アフタートーク(演劇祭について)
演劇祭全体を通して
司会(松本):最後にこの演劇祭に対して、率直な感想をいただきたいのですが。
前田:いいこと言いますけど、別に媚びている訳じゃなくて。
やはり民度が高いというか、文化度が高いんじゃないかと思います。
それはこういう拠点があって、こういう交流があるからだと思うんですけど。
ちょっと残念なのはもうちょっと若い人にも来てもらいたいですね。
演劇ってどうしても当たり外れがあって、観てみなければわからないんですけども、実は外れを観ることはすごく大事なことで、今の若い人たちは、テレビでも自分の好きな番組を見られるから、自分の嫌いなものを見るとか、価値観に合わないものを見るということがあまりないんです。
でも演劇って、来たらよっぽど勇気がない限り、こんな狭いところから立ち上がって出て行くことが出来ないんです。
どうしてもつまらなくても最後まで観なきゃいけない。
でも、自分はつまらないと思っていても、それにすごく感動している人も同じ空間の中にいたりして、涙を流している人もいれば、鼾かいている人もいるし、真剣に観ている人もいれば、全然違う所を観ている人もいる。
そういう価値観の違う人たちが一カ所に集まって、同じものを観るというのは、多分あんまりない。
映画だって、だいたいどんな話しかわかっていて、見に行く。
演劇だとそうではない。ここにいる三人だって、同じ演劇をやっていても考え方が違う。
それって、すごく大事なことだと思うんです。
子どもさんとかお孫さんとか連れてきてもらって、もしかしたら親がつまらないと思っているものを子どもが観て、すごく感動して、価値観が変わったりする。
そういう経験が出来る所だと思うので、もっと若い人に来てもらいたいです。
この演劇祭に関していえば、僕は劇作家なので、戯曲がこれほど大切に扱われているというのは、
これ、大変なエネルギーです、仕事終わってから稽古して、自分のいろんなものを削ってやっているじゃないですか、お金もそうだし、時間もそうだし、本当に命を削ってやっている。
そこまでして一つの芝居を、しかも大分前に書かれたもので、もしかしたら消えていってしまってもおかしくないようなものじゃないですか。
その古い作品に対して、これだけの愛情を持って創ってくれているというのは、まあ自分の作品じゃなかったですが、(会場笑)
松本:(大声で)ああ。(頭を下げる)
前田:本当に作家としては、嬉しいし、うらやましいし、
松本:じゃあ、どうです。僕らに書いてみませんか。(会場拍手)
前田:それはまた、主旨が違うんで。(笑)
片寄:こうやって鈴江さんとかオリザさんとか、書かされたんです。(笑)
前田:まあ、東京では、やっているのかもしれませんが、こういうムーブメントになっていることはないと思います。
新作主義で、新しいもの、新しいものをどんどんやってる。
こういう古いものを、いい作品を、百年後も変わらずに出来る作品をこうやって続けていくことは、民度が高いと思います。
いや、面白かったです。
ありがとうございます。