道東小劇場演劇祭について

 北海道東部の三都市、釧路、北見、帯広をそれぞれ拠点とし活動する劇団北芸、劇団動物園、そして劇団演研の3劇団は、小劇場空間にこだわる芝居づくりなど演劇に対する姿勢が近いことから、1990年に道東小劇場ネットワークをつくりました。そしてその中で、お互いの芝居に対しての意見交換や、相互乗り入れ公演をするなどの交流を深め、2001年に念願だった「道東小劇場演劇祭」を開催しました。

 これは、3劇団が一堂に集まり、2日間で3本の芝居を一挙上演するという試みでした。そして、各劇団の上演後には、ゲストで招いたTHE・ ガジラ主宰の劇作家・演出家、鐘下辰男氏に観終わったばかりの芝居の感想を、プロの目からどのように見えるかを述べてもらうアフターステージトークを行いました。上演作品はそれぞれ、動物園は門肇作「こころゆくまで。」、北芸は別役実作「眠っちゃいけない子守歌」、そして演研は平田オリザ作「夫婦善哉」。 笑いの多い動物園の芝居、北芸は不条理劇、演研は静かな芝居と三本の傾向が違ったことと、アフタートークでの鐘下氏のユーモアを交えた講評などが観客に支 持され、第1回目の演劇祭は成功裏に終了することができました。
 (第1回道東小劇場演劇祭の様子はこちらから)


  その翌年の第2回目も、3劇団が帯広に集まり、動物園は竹内銃一郎作「東京大仏心中」、北芸は別役実作「いかけしごむ」、演研は平田オリザ作「隣にいても 一人」をそれぞれ上演しました。前回好評だったアフターステージトークは、ゲストに燐光群を主宰する劇作家・演出家の坂手洋二氏を招き行われました。また 演研の「隣にいても一人」は、青年団の俳優大塚洋氏が帯広に1ヶ月以上の長期滞在をして、作品を創り、客演したことも話題を呼びました。
 (第2回道東小劇場演劇祭の様子はこちらから)

  そして、第3回目は、会場を釧路、劇団北芸のホームグランドの「波止場の芝居小屋」に移して開催されました。上演作品は、動物園は第1回に続き「こころゆ くまで。」、演研は第2回に続き大塚氏を客演に招き「隣にいても一人」、そして北芸は別役実作「この道はいつか来た道」をそれぞれ上演しました。恒例となったアフターステージトークは、女優であり演出家の木野花氏を招きました。またこの年は、青年団の平田オリザ氏の招きを受け、東京の「こまばアゴラ劇場」で、「道東小劇場演劇祭inアゴラ」と銘打ち3日間に渡り9ステージを上演しました。ここでのアフターステージトークは、日替わりで3人のゲストを迎えました。1日目はTHE・ガジラ主宰の鐘下辰男氏、2日目はMODE主宰の松本修氏、そして最終日は青年団主宰の平田オリザ氏と、日本の演劇界を代表する方々がトークを繰り広げました。
 (第3回道東小劇場演劇祭の様子はこちらから)


  第4回の演劇祭は、会場を再び帯広に戻し、ゲスト演目として、青年団の「ヤルタ会談」を招き、初の4劇団の競演となりました。動物園は竹内銃一郎作「東京物語」、北芸は別役実作「受付」、演研は平田オリザ作「走りながら眠れ」をそれぞれ上演。毎回好評のアフターステージトークは「ヤルタ会談」の俳優の面々を迎え、初めて各劇団の役者が終演後のステージに上り、青年団の俳優とのトークを繰り広げました。
 (第4回道東小劇場演劇祭の様子はこちらから)


 2007年に3年振りに行われた第5回道東小劇場演劇祭は、初の北見での開催となりました。劇団動物園が団員自らの手で作り上げた「アトリエ動物園」を会場とし、ゲ ストには京都在住で、岸田戯曲賞受賞作家である劇作家、演出家の鈴江俊郎氏を招きました。演研は帯広出身の俳優、龍昇を客演に向かえ「隣にいても一人」、 北芸は太田省吾作「棲家」、そしてホスト劇団の動物園は野田秀樹作「赤鬼」を上演。北見では演劇祭やアフターステージトークなどが行われることは珍しいこともあり、演劇祭は大盛況のうちに終了しました。また、この縁により、翌年の劇団動物園創立20周年記念公演には、鈴江俊郎氏が新作書き下ろし作品を提供しました。
 (第5回道東小劇場演劇祭の様子はこちらから)


 そして、前回、2009年 の第6回演劇祭は、演研の団員たちが自らの手でリノベーションしたアトリエ「演研・茶館工房」を会場にして、帯広では5年振りに行われました。動物園は前年の創立20周年公演で話題となった鈴江俊郎新作書き下ろし「ホテル山もみじ別館」、北芸は韓国で上演し「光州平和演劇祭グランプリ」を受賞した「この道はいつか来た道」、そして演研は岸田國士作「驟雨」を上演しました。トークゲストは、青森を拠点に活動を続ける劇団渡辺源四郎商店を主宰する畑澤聖悟氏。同じ地方に拠点に活動を続けている立場から、また現役高校演劇部顧問の立場から、独自の視点でユーモアを交えた講評に会場は大いに沸きました。
 (第6回道東小劇場演劇祭の様子はこちらから)
 
 そして2012年、再び3劇団が「演研・茶館工房」に集います!