第7回目 五十嵐英実さん

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今回のゲストは、五十嵐英実さんです。清水高校で演劇部の顧問をしてらっしゃいます。昨年の全道大会で優秀賞に選ばれ、3月に行なわれた春季全国高等学校演劇研究大会に出場しました。前任校の柏葉高校では、演劇部を全国高等学校総合文化祭演劇部門で最優秀賞に導きました。

 

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富永:五十嵐さんは、うちの芝居はいつから観ていてます?

五十嵐さん:向こうの小屋(演研芝居小屋)からですかね。美佳ちゃん(※)がいる関係で観出したと思うんです。

(※赤羽美佳子。第13回公演から第33回公演まで在籍。五十嵐さんの奥様は赤羽のお姉さん。)

富永:その時は、どこにいたんですか?帯広にいたんですか?

五十嵐さん:いや、帯広に来る前、富良野にいた時に観に来たんだと思います。

富永:じゃあ、赤羽が出ていた「いつか見た夏の思い出」とかは観てないですか?大通茶館でやったんですが。

五十嵐さん:いや、観てないかな。



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※第22回公演「楽屋」、演研芝居小屋にて。左から平山ゆり、上村裕子、赤羽美佳子。


富永:では、小屋でやった、赤羽が出ていたのは、あ、「楽屋」、

五十嵐さん:ああ、「楽屋」からですね。その後は観てなくて、「思い出せない夢のいくつか」は観てますね。

富永:それは、平田オリザさんが帯広に来てワークショップをやった年ですよ。

五十嵐さん:そうそう、その年から帯広に住んでるので、

富永:え、じゃあ、あの時は帯広に来たばっかりの時だったの?

五十嵐さん:そうそう。

富永:そうなの?すごくフレンドリーにワークショップを受けていた記憶があるんだけど。ワークショップ発表会の小道具を、芝居小屋で一緒に作ったじゃないですか。

五十嵐さん:そう、あの時、富永さんと上村さんと同じチームで。で、上村さんとお互いに年上だと思っていたら、

富永:同期だったんだ。(笑い)

五十嵐さん:そう。(笑)その辺からはだいたい観てますね。でも、ずっと観てきて一番印象に残っているのは、小屋がなくなって、大通茶館でやった「夫婦善哉」ですね。

富永:はい、はい。

五十嵐さん:その時は何回目かな。

富永:えっと、2回目ですね。小屋がなくなった年に、第1回道東小劇場演劇祭をメガストーンでやって、その時に初演して、その後、再演したので。

五十嵐さん:その時に1回目と印象が違って、一度観たとき分からなかったことが分かって、ああ、そうか、再演し続けるのを見続けるというのは、面白いなって思ったんです。



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※第51回公演「夫婦善哉」、大通茶館にて。青年団の山村崇子さんと工藤千夏さんが観に来てくれ、役者たちが非常に緊張した。


富永:観る方も、2回目だとストーリーは追わなくていいので、見えなかったところに目がいくので、面白いってのもあるのかな。

五十嵐さん:それと再演すると色んな空間でやるから、空間の雰囲気があっていたというのもあるのかな。

富永:あれ、「夫婦善哉」は龍昇企画でやったのは観てますか?芝居小屋でやったの。

五十嵐さん:ええ、観てます。井上加奈子さん(※)のサイン、今もとってあります。

(※井上加奈子。つかこうへい事務所設立当初から参加。「熱海殺人事件」、「初級革命講座飛龍伝」など、多くのつか作品に出演している。夫は俳優の平田満。)


富永:ああ、そうか、つかこうへいのファンだったね。

五十嵐さん:大学で初めてやった芝居が大山金太郎(つかこうへい作「熱海殺人事件」の役名)だから。

富永:大学で、「熱海殺人事件」をやったんだ。(私と)似てるね。(笑い)

五十嵐さん:演劇部か落語研究会に入ろうと思ってたけど、落研はもう潰れてなかったの。

富永:で、演劇部に入ったんだ。

五十嵐さん:それから、最初教員になって赴任した士別高校には演劇部がなくて、市民劇場に入れてもらって。で、富良野に転勤になった時に、初めて演劇部の顧問になったんだよね。

富永:富良野には何年いました?

