個割ったんだけど、・・・辛かった。
ーー いや、いや。辛いことが他にいっぱいあったから、そんなことも辛かったてことでしょ。(笑い)
坪井:芝居の中で、舞台がはけて楽屋に戻って来るシーンがあって、その時に椅子に座ろうとして、座れなくてひっくり返ったとこがあったんだよね。
ーー え、それ本番で?
坪井:そう、本番で。でも怒って戻って来るっていう設定だから、椅子に八つ当たりをして誤摩化したんだけど、それがなんか忘れられない。カツラかぶって、白い衣裳着て、戻ってきたと思ったら、ドテーンってひっくり返って。この狭い大通茶館の舞台で。
ーー 最初の「楽屋」はあんまり良い思い出がないわけだ。
坪井:稽古は楽しかった。女優Cが出てないときは、AとBがやっているんだけど、それを見てるのが楽しかった。演出がついてどんどん変わってきて、出来て来るのを見ているのが、本当に面白かった。
※第6回公演「楽屋」大通茶館にて。
ーー で、2回目は出てなくて、その次、メガストーンでやったけど、その時はもう女優Cをやってもおかしくない年齢になってたよね。演研の中でのキャリア的にも。
坪井:今もそうだけど、自分が大女優という器でないことが分かっている、でも今回はなんとかそれを克服しようと思っている。だけど、その時はそんなことも考えていなかった。その時は出来るんじゃないかと思ってたかもしれない。
ーー あ、そう。
坪井:だって、あの時は、さっき言ったように、年齢的にも、演研の中でも女優Cを出来て当然の立場になっているから、出来るものだと思っていたと思う。今回、再演するに当たって、芝居の中の劇団はどんな劇団なのかという話をした時に、私が考えていたより演出が言ったのはもっとプロフェッショナルなイメージの劇団だった。私は自分がやっているからか、もっとチャチな劇団だと思っていた。
ーー え、そうなの?
坪井:いや、チャチっていったら変だけど、もっとレベルの低い感じをイメージしてた。今回、その話を聞いてもっとレベルの高い劇団で、そういう意味でも少し大きな女優さんを演じられたらなって。
ーー それは今回ね。
坪井:そう。で、その時はそのまんまって言ったら変だけど、私の他のキャストが三人とも、
ーー あ、そうだね、野口に金田に鈴木だから、キャリアが違ったね。
坪井:だから演研にいるキャリアからいけば、十年以上離れているから、そういう意味では偉そうにやっていればいいのかなあと思っていた。
ーー その時は、あまり失敗もせずに。
坪井:いや、実際あんまり覚えてないんだけど、あれ、公演日1日で2ステージだけだったから。メガストーンは会場作りが大変で、小宮さんの「接見」の公演もあったし、だからあんまり芝居のことを覚えてないんだよね。
ーー なるほど。で、次は5年前、工房でやった公演だけど、これは?
坪井:それは上村が入った公演だったから、どんなふうになるんだろうという期待感があった。
ーー まあ、上村は同じくらいのキャリアだからね。それでどうだった?
坪井:女優Aが舞台から飛び出していきそうなくらい、はじけていた。
ーー そう。上村はいいなって思ってたんだ。
※写真左から、第52回公演、ライブホールメガストーンにて。第61回公演、演研・茶館工房にて。
Q.今回の「楽屋」への意気込みは?
坪井:最初の出会いがそうだったから、清水邦夫の本も「楽屋」という作品も凄く好きなんだけど、私は女優Cをやるのが嫌で、分不相応な感じがして。でも、演研の中では私がやらなくてはいけない役だと思っている。今回は女優Cの深みを出せたらなって。
ーー なるほど。
坪井:私の中のイメージでは、女優Cはパッと出てきて、パッといなくなるという印象があって、そこでここは女優の楽屋だっていうのが分かればいいくらいに思ってた。「楽屋」はAとBの芝居だと思っているから。でも、ちょっと待ってよ。もうちょっと私が女優の深みを出せば、AとBも持っている深みも出てくるんじゃないかって。だから頑張らなくては。
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