動物園アフタートーク
右より富永浩至(司会進行)、前田司郎氏(ゲスト)、松本大悟(劇団動物園代表、演出)
富永:この演劇祭は、2001年に第一回目をやりまして、そもそも三劇団はお互いの芝居を観に行って、感想を言い合ったりしていたんですが、指向性が似てるってことで、いつか一緒に何かやりたいねと話していました。
もう一つは、地方でやっているとどうしても批評の目に晒されないというか、どうしても観客が仲間内だけになってしまう。
それでプロの演出家なり、批評家なりに、僕らの芝居について話をうかがって、自分たちもステップアップしていきたいという思いがあって、第一回目は鐘下さんを、後輩ということもありまして、ゲストとして招きました。
そんなことなので、今日はビシバシと感想を言っていただけると嬉しいです。
前田:はい。
松本:(ポケットからメモ帳を取り出す。会場笑)
富永:彼は、ダメ出しをされるのが凄く好きなんで。(笑)さっそくお願いします。
松本:いや、言う程ダメ出しが好きじゃないんで。(笑)
富永:そうですか。では、前田さん、お手柔らかにお願いします。(笑)
前田:自分は批評家じゃないので、作品が他と比べてどうかとか、演劇界の中でどういう位置にあるとか全然分からなくて、自分も演劇をつくっているので、そこからしか言えないんですが、結局好みの話になります。
批評家というのは芝居をやってない人です。出来るだけ自分の好みを挟まずに、他の作品を一杯観て、その中でどういう位置にあるか、それならばもっとこういう風にした方がいいんじゃないかとか、そういうことを言う人だと思います。
で、ボクは芝居をつくっているので、他の人の芝居を観た時に、悔しいと思うか、つまんないと思うか、まあまあと思うか、それは好みの問題ですから。人によって、いろいろと感じ方が違うと思います。
まあ、先にこれだけ言うということは、これから悪いことを言うつもりなんですが。(笑)
松本:はい。
前田:良いシーンとか、良い台詞の所で音楽を流すじゃないですか。あれは演出家の敗北宣言のように思います。
日常的なシーンの中で、音楽がなったシーンが2ヶ所ありましたけど、あのシーンを劇作家が書きたいとしたら、日常的なシーンは、あのシーンを目立たなくするためにあって、ああいうクサイ所をクサクないように見せるためなのに、あそこで思いっきり音楽をかけると、The良いシーンですとやっちゃうと、ボクがこの作品を書いている作家だとしたら、ちょっとやめてよと思います。
あそこは演出家が、お客さんに恥ずかしく感じさせないように、いつの間にかお客さんの心に忍び寄って来る感じであのシーンをつくると思うんです。
あと、暗転の処理なんですが、お芝居ってお客さんにルールを分かってもらって、安心して観てもらわなければならないと思うんです。
例えば、停電になったシーンですが、本当は真っ暗で何も見えないんでけれど、それではお客さんも見えないので、薄明かりで舞台を見せている。
その中で、演技をするのですが、本当はどのくらい見えているのか、また、いないのかを、きちっとお客さんに分かってもらわなければいけない。
そのルールが整理されていなかったところがあって、残念でした。
表現もここは白、ここは黒とはっきりし過ぎていて、もうちょっとグレーの部分があった方が良いと思いました。