五十嵐さん:5年。その後、柏葉高校に来て、15年。

富永:あ、長いですね。この間、久保田さんにお話を聞いてる時(第2回めのインタビューです)に、高校演劇が盛んだって話になって、それは平田オリザのワークショップを受けた影響が大きいんじゃないかって話してたんですが、それはどうですか?

五十嵐さん:いや、そうだと思う。5年間、富良野で演劇部の顧問を我流でやったあとに、帯広に来たじゃないですか。それまでは、何の理論もなくて、自分の感覚でやっていて。それで平田さんのワークショップを受けて、すごく分かり易くって、こういう言葉で、こういう風に考えれば、伝わるってことが分かって、その後「演劇入門」とか、平田さんの本を読んだりして。幕別でもワークショップをやったし、富良野でも高校演劇の顧問の先生を集めてやっていて。その時、ああこういうことかって分かって、作ったのが「モノクロウェディング」(※)。


(※2002年全道大会出場作品、優秀賞を受賞。その後2005年「七夕」で全道大会優秀賞、春季全国高校演劇フェスティバルへ出場、2006年「ウエスト・サイズ・ストーリー」で全道大会最優秀賞、翌年の全国大会で優良賞、2007年「TRUE LOVE」で全道大会優秀賞、2008年「これからごはん」で全道大会最優秀賞、翌年の全国大会でも最優秀賞、2009年「to get her(トゥギャザー)」で全道大会優秀賞。


富永:はいはい。

五十嵐さん:それはもちろん、平田さんの影響ですね。平田オリザは、弟子はとらないけど、高校演劇での弟子は、五十嵐さんと新井さん、これは認めるって言われました。(笑い)

富永:鷲頭環さん(※)も入れてよって。(笑い)

(※帯広畜産大学の演劇部出身。昨年、琴似工業高校定時制演劇部を指導、脚本を担当し全道大会にて最優秀賞を受賞、今年の全国大会へ出場。)


五十嵐さん:いや、だから入れてもらえるんじゃない。(笑い)今年、いやもう去年か、全道大会の上位4本のうち3本(※)は、あの時の、あの一年間のワークショップのメンバーだよね。

(※五十嵐さんは柏葉高校の顧問として、新井先生(現北見北斗高校演劇部顧問)は池田高校の顧問として、そして鷲頭さんは当時大学生でワークショップを受けていた。)


富永:それは大きいですよね。五十嵐さんの場合、自分で本を書いて、生徒にやらせるっていうタイプじゃないですよね。生徒を引っ張っていく様にはやらないっていうポリシーみたいなものがあります?

五十嵐さん:いや、その方が楽だから。(笑い)ていうか、そもそも書かないっていうポリシーがあったんだけど。

富永:ああ、そうなんだ。

五十嵐さん:ほら、高校演劇って、(脚本を)書ける人が顧問だとその学校はいいけど、でも書けない顧問もいるんだから。いや、富良野時代に一度書いたら、生徒に「これは放送劇ですね」って言われて。(笑い)

富永:うん。(笑い)

五十嵐さん:いいや、自分は既成(の脚本)で勝負しようと思って、柏葉に来ても最初は既成をやってたの。そのうちテトラ(※)とかやるようになって、書かなければならなくなってきて、でもたかが顧問の持っている世界観を作品にして、で、それを生徒たちがまたその内側をなぞるようにやるので、更に世界が狭くなってしまう。


(※テトラ小劇場祭。柏葉高校、池田高校、そして幕別高校の三校で始めた演劇祭。お客様も含めて、テトラ(4を意味するギリシャ語)と名付けた。その後参加校も増え、今年で19回目。)


富永:ええ。

五十嵐さん:生徒の中にも書きたいと言うのもいたり、でも一人では書けなくて、集団で書いたりして、色々と試行錯誤してて。

富永:なるほど。

五十嵐さん:平田さんのワークショップを顧問だけで受けた時に、やったことをそのまま部に持ち帰ってやったら面白いものが出来たの。

富永:はい、はい。

五十嵐さん:そこから、この方が良いと思って。生徒は足りない部分もあるんだけど、色んな方向へ飛び抜けて、それが集まった方が良いものが出来るかなって。そうですね、自分は作家ではなく編集者みたいな感じですかね。

富永:生徒の作っているものに、どのくらい関わっているんですか?

五十嵐さん:上手くいくときは、自分の中に理想型が見えて、自分たちはそっちに向かっていて、何を足せば良いか見えている。でも、何となく理想型が見えているけど、何を足していいか分からないときもある。それが生徒の中から出てくるときもあるし。

富永:そもそも、そのエチュードって、何を決めて、何からやり出すの?

五十嵐さん:情報、この3分間の中で、この人とこの人はこんな関係だっということが伝われば良いとか、セリフだけ決めるときもある。

富永:セリフだけ決める?

五十嵐さん:こんなセリフを言ってみたいとか、こんなセリフがあったら面白いとか、前後なくてセリフだけとか、とにかく浮かんだものは全部出せって言ってるから。こういう人間関係とか、こういうやり取りとか。

富永:え、ちょっと待って、一番最初は何もないですよね。

五十嵐さん:そう、何もない。本当に漠然としたもの。例えば、「これからごはん」だったら、ただ探し物をしている、

富永:だけを決めてた?

五十嵐さん:そうそう。探し物をしているものをやりたいって言って。「ウエスト・サイズ・ストーリー」だったら、美人になるための努力をしている女の子たち。

富永:ああ。

五十嵐さん:なんかそれで、作っていってる。

富永:平田さんのワークショップだと、まず、場を決めたじゃないですか。公共的でもなく、個人的でもないセミパブリックな場所を決めて、それから背景を決めて、登場人物を決めてって、流れがありますよね。

五十嵐さん:うん、場を決めてやるときもあるし、これやりたいって出たら、それが成立する場所はどこかって、考えたりして。で、大枠を決めて、そこから何でも良いから閃いたことを出し合って、それを60分の中のどの辺に入れたら良いだろうって考えて、エチュードを重ねって作ってく。

富永:ああ。

五十嵐先生:だから途中でなくなる役もあるし、順番が入れ替わったりするんだけれど、シーンが出来てくると何のための役かが生徒たちは分かっているので、順番が入れ替わっても戸惑わない。つくっていく過程はほんと面白い。

富永:なるほど。最後に、何か演研が今後こんなことをやってくれたらとかありますか?

五十嵐先生:いや、演研に「これからごはん」をやってもらいたい。若い子は地元の高校生を使って。

富永:ええ、それは是非、やってみたいですね。おばあちゃんはいるからね。(笑い)

五十嵐先生:いや、(おばあちゃんには)もうちょっとだね。(笑い)高校演劇の枠から外れて、大人の演出を受けるとか、共演するっていうことから、得られるものはあるし、観客の動員という部分でも、演研は観るけど高校演劇は観ないとか、逆に子供がやってるから高校演劇は観るけど、大人の芝居は観ませんって人もいるから。そうなると、もっと面白いことが出来るんじゃないかと思います。

富永:そうですね。

五十嵐さん:でも演研で、柴さん(※)とかいろんな方のワークショップを呼んでくれたりとか、それはとても刺激になります。感謝しています。


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※柴幸男。青年団演出部所属で劇団ままごと主宰。2010年に『わが星」で第54回岸田國士戯曲賞を受賞。2011年に高校生対象にワークショップを行なった。


富永:いえいえ、それはお互い様です。本日はありがとうございました。

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